変化
春季休業が終わり、高校2年生として最初の登校日を迎えた。
新しいクラス名簿が張り出された掲示板前は受験の合格発表さながらの歓喜と落胆で賑わっている。
左端のA組から順に三枝明里という自分の名前を探していると、C組に花菜と沙織の名前があるのを先に見つけた。
続いてD組に私と雪乃の名前があった。
「明里ー!」
ふと背後で私を呼ぶ声がした。
その快活な少女を連想させる明るい声には聞き覚えがあるようでないような。
振り向くとそこにいた人物が一瞬誰か分からなかった。
目を隠すように垂れていた前髪は眉が隠れる程度に綺麗に切り整えられ、長いストレートの黒髪はヘアアイロンをかけたかのようにその艶を余すこと無く曝け出している。
そして見た目以上に、今までとはまるで別人のように自然体に微笑んでいる早川雪乃がそこにいた。
「明里おはよ〜」
「お、おはよう。」
「クラス分けどうだった?」
「……えっと、私はD組で、花菜と沙織はC組だったよ。」
「私は?」
「D組。」
「一緒だね!」
「う、うん。……なんか雪乃、春休に何かあった?」
「え? なんで?」
「なんか変わったなって。」
「普通だよ? 早く行こ!」
いつもどこか憂いを帯びていた彼女とは正反対の、ちょっとしたことで飛び跳ねて喜びそうな明るい声色。
私の一歩先を歩く彼女の後ろ姿に、言い知れぬ不安感を覚えた。