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5. 本当に宇宙だよ~ 1

「起きて、おきてアイリーン」

「もう朝なの?行ってらっしゃいマ、マ……えっここどこ!あれ?光兄ちゃんだ、うちのアパートに泊まったんだね」

「違うよほら宇宙だよ、まだ地球の軌道上だけどね、昨日僕と一緒にこの宇宙艇に乗ったじゃない、トロピカルドリンク飲んで晩ご飯のサンドイッチ食べながらこれからの事をお話ししていた最中にぐっすり眠ってしまったんだよ」

 昨日、副操縦席でアイリーンにトロピカルドリンクを飲ませている間、私は操縦席で発進準備をしていた。

 オートレンジへ調理指示を出していたサンドイッチが出来上ったので食べながらこれからの事を話し始めると、アイリーンったら直ぐに寝落ちしてしまってる。

 だからそっと副操縦席のシートをリクライニングさせて寝かせたのだった。

 寝床まで運ぼうかとも思ったけど一人で目を覚ました時の事を考えると私の側で寝かせて居たほうが良いように思えたから。

 そして今目覚めたところだ。

「そうだった? それより今は何時ごろだろう、マ……お母さんはお仕事行ったかなぁ、うちが居なくなって泣いてないかなぁ」

 私は覚悟した。

 その直後、アイリーンは副操縦席に座ったまま下を向いて声を殺して泣き出し大粒の涙でお気に入りのスヌーピーのパジャマズボンにシミを作っている。

 慰めなきゃいけないんだろうなぁ。

「アイリーンのお母さんに電話してみようか」

「出来るの?」

「大丈夫だよアパートを出て来る前に連絡方法とか教えてもらったからね、今は朝6時過ぎた頃だからおそらくだけど電話に出てくれると思うよ」

 東脊振村にある日本駐屯所を中継局にすれば世界中どこにでも電話ができた。

「うちが掛けてもいい?」

「いいけど電話じゃないよ、こっちに来て座って」

 通信席へ案内して座らせヘッドセットを付ける。

「少し大きいけど大丈夫?」

「大丈夫だよ」

「僕が言う通りに画面をタッチするんだよ」

「ピポパだよね」

「ちょっと違うけど……まあいいか、呼び出し音、鳴ってるかなあアンさん、お母さんの携帯に直接つながるからね」

「うん、プルルって言ってる」

「あっ、そうそうお母さんには僕とアイリーンが宇宙に行くとか言ってないから……ああ遅かったか先に言っておくべきだったな」

「ママ、うちようち、えっ! サギ?違うよ~、 アイリーンだってば、うん今宇宙にいるよ、宇宙だってば、本当に宇宙だよ~ 、地球がまあるく見えるんだから、本当に青かったんだなあって思ったよ、今はまっ白い雲かなあ、所々で光っていてすごくキレイ、えっ嘘じゃないよ~、うん元気だようちは大丈夫問題ない、もう仕事中だった?ごめんなさい。じゃぁ切るね、お母さんも元気でね、また電話するね…… うんバイバイ」

 アイリーンはお母さんの声を聞けただけで満足したみたい。

 長電話にならなくて良かった~と吐息する。

「電話、終わった?」

「うん、ありがとう」

 ちょっとバタバタして通信始めたのでこっちは画像通信にしていたのにお母さんのほうをテレビ電話に切り換えてって言えなかったのが少し残念な気がした。

「アイリーンごめんね」

 良心の呵責に堪えかねてつい謝ってしまう。

「えっ何が?」

「いや何でもないや」

 次に通信する時に改めて言えばいいか。

「そういえばお兄ちゃんうちの事『愛ちゃん』って呼ばなくなったね」

「そうだね、もうここは日本じゃないしこれから行くルナ・ターミナルに着いたら他の人たちと一緒になるのでアイリーンと呼ぶほうがいいと思うんだよ、この宇宙にもその呼び方のほうが似合っているでしょ」

「相変わらずの変態お兄ちゃんだね、ルナ・ターミナル!かっこいい名前だね、昨日の夜お話ししてくれた所だよね、うちすぐ寝ちゃったけど少しは聞いてたよ、それでね火星人が居るのかな~って思ってたの」

「火星人はいないなぁ、でも宇宙人は大勢いるよ、全部で10万人位かな月に着いたらルナ・ターミナルの上空で僕たちの帰りを待っている宇宙母船にそのまま乗り込むんだ、それから用事を済ませた後になるけど、街に降りてみようか基地に向けて出発するのは僕たちが乗り込んで24時間後になってるからそれまで観光だね」

「ルナ・ターミナルって観光地だったの?」

「そうだね、地球の周辺が立入禁止区域に指定された頃は違反者が続出して取り締まりが追い付かなかったらしいんだ、だからルナ・ターミナルと言う観光地を月に作って違反者を無くそうとしたらしいんだけど」

「やってはダメと言われるとやりたくなるのよね、わかるわ、宇宙人も一緒なんだね!」

「そ、そうだね実は地球上にもまだ悪い宇宙人がいるみたいで、彼らは犯罪者なんだけど逮捕するにもあまり表立って出来ないし、彼等が巧妙に隠れるものだからなかなか尻尾を捕まえられないそうだよ」

「その宇宙人に尻尾があるんだったら直ぐに見つかっても良くないかなぁ、もしかしたら動物園のおりの中にいたりして!」

「サファリパークか!ちょっと連絡してくる」

(アイリーンってカンがいいのかな~)

「アイリーンありがとうね、やっぱり誰もそこまで考え付かなかったみたいでさっそく探してみるって、それと次に行く基地の事なんだけど正式には東域宇宙和平維持連盟地球防衛基地と言うんだけど、覚えるのは無理だよね」

「そんなややこしい名前一体誰がつけたの?格好悪いし、そんなんだったらデス・スターのほうがよっぽど好きになりそうだわ」

「死の星なんて嫌だなあ、僕たちにとっては幸運の星になってもらいたいからラッキー・スターのほうが良くないかな?」

「そんなダサダサの名前良く口に出来るものだわ!」

「そんなぁ~、まあ僕も普段は基地としか言ってないからね、ただ正式名称が別にある事だけ覚えていて欲しいな」

「分かったわ格好悪い長い名前の正式名称があることを覚えておくよ、他にも覚えておかなければいけない事があるの?」

「うんそうなんだよ、実は色々教えておかなければいけない事がいっぱいあるのだけど、まずは朝ごはんにしようか」

「その提案には大賛成だわ、さっきからお腹が空き過ぎてグウグウ鳴っているよ、気付かなかった?それで何をご馳走してくれるのかしら」

「宇宙艇の中だからね、大したものは出せないよスパゲッティでいいだろうか」

「凄いじゃない、朝からご馳走よ昨日まで毎日朝はトーストとホットミルクだったのよ、それも時々真っ黒になったのを食べさせて頂いていたわ、でも慣れるとあれは癖になるわね」

 アイリーンは感謝の気持ちを持って食事が出来るみたいでいいことだと思う。

 お残しも平気でするみたいだけど、チャーシューメンの時みたいに。

 私たちはコクピットから出てすぐ左側の調理室に入って食事に取りかかった。

 調理指示は操縦席のコンソールからでもできたので本当に助かってる。

 これから先の宇宙で出てくる食事は全て合成料理になってしまうのだけど、その事は今はまだ伝えないほうが幸せでいられると思う。

「食事が終わったら出発するからね」

「さっき外の景色眺めてたらまだ地球の周りを回っているんだよね凄いスピードで目が回りそうだったわ」

「今は地球を周回しながら加速しているんだよ、あと少ししたら月に向かってジャンプするからね」

「カエルみたいに飛び跳ねるの?」

「カエルの三段跳びもジャンプだけど今回は別の方法だね、今からするのは水の石切りみたいなジャンプだよ」

「え~っ良く……全く分からないや」

「アイリーンは川とか池とかでさ、平たい石をピュンって投げて水面で何回跳ねるか競い合う遊びをしたことがないかい?あれと同じ事をするんだよ」

「ふ~んそんな遊びはやったことないけど、何となくには分かりそうだわ」

「今は無理して分かろうとしないほうがいいよ、もう少し勉強してから理解したほうが正しく覚えるからね」

「分かったわそうするね、勉強は光兄ちゃんが教えてくれるの」

「僕より教えるのが上手な先生が基地にいるよ、その人に教わると思うけど、ただその人こそ本物の宇宙人だから会った時に驚かないでね、その人は心が傷付きやすい人だからね」

「わかったわ、驚かないように気を付ける。それでどんなに凄い人なの?それとお名前教えてて欲しいな」

「僕達はログティーチャーと呼んでいるよ、名前の通り丸太が立って歩いているみたいな人でね知識が凄いのさ、歩くスパコンとも言われている。詳しくは実際会った時に確かめるといいよ、他にも基地には多種多様な人たちがいてね何しろ10万人の宇宙人が生活してるんだから、でもその殆んどはヒューマノイドタイプで違和感がないんだけどね、この宇宙人が地球人と区別がつきにくくて危険なんだ、だからアイリーンも気を付けてね」

「うん分かった良く分からないけど!うちは、何があっても驚かないようにするね」

「ありがとう宜しく頼むよ」

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