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クールな幼馴染と登校


あれから間も無く、僕は幼馴染の少女と共に、見慣れた道を歩いてた。

鈴華は母さんと何かを話していたらしいが、結局、どんな内容だったのかは分からなかった。

当人に聞いても、「秘密よ」と微笑みを浮かべてはぐらかすだけ。


非常に気になる。

もう一度、訊いてみようかな。

そう思って彼女の方を見てみると、彼女はスマホで文字を打っていた。。


「何してるの?」


「メールよ。 私の両親が今日遅くなるらしいから『今夜は貴方の家でご飯食べていきなさい』だって」


「この前と同じだね」


鈴華のご両親はベンチャー企業の社長と副社長であった。

立ち上げた当初は、なかなか上手くいかない事もあり、よく僕の家でお世話になっていた。

それからしばらく、会社の軌道が上手くいき(会社の経営が軌道に乗り)、安定すれば彼女が家にいる時間も自然と減っていった。

でも、幼い頃からの名残なのか、朝や夕方には僕の家に来てご飯を一緒に食べる事も多い。

つまり、鈴華にとって僕の家は第2の家でもあったのだ。


「じゃあ、学校が終わったら直行する事で良いんだね?」


「そうね……何も無かったら、ね」


それからは他愛もないトークをしながら、道を歩く。

いつも通りの光景だった。


しばらく歩いていると、やがて横断歩道が見えてきた。

人の形をした緑色の光が点滅している。

どうやら、少し来るのが遅かったらしい。


「残念。 少し遅かったみたいね」


そう思ったのは、彼女も同じだったようだ。

目の前の信号が“青”になるには少し時間が掛かる。


「早く青になってくれ……」


家出るの少し遅れたからな。

ちょっと心配。


「問題ないわ。 このまま進んでも余裕を持って到着出来るから」


「なら、大丈夫だけど」


信号が変わるまで待っていると、僕たちの隣で学生カップルがイチャイチャしていた。

背服は……近くの公立高校の物だった。

キャッキャウフフとしている高校生カップル。


その内容は──ベットの上での感想だった。


「……」


いや、こんな場所で話すなよ……。

外じゃん。

周り見ろし……このリア充め。

2人の会話は鈴華にも聞こえているはずだが、彼女はいつも通りの涼しい表情だった。


「……」


やがて信号が青になり、一斉に歩行者達が進み出す。

十字路を右に曲がって少し歩けば、坂が見えてきた。


学校に続く小さな坂道だ。

坂の上には、同じ制服を着た生徒たちがポツポツといた。

中には彼氏彼女の関係の生徒も見える。

さっきの交差点と言い、この坂道と言い──。


「羨ましいな……」


そんな事を呟きながら、歩き出す。

その時だった。


「貴方は……彼女が欲しいの?」


「えっ?」


「彼女、欲しいの?」


「……」


いや、いきなりどうしたんだ?

えっ、彼女?

僕が彼女が欲しいって?

まさか、聞かれてた?


「僕が彼女が欲しいかって?」


「そうよ。 どっち?」


何この難しい質問。

確かに、ゲームとかアニメとか見ると、彼女がいると羨ましいとは思う。

僕だって文化祭で告白されたいし、修学旅行で一緒のベットに入って夜を過ごしたいと言う欲望はある。

でも、実際に欲しいかと言われると……。


「別に……欲しいとは思わないかな」


あくまでも偏見だが、彼女がいると自由時間が減るイメージがある。

それに別れる事だってあるし、もし浮気とかされたら、たぶん耐えられないだろう。

そもそも僕には鈴華と言う昔からの異性の幼馴染がいるからな。

将来できる彼女よりも鈴華の方を優先しちゃいそうだ。


だから、羨ましいとは思うけど、欲しいとは思わない。

鈴華が彼女になってくれれば嬉しいけど、あんまり変わらない気がする。

それに、彼女だって僕の事をどう見てるのか。


「そっか……」


シューンとする幼馴染。

だけど、その表情はどこか嬉しそうにも見えた。


「あら、そろそろ時間ね。 ごめんだけど、用事があるから。私は先に行くよ」


「いってらー」


時間というと、生徒会か?

……凄いな。


「なるべく急ぐのよ? 貴方は運動神経が壊滅的でしょうから」


「……余計なお世話だよ」


「そうかもね?」とふふっと笑う少女。

彼女は「また教室で」と、そのまま駆け足で坂を登って行った。


「……すごい速さだな」


どうやったら、あんな運動能力が身につくんだろう。

しかも頭も良いし。

見た目も最高級だ。


一体どこで差がついたんだか。

昔からずっと僕と一緒にいたはずなのに……。

そんな事を思っていると、鈴華の姿が小さくなっていく。


「僕も急がないと……」


4年連続の皆勤賞。

5年連続を目標とする身としては、遅刻するわけにはいかない。

そんな事を思いながら、僕は真っ直ぐ学校に向かった。

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