天才は皆の希望
カメリアと共にニレの元に戻った私に、彼は開口一番こう言った。
「魔獣には殿下の美しさは通用しない様ですね」
世界平和は無理でしたかと残念そうにする彼を見て、なんだか急にほっとした。
実技が終わったこともあってか、ニレの顔を見てホッとした私は勢いよくニレに抱きつくと、上手くいったよと彼に先程のことを説明した。
突然抱きしめられた彼は、若干迷惑そうにしていたけれど、さっきまで不安で仕方なかった私を知っているので嫌がる事はせずに、見てましたから知ってますよと優しく背中をポンポンしてくれた。
「あの光の矢はすごかったですね、見ものでした」
「流星群のこと?あれは私も思った」
「確かに、流星群の様でしたね」
「プルメリアの技をパクっただけなんだけどね」
「それでも、素晴らしかったですよ。また見せてください」
もちろん、と頷けばちょうど先生が次の挑戦者を呼び込んでいた。
ニレを腕から解放すれば彼は次は僕達なんで行きますねと言い、メロウと共に前に出た。
堂々としているニレと違って、不安そうなメロウと共に結界の中に入って行く姿に隣のカメリアはメロウの事を心配そうに見ていた。
「メロウさんすごく緊張していたけど大丈夫でしょうか?」
「大丈夫、ニレがいるから」
あの天才的な頭脳に風の魔法を使う彼が付いているのだ
大丈夫じゃない訳がない。
それに、彼が選んだ相手なのだからきっとメロウも大丈夫だ。
そう思いながら、彼らの実技を見届ける事にした。
「メロウ、無駄な戦闘は避けて浄化してしまいましょう」
ニレがそう言うと、メロウは頷いて目を瞑った。
手を組んで何かを唱え始めると空から大粒の水が降ってくる、まるでそれは雨だ。
彼女が魔法を使い出したことを確認するとニレは風を起こし始めた、それは竜巻の様に渦を巻いていき、迫りくる魔獣達を巻き込んでいく
雨、全ても竜巻の中へ吸い込むと魔獣が水の中でぐるぐると回っていて、なんだか洗濯されている様で面白い
段々と竜巻が早さを増していき、縦に細くなっていくと
そのまま、竜巻は魔獣と共に一瞬で消えてしまった
2体の魔獣は周りを見渡してもどこにもおらず、再生する気配もない。
先生達はそれを確認すると声を上げた
「45秒!新記録だ!無駄のない素晴らしいコンビネーションだった!」
あまりの早さに、周りの生徒達は呆気に取られていたが
先生の言葉に皆が響めいた
ゼニス達よりも早く、浄化したことで周りはざわついていたけれど、光魔法以外でもちゃんと強い事を証明したニレは彼らに希望を与えた。
1人では浄化は出来なくても、協力すれば強力な浄化魔法になる。
フリント達やニレのお陰でその事を見せつけられた彼らは、自分達でも出来るんだと勇気づけられその後もどんどんと挑戦していく人達が増えた。
早速戻って来た彼らに声をかければ、ニレはもう少し魔力量を上げればよかったと納得していなかった。
あんなに、凄かったのにと私が言えば彼は次はもっと威力を上げてから試してみると言い出した
流石、ニレとしか言いようがなくてカメリアとメロウと共に天才は考える事がすごいねと苦笑いを浮かべた
結局、結果は1位がニレ・メロウで、2位はゼニス・カメリア、3位がフリント・プルメリアの順になった
フリントは終始悔しそうにしていたけど、これを機に浄化の練習もするらしい。
必死にプルメリアに協力してくれ!と頭を下げるフリントには驚いた。
流石にそこまでされたら断ることもできず、渋々プルメリアも了承していたので、なんだか2人の今後が楽しみだなと違う意味で見守っていた。
カメリアは2位になった事を喜ぶどころか私のせいでと何度もまた謝るので、良いの良いのと気にしてない事を告げた。
どうせ、王になる気もないし2位ぐらいがちょうど良い
あんまり最下位だと王族としての立場もあるから、このくらいが良いのだ。
カメリアと違い、全く気にしていない私に彼女は不思議そうにしていたけれど、王位は弟が継ぐから良いのと言えば、彼女は目を開いて驚いていた。
ニレからは何言ってるんですかとすぐさま怒られたけれど、実際その意思は変わらない。
私は女になって普通に恋して普通に過ごしたい。
国を背負って生きていくなんて無理無理!
こんな生半可な気持ちで王になりたくないし、国の為を思うと、ちゃんと国を思いやれる人を王座に座らせるべき。
今はまだ、頼りないセレストだけどきっとあの子なら大丈夫だろう。
そう信じて、私はニレが開発している性別転換の魔道具を待ち続けている
あと3週間ちょっと経てば手に入るのだから、本当に楽しみで仕方がない。
魔道具を手に入れたら、早速街に出てドレスでも買いに行こうっと!




