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昴くんは宇宙人 1

 九論はティーカップが載ったトレイを持ったまま『これから先が楽しくなりそうだなあ』みたいな顔をしている。

「うちにもひとつ頂戴な最初に飲んでみるから…うん大丈夫ね多分、気持ちが楽になるけど変な成分も入ってないみたいね、先生と昴くんも飲んで心が安らぐわよ」

「さっき海王星とか天王星とか言ってたみたいだけど」

「そうよ太陽系第7惑星と第8惑星の事よ、当然知ってるわよねその内一緒に行くわよ」

「本当に宇宙に行くんですね信じられないな」

〈あのー、もう宇宙に出ちゃってるんですけど現在高度400kmです。あっ、外部モニター見て下さい宇宙ステーションが見えますよ手を振ったら向こうも気付くかも知れませんね、何でしたら記念写真撮りましょうか〉

「Aちゃん!ふざけすぎよ、初めてのお客さんでもないでしょうに」

〈久しぶりだしその子が昴くんでしょう、キャプテンの…〉

「Aちゃん!余計なことを言わないのよ」

〈余計なことなのかなぁ〉

「昴くんの心が落ち着くのを待ってあげて」

「昴くん?大丈夫よね、どうした…うわっ、重い九論助けて昴くんどうしたのよ」


挿絵(By みてみん)


 昴くんが突然アイリーンに倒れ掛かってきた。

「気を失っている。何故だ」

「緊張の糸が切れたのでしょう、どこか横になれる場所とかありますでしょうか」

(さすが新月さんは冷静だわ)

「うちのベッドがあるわ九論手伝ってくれるかなぁ、うち1人では重たくて運べないの、お願い」

「仕方ない手伝ってやるか」

「先生も少し横になって休んだらいいと思うわ…ベッドは1台しかないから簡易ベッドを隣に作るわ」

「アイリーンさんはどうするのベッドも場所もないのでしょ」

「うちと九論は操縦席で休むわ、ありがとう心配してくれて、でももう慣れているしリクライニングすると結構休めるのよ」

「ふう、やっと人心地着けそうね」

「アイリーンさっきエーちゃんではなくAちゃんとか言っていたな、いつ呼び方を変えたんだ」

「別に変えてないわ、人前でエーちゃんとかクーちゃんとか言うのが恥ずかしくなっただけよ」

〈この際だからエーちゃんもAちゃんもやめて別の呼び方にしてもらえませんか、たとえばボスとか〉

「いいとこ大将ね他には番長とか」

「英一で良いんじゃないか」

「そんなありふれた名前、何か詰まんない」

「自分でもいい名前だって言ってたじゃない」

「あなた達、名前で遊ぶもんではないと言ったでしょう。あら言ったのはアイリーンさんだけだったかしら」

「あら新月さん休まなかったのね」

「私は支部長補佐だったのよまだ休むには早すぎます。だからもう少しだけ一緒に居させて下さいな」

「それは良かったわ色々教えてもらいたいのだけど…その前に謝らせて下さい、うちのせいで支部が滅茶苦茶になってしまって」

「いいのよ、経緯はあの後スターキッドAIから聞いて分かったから、その通りなんでしょう。お互いに過ちがあったはずだから謝ったりしないで」

「わかりました。でもご免なさい。ずっーと心の中にわだかまりがあって謝って許して貰わないと消えそうになかったから、これですっきりしたかも知れないわ」

「これからどうするのですか」

「頼れるところは海王、天王、冥王星それぞれの星に駐屯している人たちなんだけどさ、海王星の人はまだ知らないから除外して冥王星のイノマン…ドクターイノマンの所に行こうと思うの途中で天王星警備隊のレッド隊長に連絡して〖うずしお〗を使わせて貰えないか聞いてみるわ回数券はまだあるし」

(回数券を貰った時は片道しか使えないって言ってたけどもう一度聞いてみなくっちゃだわ)

「アイリーンさんはあの厄介なケンタロス人と交流があるのですか」

「いい人たちだったわよ、最初から偏見を持っていては友達にはなれないわ」

 地球を周回して離脱速度が十分になると新月さんは『明日のために休まないとね』と言いながらベッドへ戻っていく。

「さあ私達も行きましょうか…英一ちゃん」

「ちゃん付けはやめて下さいよ~もう」

「気の抜ける返事しないのよ、ほら全速前進~!」

 急速に小さくなって行く地球を眺めながらアイリーンは顔をしかめてゆく。

(そういえば新月さんの分の食料が無いわね…)

 冥王星までの距離が果てしなく遠く感じてしまうアイリーンだった。

 スターキッドの操縦席に深く沈み込みながらアイリーンは外部モニターに写し出されている真ん丸い月を恍惚とした表情を浮かべて眺めていた。

(以前にもこんな風に月を眺めていたことがあったけどあれは11年も前になるのかしらね、初めて会った光一兄ちゃんとリトルバードの中から見てたわ、あの時は副操縦席に…あっ、なんで涙が出るのよ)

「グスッ!」

「アイリーン、どうかしたのか?」

(九論ったら寝息立ててたのにちょっとした事で起きるのね)


挿絵(By みてみん)


「月を見ていたら醤油せんべい食べたくなったのよ」

〈「醤油せんべい?」〉

 九論とスターキッドAIが呆れ声を出す。

「月を眺めて感傷に耽りながら醤油せんべいを連想するのか、難易度が高い精神修行だな」

〈冥王星名物〖記憶のマシュマロ〗がまだあったでしょう食べたら落ち着くんじゃないかなぁ〉

 記憶のマシュマロは単なる名前だけでなく本当にあやふやになっている記憶を鮮明に思い出させてくれる効果がある。

「九論、起こしてごめんもう寝るわねAちゃんも明日は緊張の連続だと思うから、今の内にリラックスしていてね」

〈そうする後は索敵センサーにお任せするよ、しかし地上では宇宙人排除仕手委員会とかいう組織のハントザETに狙われて追いかけ回されて大変な目に遭ったよね『していいんかい』と言うぐらいならしなければいいのにねぇ〉

「最近聞いた中では最高のジョークね、安らぐわ…」

〈そして宇宙に出たら宇宙和平維持連盟の奴らから逃げるように行動しなければならないしね、アイリーンが好きな鬼ごっこだね〉

「うちは逃げるのは嫌いよ追い掛けるのが好きなの」

「まあ好き嫌いは置いておいてだ、奴らは平和を望んでいるのではなくて波風のない均一な宇宙の存続を維持しようとしているのだ。分かるかな」

 この子は何時になったら寝てくれるのかなと言いたげだ。

「お互いが干渉しないと言うことよね天王星のレッド隊長と冥王星のアンバ隊長みたいに、ケンタロス族はヒューマン族を遺伝子レベルで嫌悪しているので理性ではわかっても本能が拒絶してしまうのでどうしょうもない、だからお互いがそれを理解して仲が悪い事を前提条件として交流している…そういうことなんでしょう」

 アイリーンは話してる内にだんだん目が冴えてしまっている。

〈アイリーンがそれを実現させたのですからワンダフルなことですよ〉

「うちは冥王星でアンバ隊長からレッド隊長の悪口を天王星でアンバ隊長の悪口を聞かされるのが嫌になったんで、三人一緒に名物を持ち寄ってスターキッドの中でお茶しましょうよってごり押ししただけなんだから、あの2人も最初は嫌々だったけど今ではお互いの惑星で定期的に会っているみたいで良かったよ」

「話しに割り込んですまないが、その時アイリーンが地球の特産品の一つと言いながら出した〖炭〗が私の中で再検証を必要とする〖ノイズ〗としてデリート出来ずに残っているのだが本当に『〖炭〗を出して食べさせた』で記憶しておいていいのかな」

 九論はスターキッドAIと共有しているデーターの中でずっと気になっていたことを直接アイリーンに聞いてみた。

「うほほーい、一瞬で覚醒が進んでしまったわ一体何てものを記録しようとしてるのよ、その時のデーターを〖炭〗ではなくて〖焼きサンマ〗に書き換えて焼きサンマの画像データーをダウンロードして添付しなさいよ。〖炭〗のデーターは完全デリートするのよ、艦長命令だからね」

 アイリーンは自分の好意ある大きな失敗をそのまま残す事は大きな恥じになると思っている。

「艦長ではないだろうが、それにたとえ艦長命令でも綱紀違反は受付られないな。そのまま〖焼き過ぎサンマ〗で登録しとくよ」

〈あれを両隊長に食べさせたのだから、僕はアイリーンのことを〈勇者〉だって改めて思ったよ〉

「2人してか弱い少女を苛めるなんてひどくない、それにあの時のサンマは表面こそ炭だったけど中身は程よく焼けて美味しかったんだからAちゃんも九論も記録は最後まで正しくしてよね」

「失礼、あなた達3人だけになると面白い漫才が始まるみたいねいつもそうなの」

 コクピットの入り口から新月さんの声がしてきた。

「昴くんと新月さん寝てたんじゃなかったの」

「トイレに行きたくなって起きたけど場所が分からなくて、新月先生に連れて行ってもらった帰りに楽しそうな声がしてたから…入ったらいけないかなと思ったんけど、面白かったんで思わず立ち聞きをしてしまいました。ごめんなさい」

〈何も謝る必要はないよいつもの就寝前の儀式みたいなものさ、その日1日の気になっている事を言い合って翌日に持ち越さないようにしてるのです。良く言うでしょう『あの時言っておけば良かった』とか『気にはなってたんだけど』って、望まない結果になった時に言い訳するよね、そういうのを後の祭りって言うんですよね。そうならないよう先にお祭り騒ぎして言いたい事を言い合っているのです。以前は僕の完全人形外部端末のバイオロイドが居てねアイリーンの相手をしてくれていたから僕がこうやって話をする事はなかったんだけど3年半前に機能停止しちゃってね、そのバイオロイドが逝く前に記憶と心をイノマンって名前の科学者が自分のクローンにコピーして…まあ命を繋いだって表現が一番当てはまるのだけど、それがそこの九論なんだよ。最初の頃は僕の完全人型外部端末バイオロイドがそのままそこに居るみたいだったんだけどね、日が経つに連れて完全に独立した意思を持つようになってしまって今ではご覧の通り僕の言うことなんか全然聞いてくれなくなったんだ。それと大きな声では言えないんだけどイノマンは天才的科学者でアイリーンの遺伝子学的父親なんだ。いつか会う時来ると思うんだけど気に入らない相手をカエルに変えてしまうって噂があるから怒らせないように気を付けたほうがいいと思うよ〉

 スターキッドAIが良かれと思って色々と喋りまくった。

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