想像と違う魔獣
「はは!貧血でぶっ倒れたって言ったからこんなにトマト貰ったのか?お前すげーな!…お!このバナナもうめぇな!」
トマトの籠を抱えて、バナナを頬張る彼は許可してもいないのに先程から勝手に1人で食べている
ニレから全てを聞いた後もフリントはただ面白れーと笑いながら。
ニレにとってはトマトを食べずに済んだので、フリントの登場には胸を押さえてホッとしていた。
フリントといえば、当たり前のように私達の前の席に座ると、振り向いて机の上に置いてあるバナナに再度手を伸ばし普通に食べだす
さっきからずっと食べてばかりだが、彼の胃袋はブラックホールの様だ、あれだけの量を軽々と食べ進めて行くフリントはまるでバケモノ
彼のその食べっぷりには流石にニレと呆気に取られて見ていたあんなに沢山籠の中に入っていたトマトは気付けばひとつも無くなっているし
「あー、このトマトうまかった!また食い切れなくなった時は俺が食うから言えよな!」
あんだけ食べても尚、バナナに手を伸ばし雑に皮を剥いて行く様を見て、私とニレは2人で顔を見合わせた。
「ねぇ、あんなに食べたのにまだ食べるわけ?」
「あ?まだちょっとしか食ってねーよ?」
いや、ちょっとではないよねとニレと目で会話をしてフリントを見れば、頬いっぱいにバナナを頬張っている
騎士団に入っているだけあって、食欲が旺盛なのは当たり前なのかもしれないけれど、ここまで大食いだと見ているこちらまでお腹いっぱいになる。
何だかさっきから胸焼けしてきて気持ち悪くなってきた次第だ。
「ねぇちょっとさー、フリント見てるだけでお腹いっぱいになるからそれ後で食べてよ」
「ん?そうか?んー仕方ねぇな、なら後で食うか」
「…大体それは、殿下の為に頂いたものですよ。何で全部食べてるんですか?」
「そうは言ったってこんなに沢山はゼニスでも食い切れねぇだろ?お前だってトマト嫌いなら俺が食わなきゃお前が食う羽目になってたかも知んねーじゃん?」
「…まぁ、それは感謝していますけど」
「な?ならそんなお堅いこと言うなよ」
「はぁ…とりあえずそのバナナはしまってください。殿下が胸焼けして倒れそうですから」
そうだ、ニレの言う通りさっきからフリントのその食べっぷりを見てるだけで、お腹いっぱいになり正直吐きそうだ。
これ以上、目の前で食べ続けるフリントを眺めていたら結構やばい気がする。
とりあえずは、ニレから貰った胸焼けを治める薬を貰い、なんとか落ち着いてきた。
だけどこれ以上はもう食べてる姿を見るのはやめたい
バナナが嫌いになりそうだ。
「うえ、まじかよ?大丈夫か???」
「殿下はただでさえ病み上がりなんですから、気をつけてくださいよ」
「へいへい、気をつけますよ」
相変わらずお堅いなぁとニレを見て笑うフリントに対し
ニレは、小さくため息を吐くとまたノートに視線を戻した。
そんなニレにフリントはノートをチラリと覗くと、またなんか作ってんのか?と私に聞いてきた
日々研究してるんだよ彼は。と言えば、すげぇなこいつと感心していた。
フリントも時々ニレに頼むことがあるらしく、ニレの天才的知能には感心している様だった。
正直、仲が良いのか悪いのかよく分からないが…
「あ、そういや今日の授業で魔獣出てくるの知ってるか?」
急に話題が変わり、魔獣という単語が出てきた
何だか急にファンタジーな感じになり、改めてここはそう言えば、小説の世界なのだと思った。
しかも、魔獣なんて前世では全く存在しない。
実際転生した今でも魔獣を見たことが無かった
だからこそ、フリントの言葉に興味津々になった私は彼の言葉に耳を傾けた
「どんな魔獣が出てくるの?!」
「んー俺が騎士団で見た感じでは、なんかキモいな。
魔獣とか言いながら人型だし」
「え、キモい感じの人型の魔獣?怖すぎるんだけど」
「まぁ、可愛いもんじゃねぇよ」
全然私が想像していた可愛い感じの魔獣ではなく、がっつりキモい系らしい。
まぁ、可愛くてちんまりしたやつだったら退治するのも抵抗あるけど、見た目が気持ち悪いなら普通に退治できそうだ。
実際に見てみないと、どんなものかは分からないけど
「てことは、今日実技あるって事だよね?魔法使えるじゃん」
「そうそう、だから俺も楽しみなんだよな!」
ぶっ放していこうぜぇ!と手の平に小さな炎を出して楽しそうにしている彼を見て、目の前で魔法を見た私はおぉ!と感動していた!
「やばいねそれ!てか、あつ!」
フリントの炎に手を伸ばせば、さすがに本物の火で触れるどころか近くに手を伸ばすだけで火傷しそうなほどの熱さを放っていた。
咄嗟に熱くて手を引っ込めた私の腕をニレが掴み引っ込めた。
「殿下、気をつけてください。下手に触ると防御魔法が発動しますよ」
「あ、そっか。ごめんごめん、気をつけるよ」
そうだった、フリントの炎に攻撃されたと勘違いして
ゼニスの防御魔法が発動してしまう所だった。
ついつい忘れて彼の炎に手を伸ばしてしまった事を思い出し、ニレに謝れば彼はフリントにも火を出すなと注意した。
「ここは教室ですよ、燃やす気ですか?」
「ちょっと、出しただけだろ?煩い奴だなぁ」
「そのちょっとで、何かあったら責任取れますか?」
ニレの言い方にフリントも若干のムキになり、空気が変わって来た、咄嗟に2人の間に入り込んでまぁ落ち着いてよと声をかける
「まぁまぁ!確かにここ教室だしさ、また後で見せてよ」
ニレの言葉は正論だけど、せっかく見せてくれたフリントには申し訳ないので、一応2人を宥めてその場を落ち着かせた。
後で見せてと言えば、仕方なさそうに火を引っ込めてくれた彼にお礼を言えば、さっきとは違い楽しそうに笑う
「なら後で存分に楽しもうぜ!」
そう言ってにかっと白い歯を見せた彼を、ニレは呆れた顔で見ていた。
私もフリントの切り替えが早いなと思いながらも、頷いて分かったと答える
なんだかんだ私も凄く、午後の授業が楽しみなのだ




