ウィスタリア・アメジスト
「ようこそ、こんな所まで殿下に足を運んで頂き光栄です」
やっと頂上まで辿り着き、メロウがノックし扉を開けると
そこには他の団員と違い黒いローブを深く被る
ウィスタリア・アメジストらしき人がいた
明らかに怪しい風貌をしている人物は、その風貌からは
考えられないほど、柔らかい声で労いの言葉をかけてきた。
未だローブを被ったままの彼の身長は高く、180センチの私よりも少し高いぐらいだろうか
勝手な私の想像では、若くして公爵になったと小説内で描かれていたので、てっきり彼はまだ幼いと思っていた
けれど、目の前にいる彼は声からして20代前半とみた
私の視線に気づいた彼は、失礼しました。と黒いローブに手をかけるとローブの中の素顔を見せた
どんな人物か、興味津々で彼を見つめていれば、銀色の長い髪がパサっとこぼれ落ちてきた
その、サラサラと靡く彼の銀色の髪は、腰まで伸びていて
よく手入れされてあるのが分かる。
何より1番衝撃だったのは、彼のその眉目秀麗な容姿
こちらを見つめる彼のアメジストの瞳はどこか魅惑的で、なぜか彼の瞳から目が離せない
「…」
「殿下…?」
ウィスタリアの瞳に夢中になる私に気づいたニレは
もう一度私の名を呼ぶ。彼の殿下!という声のおかげで気を取り直した私は彼の瞳から目線を外した
なんだか、紫の瞳を見ていたら引き込まれていかれそうで自分でも驚いていた
大丈夫ですか?と聞いてくる彼に平気だよと軽く返事を返し
不思議そうに私を見ている彼に、確かに眩しい人だねと伝えるとニレは言ったでしょ?と頷いた。
「でもあんなに、美形な男性とは思ってなかったんだけど?」
「嬉しいですね、殿下に褒められるなんて」
ニレに伝えたつもりだった感想は本人に聞こえていたらしく、ウィスタリアは嬉しそうに微笑んでいる
ゼニスは私の推しだけれど、彼を見て揺らいでしまうのは仕方ない。
彼の、銀色と紫の組み合わせはなんかいい!
それに顔の作りは私が見た中で結構私好みなのだ。
「あ、私お茶淹れてきますね!」
私達の様子を確認したメロウはこちらですとソファに案内すると、急いで飲み物を準備しに出て行った。
残された私はニレと共にソファーに腰を下ろすと、テーブルを挟んだ席に座り、こちらを楽しそうに見つめるウィスタリアに視線を向けた
「元気になられた様で安心しました、その後はどこもお変わりないですか?」
「ええ、お陰様で元気になりました。あの、メロウに治療のことを聞きました、その節はありがとうございます!」
「いいえ、殿下が無事で何よりです」
「あれから殿下は…元気過ぎるほどですよ」
「そうか、それはいいことじゃないか」
「…えっと、それで今回ここにはどう言った理由で?」
「ゼニス殿下、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。いつも楽しげに貴方のことを話すメロウやニレの話を聞いていたら私も元気な貴方にお会いしたくなっただけですから」
「え、2人とも私の話を?」
「えぇ、実はメロウとは幼少期からの付き合いで、私の妹、いや、我が子…?いや妹?いや、我が子でも…」
「……どっちでもいいですよ、年齢的に妹でいいんじゃないですか?」
「あぁ。では…妹みたいな存在でして、それで、学園で殿下が可愛がってくれている様で安心しました」
結構、場合によっては勘違いされそうな言い方だけど…
とりあえず妹か、我が子で例えるのを悩んでいる姿に正直言ってどっちでもいいんじゃないかな?と思った。
隣で話を聞いているニレも同じ気持ちだった様で、彼はすかさずウィスタリアに言葉をかけていた。
それにしても、彼の発言は人によっては絶対勘違いすると思う。
メロウを我が子って、一体何歳で子供作ったんだって話よ…
メロウと幼馴染ってだけでも驚いていたのにそれよりもさっきの発言が上回っている。この人、例えがおかしい。
その後もウィスタリアはすごく真剣に話していたので、彼の言葉にいいえ、こちらこそお世話になっておりますと返事を返した。
「もちろんニレのことも……」
「…迷ってるなら弟でかまいません」
「あぁ、ニレの事も、もちろん弟のように思っているから心配しなくていい」
「…ええ、別にちっとも心配していませんが?」
「君は本当に素直じゃないな」
相変わらず可愛げのないニレの態度にも顔色ひとつ変えずに微笑んで見せる彼は、さすが大人の対応
ただ、私が思うにウィスタリアは変わった人かも知れない。
ニレも彼に慣れているからか普通に接している
それがなぜが面白い。
「あの、ニレがここに数日来てないから痺れを切らしていると伺ってたんですけど…?」
「あぁ、それはここに来てもらうための口実ですよ。ニレの素晴らしい研究を邪魔する様な事は流石にしません」
「それはありがとうございます」
「てっきり、怒って呼び出されたのかと思ってました」
「まさか、そんなことしませんよ」
良かった、ちゃんと本人からそうじゃないと言われれば緊張も解けて楽になった。
ちゃんとニレの研究に理解ある人で良かった。
そうと決まれば後は個人的に彼に聞きたい事がある
いくつか質問してもいいかと聞けば彼は優しく了承してくれた
ニレは横で何を聞くんだと若干警戒していだけれど気にせずウィスタリアを見た
「ご結婚は?」




