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トリプルA作戦 1

 イノマンの朝食はもう既に定番になっていると言ってもいいトーストと目玉焼きそれにオレンジジュースだ。

 それをミンツ隊員がきれいに並べている。

 サロメから『お子様みたいな朝食ね』と言われた時があり『ああ、精神年齢が4歳だからな』と返した事があった。

 イノマンが食べながら話しを続ける。

「アイリーンが地球圏に入るのに10年は掛かる筈だからこちらの計画は全て終わっているだろう」

「あっ、あんたそれが目的ねやっぱり我が子は可愛いって思っているのね」

「口の聞き方に気をつけろといった筈だが」

「わかったわ、それであんたの…イノマン様の準備は出来ている……のよね」

 サロメは丁寧語の使い方なんか知らないのでしどろもどろになった。

「何時でも行けるぞ」

 イノマンはそれほど言葉遣いに関して拘ってない。

 皆の食事が終わりテーブルの上が片付くとサロメが姿勢を正して話し出す。

「じゃぁ最終確認をする。アルカトラ刑務所を襲撃して私のジベルを救出することを最大目的とする。作戦名はトリプルAだ」

 サロメがイノマンの目を気にしながら宣言した。

 朝食のテーブルに着いているのは、ジベルの寵姫サロメ、テラマンのナガクラ、サイトウ、イシカワ、タケダそしてマッドサイエンティストのドクターイノマンの6名だ。

 この6名が隊長となり配下を10~15名従えて行動を起こす。

 今現在のレッド・フラックスの構成員は総員100名を数える程度まで減っている。

 これ以上弱体化させない為に、そして東域宇宙和平維持連盟が計画している〖ドライアイスメテオ作戦〗を阻止する為にも10年前に捕らえられた指導者のジベルの救出が必要となっていた。

 参考までに付け加えると、連盟はもっともらしく『破壊を繰り返す人類から地球を守護することが目的だ』と言っているが、本音は地球人類を追い出して地球観光を再開させ全宇宙から観光客を呼び込み金儲けをしようと企んでいるだけの事である。

 サロメは意見を言う人が居ないのを見届け救出計画の詳細説明に入った。

「囚われている他の仲間の救出、設備の破壊、資料の採取、データーの消去が主な目的だ、その他雑多な事は時間に余裕があった時に各部隊長の判断で行う事」

「敵に認知されてから逃走に移る迄の時間は1時間、それ以降は第1次救出計画失敗と判断して敗走計画に移る1時間もすれば敵の増援部隊が到着し逃走経路が断たれるためだ」

(刑務所の最深部に居たら1時間で逃げ切れるのは無理だ、みんな覚悟を決めてるのか)

 イノマンは密かに思う。

「逃走に失敗した者は捕虜になる前に、計画通り自爆してもらうけど万が一逃げ切れた場合には第2次救出計画の支援に回って欲しい。その後の判断は各人に任せる、あと心得違いしないで欲しいのだけど防衛の為の自爆であって、決して攻撃目的で行うものではないことを肝に銘じておくように」

(自爆に失敗したら偽の情報を与えるだったな、それを信じて敵が行動を起こした時に逆探知して迎撃する)

 ミンツ隊員が食後の紅茶を持ってきてそれぞれの前に置いていく。

 ここで私はコーヒーが良いとか言い出す者は誰も居ない。

 レッドフラックスの会食で食後に出てくる飲み物は紅茶と決まっているのだから。

 どうしてもコーヒーが飲みたかったら話が終わった後、自分で淹れることになる。

 サロメの話はまだ続いていた。

「第2次救出作戦実行者は現地で潜伏して再救出のチャンスを狙う。行動開始は主力の敵が敗走している仲間を追撃している直後が理想だけどこれは私が判断する。潜伏の最終タイムリミットは現地で食料や資材が調達出来るかで決める。敵は私達のことを何も出来ない烏合の衆と思っているのは確かだ、そんな思い上がっている奴らの隙を突ければ成功の可能性が高まると思う」

 サロメが紅茶を手に取り香りを嗜んだ後一口飲んだ。

 他の皆もそれに倣うように飲んでいる。

 話はまだまだ続くようだ。

「それでも救出が不可能と判断した時私はジベルと共に自決する。これは責任者の私だけで行う」

(もう10年も経つ。思想の違いというだけで拘束されて苦しい思いをするのには十分過ぎるだろう、最後は2人だけで華々しく逝かせてもらっても良いだろう)

「第1次計画で成功した時はプロキシマアルファ星に行き地球からの移民者に紛れてやり過ごす。その後の状況を見計らい安全を確保でき次第我々の基地に戻る。その際、偽装工作として高速艇を地球に向けて飛ばす、これはイノマンの6番隊10名で実行してもらう」

(体よく偽装などと言っているが、おとり以外の何者でもないな)

 イノマンは心の中で愚痴ったけど酷いとは少しも感じてない。

 むしろ、どうやって返り討ちにしてやろうかと楽しんでいる節がある。

「皆、それぞれの決められた役割りを十分果し成果を上げて貰いたい」

 サロメが立ち上がった。

 会食が終わる合図になってる。

 だから皆も立ち上がった。

 最後の常套句が始まる。

「私達の目的は〖自由と人権の無い規則社会を解体し、自由で束縛されない社会を創造する〗である事を忘れないように」

 サロメが紅茶カップを捧げた。

 例によって皆もそれに合わせる。

 ミンツが空になった紅茶カップを下げていく。

「それでは6時間後に出発、ポイント0,1,0.78,Cにて再集合する事」

 サロメが食堂を後にする。

 イノマンは自分の管轄する艦の中でぼやいていた。

(人数が少な過ぎる。ここまで弱体化する前に行動を起こすべきだったのではないか。まあ私が発明した兵器を実用段階まで仕上げるのに時間が掛かったのは確かだが、それにしても私の隊には10人しかいないのにこの人数でどうやって巡航高速艇を運行させらせるのか、手本を見せて貰いたいものだな)

「イノマン隊長、アルカトラ刑務所攻撃ポイント到着ジャミングA1波投射します」

 イノマンの役割は施設全体の設備及び敵兵士を無力化又は弱体化させる事になってる。

 イノマンが開発した新兵器で行なう。

 それは真空空間に於ける固有振動を利用した障害電波の発生と人間の深層心理に影響を与え思考の停止又は酩酊状態に陥らせる装置だ。

 イノマンは装置として開発したのだけど争い事で使用するため兵器と呼ぶようになった。

「A1波到達確認A2波投射開始」

 A1波とA2波の波動のずれにより不協振動を発生させそこにA3波を加える事により爆発的な効果を与え影響を施設全体に広げる。

 当然突入部隊には不協波動の影響を受けないようにする中和剤が服用されている。

「A3波投射開始」

「敵基地全域に於ける電波障害発生確認」

「1番隊突入開始しました。敵の迎撃開始されません。トリプルA作戦成功です」

「まだ気を抜かない。敵の有線設備は正常だからな」

 イノマンは冷静に釘を刺す。

「2番隊から4番隊突入開始します。1番隊よりジベルを無事救出したと連絡がありました。これより集合場所へ向かいます。敵兵との交戦は発生していません。撤退予定時刻まで2番隊は仲間の受刑者の救出作戦を実施します。3番隊は中央監視室を制圧しています現在データーの抽出と消去を実施中、4番隊は刑務所上空で周囲監視と撤退支援のために待機中です。パルス通信も電波障害の影響を受ける事なく良好です」

 5番隊と6番隊は衛星軌道上で周辺宙域の監視と実行部隊への情報支援を行っている。

(状況は有利に展開しているがこの不安は何だ、足元から寒気が立ち上り頭の中で警報が鳴り響いて止まらない、落ち着け何か見落としている、最初から考えて… い…)

「すまない。何か酒の類いが無いかな」

 イノマンは側に仕えている参謀に問いかけた。

「酒ですか? 勝利の祝杯用ならありますけど、まだ早くないですか」

「いいから直ぐに持って来てくれないか」

(勝利が決まる前に祝杯を飲むとは、一般人の常識が天才に通用しないのも分かる気がするけどこれ程とは思いもしなかったな)

 参謀のイトウは首を降りながら弾薬庫に保管していた赤ワインを持ってくる。

 他の隊員に命じても良かったのだが、この人手不足の中で誰もが1人で2人分の職務を担当していて、一番手が空いているのはイノマンの顔色を伺っているのが仕事の自分しかいない。

 日頃の運動不足も手伝ってイノマンの元へ戻ってくるのにかなり時間が経っていた。

「遅い、敵は待ってはくれないぞ!」

「す、すみません弾薬庫まで取りに行ってきましたので」

「ワインを弾薬庫に置いているのか」

「あそこなら手荒な事をする者はいませんから一番安全でしょう」

 ワインのコルクを抜こうとする参謀の手をイノマンの手が押さえる。

 イトウ参謀は不思議そうな表情を見せた。

「飲まないのですか?」

「もしワイン庫の中に弾薬が置いてあったらどうする」

「そんな危険なまね誰もしませんよ、間違えてワインと一緒に弾薬を持って来たりしたら危ないじゃないですか」

(ワインに偽装した弾薬でもない限り間違える奴なんかいませんけどね)

 参謀は一人突っ込みを入れたけど虚しさしか返って来なかった。

 イノマンは参謀よりコルク抜きが刺さったままの赤ワインとグラスを取り上げ参謀に頷き独り言を心の中で呟く。

(その通りだ囚人の中にスパイを紛れさせておけばこちらの行動が筒抜けになってしまう。集合場所で待ち伏せされたら一巻の終わりだ)

 イノマンは唐突にイトウへ命令を下す。

「2番隊に緊急連絡!囚人救出作戦は中止して直ちに撤収するとな。3番隊にはその場をできるだけ破壊して速やかに撤収させろ、全部隊は防衛体勢を取りつつ1番隊の指揮下に入れ。サロメへは… 私から連絡する。急げ敵が来るぞ」

 一方的にそう言って通信室へ足早に向かう。

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