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トリプルA作戦 2

 2番隊が50人に近い受刑者の救出を終えたばかりの所に緊急連絡が入ってきた。

「中止だと! 何を今さら救出したばかりの仲間をどうしろと言うのか!」

 ナガクラ隊長は怒り出す。

 ジャミング波による行動不能を解消するため受刑者には中和剤を投与してから救出している。

 今ごろになって留置場に戻ってくれと言っても従う者は一人もいないはず。

(無理矢理にでも付いて来るだろう、こちらは5人あちらは50人なんだから数で押さえ切れる訳がない)

 ナガクラは命令実行を躊躇する。

「元々が少な過ぎなんだ。いくら敵が襲って来ないとしても15人で救出作戦させるのは少な過ぎだろう。揚陸艦内に2名残し、艦外に2人、建物入口2人、通路2人、囚人室入口に2人を配置すれば残りは5人、牢獄から解放された仲間がそのまま作戦に参加してくれないかなあ」

 ナガクラ隊長は大声でぼやいてみせた。

(少しは気持ちが晴れたかも知れない)

「この中に敵の工作員がまぎれている可能性が高いとのことです。今から選別は無理なので全員置いて撤収と命令が下されました。囚人のみなさんが牢から出てなければ罪が加算されることはないし、戦闘に巻き込まれることもないので安全だろうと言ってます」

 通信機を抱えたウィルがイノマンからの指示をナガクラ隊長へ連絡する。

「スパイが居るかも知れないだと、もう既に全員牢から出て自由になっているのに何も起きてないじゃないか、現場責任者である私の判断で50人の受刑者を全員連れて戻ると返事しといてくれないか、但し解放した者たちには隊列を組ませ我々5人が周囲を囲み監視しながら撤退する」

 ナガクラ隊長はウィルへ返信を頼んだ。

 自らは牢から出たばかりでバラバラに広がっている仲間達へ大声で話す。

「解放された皆さんと一緒にここから脱出しますので前方にいる2名の隊員の後ろへ二列縦隊になって…どうした?」

 前方から2名の隊員が両手を上げてこっちに戻って来ている。

 その後ろで牢から出てきたばかりと思われる囚人服を着た2人の大男がマシンガンの様な武器を背中に突き付けていた。

「何をしている?私たちは君たちを解放しに来たのだぞ、時間がないんだ悪い冗談はやめて素直に従って欲しいのだが」

(この二人がスパイか、二人だけなら数で押して何とかできるかも知れない)

 ナガクラ隊長の直ぐ横に立っていた元囚人がそれに答える。

「その言葉をそっくりそのままお返しする。本当に何の冗談だ。たったの5人しか来ないなんて、そっちが人手不足になっているという情報は入っていた。それでも半個小隊25人が来ると予想していたのに実際に来たのは5人だけ、これじゃあ50人用意したこちらが赤字になってしまう、揚陸艦ぐらい貰わなくては収支が合わなくなってしまったじゃないか。さて、本当に時間が勿体ないので無駄な抵抗はやめて素直に全ての装備をこっちに渡してもらおうじゃないか」

 今や5人の周囲は50人の大小様々な武器を持った敵兵に囲まれている。

(あの武器はどこに隠し持ってたんだ?)

「全員が入れ替わっていたのか」

 この期に及んでナガクラ隊長は剛胆だった。

「肝が据わった奴だな、ならばこの状況を正しく理解してもらえることを期待してもいいのかな」

「ああ見事な作戦だ私たちは完敗の様だな、1つ教えて欲しい私たちの仲間は最初からここには一人も居なかったのか?」

 敵の隊長は自惚れて口軽になった。

「居たともさ50人もは居なかったがな近日中に攻めてくると情報があってね、そっちもここの情報を持っているだろう、あんたは自分たちだけが持つことの出来る特権だとでも思っていたんじゃないか、まあ、詳しい内容までは分からなかったからジベル以外の雑魚は早目に牢屋がある輸送艦へ引っ越してもらったよ『来た』と連絡が入った時に牢に入ってお迎えを待ってたのさ、後は黙っていてもお宅まで連れて行ってくれる予定だったからね、だけど気が変わったよ道案内をお願いしなくてはならなくなったのは少し手間だけど、さあ、お喋りの時間は終わりだ、これからキツネ狩りに出掛けようではないか、君達はレッドフォクスなんだろう」

 敵の隊長らしき者は余裕綽々と喋りライフル銃M75ショートらしき物をこれ見よがしに構えている。

 その銃を一目見た瞬間2番隊長ナガクラは彼も私と同じ趣味を持っていてもしかしたら気が合うんじゃないのかと、世が世なら友達になっていたかも知れないなと、軽い気持ちで思っていた。

「我々はレッド・フラックス、束縛された宇宙を悪の手から救い自由と平等を求め続ける解放者の組織名だ。あの世に行っても忘れるなよこのお喋り野郎。宇宙に平等を!我々に自由を!」

 ナガクラ隊長は声高々に宣言し上着を脱ぎ片手で旗の様に振り回す。

 それに向かって残り4名の隊員が敬礼する。

「ちょっと待てその胸の赤い点滅は何だ!」

「カラータイマーのことを君も知っているだろう、僕らの憧れだったじゃないか3分間もあったんだ既に僕たちの仲間は全員逃げたと思うね、我々の仲間全員と入れ替わったことに関しては礼を言うよ、5人で50人も仕留めるんだから4階級特進をお願いしたいのですが、サロメ隊長、聞こえてますよね、先に冥土へ行ってますけど待ったりしません。ずっと後から…来て下さい。ウィル通信士今日までありがとう、皆もありがとう…」

 カラータイマーの点滅が止むと轟音と同時に室内が眩しく輝いたのだがその事を訴える者は誰も居ない。

 爆発が起きる直前にレッドフラックスの5人の隊員は敵兵50人が持つ武器の乱射により絶命していた。

 自爆死ではなく戦死になったのだから彼等に取っては栄誉なことなのかも知れない。

 さもあれ55人の尊い命が失われた事実には変わりがない。

 そんな出来事は露ほどにもなくアルカトラ刑務所が存在するいて座のオメガ星はいつもと変わらない輝きをしている。

 アルカトラ刑務所上空は静寂に包まれている。

 ナガクラ隊長の通信をそれぞれの持ち場で聞いていた2番隊員達は事前の打ち合わせ通り揚陸艦に戻って上空待機を行うために上昇を始めていた。

 但しその速度は遅く何時でも地上に引き返す事が出来る態勢でいる。

 皆が艦内のスピーカーがら流れ出る隊長の言葉に集中していたが最後の言葉が途切れると、喚く者泣き出す者周囲に当たり散らして拳から血を流す者と一時騒然となった。

 揚陸艦内での待機を命じられていた副操縦士のバッハ隊員は艦内放送マイクのスイッチを入れる。

「みんな落ち着く様に。まだ終わった訳ではない。隊長が最後に届けてくれた通信の内容から察するとこちら側の情報が大まかではあるが敵に漏れていると考えられる。敵が来る前に集合地点に向かうけどその前に全員で黙祷を行う。捧げ!」

 その号令で全員が足元に向かって敬礼と黙祷を行う。

「勇敢に散っていったナガクラ隊長通信士ウィル、機関士ハラ整備士ゴトウ重戦士リンツに敬意を表する…… 直れ!」

「これより担当持ち場を一部変更する。隊長代理は私が務める、機関士ホンダは操舵士へ砲撃士ホンゴウは機関士へ至急異動の事。操舵士のダンには僕の補佐をお願いしたい」

 バッハはさっきまで順調だったのに何故こうなったのかと悔んでいる。

 戦場にあっては千変万化など日常茶飯事なことくらいは十分理解しているけど、やるせない心を押さえることは出来ない。

「推進機関最大出力、目標一番隊乗艦シルバーシップ!」

 バッハは固有名を持つ船を羨ましく思っていた。

(揚陸艦なんて殆んど使い捨てだものな、いちいち名前を付けてる暇なんかないのは分かっているけど欲しいな、かっこいい名前)

「5番隊タケダから2番隊応答せよ」

「タケダ隊長どうかしましたか」

「バッハか、大変な目に合ったな死んでいった者達に5番隊全員からお悔やみ申し上げる。これから5番隊は2番隊の護衛につく、後方監視するから前方索敵をお願いする。隊長代行はお前でいいんだな」

「宜しく頼みますタケダ隊長、6番隊が見当たらないですけど何処に行ったのでしょうかね、知ってますか」

「イノマンならたった今、後を宜しくと言ってサロメを追い掛けて行ったよ物好きな奴だ」

「イノマンは私に取っては命の恩人だし、彼の助言がなかったらレッド・フラックスは壊滅していたかも知れない。あまり悪く言わないでもらえますか」

「誰も悪くは言っていないさ、いま1番艦の中は夫婦喧嘩の真っ盛りだろうと思うよ、そんな中に飛び込んで行くんだ物好きでなくては無理だねあいつらも10年振りなんだ少しは水入らずにしてやっても良さそうなんだがな」

「そういう事ですか、イノマンが離脱したならジャミング光線の影響もなくなって刑務所の機能は正常に戻ってきてるんじゃないかな、僕たちも急いで1番隊に追い付かないといけないのにすまないね鈍足に付き合わせて」

 バッハ隊長代理はタケダ隊長が慰めと励ましの言葉を掛けてくれてるのだとなんとなく思った。

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