性転換の指輪
「おぉ、可愛い指輪…これを指にはめたら女性に?」
ニレから貰った魔道具は、それは可愛いらしい指輪だった
指輪の真ん中に小さくて白い玉が嵌め込まれていて普通のアクセサリーにしか見えない。
「いえ、それだけだと性別は変わりません。その指輪に殿下の魔力を込めないと」
「なるほど…」
とりあえず納得して人差し指に指輪を通した。
思った通りサイズもぴったりでやっばり、可愛い
「じゃあ、魔力を込めてみて下さい。指輪の中に魔力を注ぎ込む感じで」
ニレに言われた通りに指輪に手を当てて魔力を注ぎ込むイメージをしていく
段々と手の平が暖かくなっていくのを感じて指輪を覗けば瞳の色と同じ青緑色に変わっていた
それと同時に、なんだか目線も変わっていて気がつけばニレと同じ目線だった私は、彼を見上げないといけなくなっていた。
ニレは私を見るとふむ、と1人納得して成功ですねと呟く
成功と言われても目線が変わっただけだし、と下を向けばあの胸筋が大きく膨らんでいた
咄嗟に両腕でそれを掴むと、どこか懐かしい感触が蘇ってくる
「む、…胸?!」
「・・・・・」
あまりの懐かしさに胸を凝視し叫べば、ニレは白い目で私を見ていた。
彼には分からないだろう、この気持ちが。
あまりに嬉しすぎて、近くにある頭身鏡を覗けば
そこにいたのは金髪の長い髪に、青緑色の宝石眼をした
ゼニス、というか、母によく似た少女だった
「わぁお!…可愛いじゃん?!」
声も、低かったゼニスとはまったく違い今の私の声は誰が聞いても女の声で、今までのたまに出るオネエ声ではない。
ゼニスの時は極力、男っぽく喋る様に気をつけていたけど、気を抜くと地が出ていたので正直自分でも変なのは分かっていた
鏡の前で立ち尽くす私の姿はやはり、ゼニスの面影もあって
彼に妹がいたらこんな感じだったかもしれない。
性別は変わったものの服装はゼニスの服のまま
サイズの大きいブカブカの服だけれど、それでも元の性別に戻れた事が嬉しくて、その場をクルクルと回ってみた
この姿は、どの角度から見ても文句のつけようが無かった
嬉しすぎて今から街に行きたいが、今日は魔塔に行く用事がある。
買い物に行くのはまた次にして、今日はニレの隊長に会わなければならない。
「…殿下、ちょっといいですか?」
「ん?なに?」
「もしや、国外逃走の為に性別を変える様頼んだんじゃ無いですよね?」
やけに深刻そうに話すニレは私が姿を変えて逃亡しようと考えていると思ったらしい
そんな事は一切考えていなかった私は、違う違うと手を振った
「流石にそれは考えすぎだって!ただ単に女になりたかったの!」
「…それもどうかと思いますけど」
「あ、ちなみに質問なんだけど、このままこの指輪を着け続けてたら女の子のままで過ごせる?」
「…いいえ、不可能です。指輪に貯めた魔力が底をつけば自ずと元の体に戻ります、永遠に性別を変える事は不可能ですよ」
「ええ〜、…そうなんだ」
「自然の摂理を変えることは、いくら僕でも出来ません神じゃない限りは」
「そっか…ニレにしても無理か。子供欲しかったなぁ」
「…一体、何をしようとしているんですか?」
「普通に恋愛して普通に結婚したいの」
「恋愛して結婚は殿下のままでも可能じゃないですか?」
彼の正論に返事を返すのもめんどくさくなり、私は大きなため息を吐いた。
今、ニレに何をいっても分からないだろう
元の私は女ですなんて言ったら余計混乱しそうだし
今から魔塔に行くから頭がおかしいと思われたら魔塔でそのまま検査されるかもしれない、それは困る。
ここは、折れて適当に誤魔化すしかないだろう
「まぁその話はここまでにして…とりあえずこの指輪の扱い方は魔力を込めるのと、戻る時はどうするの?」
話を変え笑って誤魔化せば、神妙だったニレの表情は少しだけ柔らかくなった。
「戻る時はこの玉をひっくり返せば戻ります、こんな感じで」
ニレは私の指輪の玉をコロンと反転させると中から白い玉が出て来て、カチャッと小さな音がした。
その瞬間、体が変化していくのが分かる
ヒュルルルとサイズが変わっていき、なんだか今はまだ慣れないけど、これに慣れさえすれば余裕かも
「へぇ!すごい…」
「いいですか、この魔法具は誰にも知られない様にして下さいね。殿下が女性になる、なんて知られたら大変なことになりますから」
ニレが言う様に確かに王太子が女性に変身するなんて知られたら、王族の恥!なんてゴシップが描かれそう
何かあったらコレを作ったニレも色々言われるかもだし
とりあえずは、そうならない様に気をつけながら過ごすことにしようと思う。
「うん。わかった、ニレと2人だけの秘密だね」




