ゾンビと流星群
前世、ホラー映画はよく見ていた方だし、ゾンビが出てくる映画も良く友達と見に行った事だってある。
でも、あの時は現実には存在しないと分かっていたから耐えられたわけで…
まさか、目の前に映画の中に出ていたグロテスクなゾンビが現れるなんて思っていなかった。
涎を落としながら、此方を恐ろしい顔で見ている魔獣はどこを見ても全てが気持ち悪い
大体小説でさえ、こんなに気持ち悪い魔獣なんか出てこなかったはず
例え出てきたとしても、ゲーム内で見たのは普通に小動物みたいな可愛らしいやつだった。
だからこそ、こんなキモいのが存在した世界なんて、考えるだけで嫌になる
ただでさえ、怖いというのに私の前にいる魔獣は先生の計らいでスタート時点から6体と何故か多い
先生曰く、
「君は光魔法を使うから魔獣の数を少し増やした段階で始めるね」
だそうだ。
確かに、光魔法だとすぐに終わるから意味がないと思ったんだろうけど、事実、戦うのは私だけだ。
いくら、光魔法が強いからって1対6は鬼ですか?
まぁ、それだけ光魔法は強い事だろうと納得してとりあえず、早く終わらせるために先程作った可愛らしい弓矢を構えてみる
立ち尽くす魔獣に焦点を合わせようとした時凄い速さで動き出した。
「え、はや!」
魔獣の動きが早すぎて、光の矢が上手く命中できない
撃ちっぱなしの光の矢は命中する事なく彼らを通り過ぎていく。
魔獣はそんな私を馬鹿にする様に軽々と避け続ける
まさかの事態に動揺したけれど、せっかく作ったこの弓矢を捨てるのも嫌で、至近距離に来た魔獣だけを狙って光の矢を撃ち込んでいくことにした
普通は遠距離で放つ方が良いんだろうけど、それじゃ狙えないのだからしょうがない
すると、魔族は跡形もなく消え去った
ほっとしたのも束の間、1体を倒したと思ったらあと5体も一斉にこちらへ飛び込んできた。
素早く、弓を放っていたけれど3体にしか光の矢が当たらず残りの魔獣を取り逃した。
地面を蹴り上げ、空高くジャンプして攻撃を避ける彼らに、どうにか矢を放ちたいのに当たらない。
それどころか魔獣は後ろに立ち尽くすカメリアを見ると彼女に向けて大きな手を伸ばした。
弓ではもう間に合わないと思った私は、咄嗟に弓ごと投げつけると、ちょうどヒットしたのか光と共に魔獣は消えた
可愛い弓には申し訳ないが、また作るから許して欲しい
「ありがとうございます!」
「間に合ってよかった…」
そう言いかけた時、カメリアの背後にいつの間にか回っていた最後の魔獣が、鋭く尖った爪を彼女の頭部に向け振りかざした
咄嗟に、やばいと思った私は彼女の腕を引いて抱きしめ庇う様に魔獣に背を向けると、バッチチチチィと激しい音が辺りに響いた。
音と共に、背中に光の壁が現れ私に触れようとした爪ごと魔獣を弾きとばした。
先程伸ばした魔獣の手は消滅して片腕だけになった状態の魔獣は、危機を感じたのか私から離れると、こちらを見据え警戒している様だ。
鋭い魔獣の瞳が私を捉えると、大きく口を開けた
なんだか、急に命の危機を感じた私は、魔獣に向けて手を広げると先程のプルメリアの技を思い出した。
カメリアが腕の中で私に魔力を注いでくれたのもあって
空から大量の光の矢が魔物に向かってものすごい速さで、ヒュンヒュン!と音を立て落ちていく。
まるでそれは流星群の様だと眺めていれば、いつのまにか魔物は浄化され消えていた
「1分01秒、今のところ1位だな!流石ゼニス殿下だ!
何かを守る時は人は必ず強くなる、その例が今のだな」
先生の言葉と共に、周りの皆が歓声を上げた。
その中にはきゃーと黄色い悲鳴をあげる声も混じっていて、私は胸の中で申し訳なさそうにしているカメリアと視線が重なった
「あ、ごめんね」
素早く彼女を腕の中から解放すると、どこか申し訳なさそうにしていた。
怪我でもしたのかと心配になり、結界の中を出る時に声をかければ、彼女は何もできなかった自分が悔しくて申し訳ないと頭を下げた。
「謝るのはこっちの方!私の不注意でごめんね。それに最後に魔力をくれたからあんな大技が出せたし、モリオンさんには感謝してるよ」
「いいえ、それぐらいしか出来なくて…申し訳ないです。本当だったら、私が殿下を守らないといけない立場なのに…」
「そんな事ないって!それにモリオンさんはこれからすごく強くなるはずだし、だったら今ぐらいは私にも見せ場ぐらい譲ってくれないとね?」
「…殿下、私浄化できる様に頑張ります。このご恩は必ずお返し致しますから」
モリオンの瞳を真っ直ぐに私に向ける彼女の意思に、私は頷き、わかったと返事を返した。
彼女にとっては、さっきの戦闘で守られてばかりなのは、悔しかったのかもしれない
今はまだ、浄化が出来なくてもそのうち彼女は王族に並ぶほどの強力な浄化魔法を覚える事になる。
なんだかんだ、魔法を使って楽しかったし良い思い出ができてよかったよと笑えば、彼女もやっとそうですねと笑ってくれた。




