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アイリーンは9歳だよ 2

 冥王星からキャメロットに戻った時、怒られる事を回避するために冗談のつもりで冥王星の氷を山ほど持って帰ってきてた。

 怒られる前に差し出して分析に回してとらうと、未発見の鉱物や元素や何やらが含まれていたとかで皆が大騒ぎになる。

 発見者が注目されるようになりアイリーンは不本意なんだけど英雄扱いされた。

 それでもゴートさんだけにはきっちり絞られている。

 その事を切っ掛けとしてAIキッドと基地のメインコンピューターアシュラとの間で情報のやり取りが益々盛んになり新密度が増していく。

 アシュラはスターキッドAIの業績を讃え、オビス司令官や取り巻きの参謀に入れ知恵してしてスターキッドのバイオロイド型外部端末機の試作品を作らせて一世風靡を巻き起こす。

 それが今から1年半前の出来事。

 アイリーンが正式に行動調査チームの所属になって宇宙船キャメロットの個室から基地のコンパートメントに引っ越したのが1年と2ヶ月前になっている。

 スターキッドはキャメロットの搭載機のままだったので当然アイリーンとは涙の別れを済ませていた。

 全てはAIキッドとアシュラがかなり以前から計画していた陰謀の結果だろう。

 アイリーンがコンパートメントで生活を始めた初日にAIキッドがバイオロイドキッドになって突然やって来た。

 これを機にスターキッドもキャメロット搭載機からライフスター…地球防衛基地へと所属変更になる。

(あの時は本当に驚いたなぁ、キャメロットでゴートさんとお別れしたばっかりだったのに感傷的になる暇もなかったわよ。しかし何でバイオロイドだったのかしらねー、うちとしてはロボキッドでも格好良かったと思うのよスターキッドに乗り込む時にはロボキッドにお姫様抱っこされたままジャンプして乗り込むの『パイルダーオン』っとか言ってみたかったな…今でも言えるかも知れないわねちょっと相談してみようかしら)

 バイオキッドに話し掛けようかとしたけど散らばってるウエハースの欠片を集めるのに集中してるみたいだったのでやめて回想を再開した。

(うちがキャメロットを出て行く時にゴートさんは泣いていたわね、そして皆から慰められていたけど、あれが嬉し泣きだと思ったのはうちだけかしら。うちが7歳になってキャメロットを出て一人暮らしを始める様になったので、厄介払いが出来て嬉しかったんじゃないかしら。キャメロットの人達とは今も連絡取り合っているけどその事は誰にも言ってないのよねー、間違ってゴートさんの耳にでも入ろうものなら、通信機から拳骨が飛び出して来そうで想像するだけでも恐ろしいのよ)

「アイリーンったら何をボーッとしてるのですかどうかしました。またいつもの妄想に耽っているのでしょう。この基地でアイドルデビューしようなんて十年早いですよ。現実に戻っての話をすれば僕の健康診断は今回で6回目です。アイリーンの所に来てからなら初めての1回目で間違いありません。正解ですよよく覚えていましたね」

「キッドったらうちのほうが人生経験は長いんだからねお姉さんなのよ、いつも言ってるでしょう言葉遣いには気を付けなさいね」

 バイオキッドは誕生時の年齢設定が7才になっていてアイリーンは自分と同じ年なのが気に入らず何かある度に自分が姉さんだからねと言って主導権を握ろうとしている。

「うちは今からゆっくりと時間を掛けてシャワー浴びてるんだから、この前みたいに『安否確認に来ました』とか言って見に来たら許さないからね、今度来たらボディーブラシじゃぁ…済まさないから、それからキッドもたまには朝シャワー浴びてもいいんじゃないかしら特に今日は検査でしょう」

「いや僕はシャワー浴びれないから」

 バイオキッドは心の中で手を合わせた。

(ごめんなさいシャワー(水)は好きじゃないから浴びないだけなんです)

「そうそれなら仕方ないわね、でもいつかあんたの裸を見てやるんだから」

(なんだ僕の裸体が目的かよ、だったら尚更見られる訳にはいかないな、何て言い出すか分からないものね『収納式なの?』何て聞かれても返事できないから)

「あ~あ、今日は僕の本体スターキッドは耐水圧気密試験で水中に沈められるのかあ、憂鬱だ~ぁ、身体検査行きたくないよー」

 大きな独り言を言いながらアイリーンが浴びるシャワーの水音を不機嫌そうに見つめるバイオキッドだった。

 スターキッドが単独で身体検査に行っている最中アイリーンは地球防衛基地近郊の宇宙域で練習機に乗り訓練飛行を行っている。

「アイリーン速度出し過ぎでちゅ。もっとスピード落としてちゅ、そして・・・加速をもう少し緩めて下さいちゅー、この機体はスターキッドじゃないんだから耐えられませんでちゅ」

 アイリーンはハツカ教官の指導を受けながら練習機による小型艇操縦技術訓練に参加していた。

 今日の教官は初めての人で小柄な体型の少し頼りない感じがする人だ。

「ラジャー」

 アイリーンはしっかりと返事をしたけど、機体はしっかりとは減速しないまま飛び続けている。

「竜巻旋回開始しまーす」

 竜巻旋回はアイリーンが独自に考え出した飛び方。

 1機で多数の敵に立ち向かって行く攻撃方法で錐揉み状態で攻撃しながら敵の中央部に突入して周囲に敵が密集した状態の中で、アイススケートのアップライトとキャメルを組み合わせた様なスピンをその場で行い、全方位に対しての攻撃で敵を壊滅する事を想定している。

「待って!あっぁぁ~、うっチュー…」

 訓練艇操縦指導教官マウス星人ハツカ先生は後部座席でレッドアウトした。

「先生?先生大丈夫ですか今の悲鳴は何ですか?ハツカ先生!」

 アイリーンはブルーフェイスになっていく。

「早く基地に戻らなくっちゃ…」

(そうだった、この練習機の大きさはスターキッドの10分の1なのでその分スピンも強烈なものになるから気を付けなさいと言ったのは座学のケプラー先生だったよね、そんなことを言っている場合じゃないわね、基地に連絡して救護班を練習機溜まりに来てもらってと、あーあ、今回はどんなお叱りを受けるのだろうか)

「アイリーン訓練生戻りました。後部座席でハツカ教官が意識を失っていますので病院へ緊急搬送お願いします」

 いくらハツカさんが小柄でも9才のアイリーンでは抱える事が出来ないのでさっさと練習機を下りて駆け付けた緊急隊員へハツカさんのことをお願いして、教官室へ向かう。

「アイリーン訓練生入ります」

 教官室に入ると数人のキャット星人が哀れむような目をして奥の扉を指差す。

 そこには主任教官室とプレートが掲げられていた。

 ノックをしてドアを開けた途端キャット星人のベンガル主任教官がアイリーンの頭の上で壁ドンしてきた。

 アイリーンの背が低かったのとベンガル主任教官の背が高かったせいで、かなり距離が離れてた壁ドンだったので間の抜けた感じになったのだが、言葉にどら猫の威力がありアイリーンをすくませる。

「あんたにゃ、分かってやってるんでにゃいかい、重力制御装置が備わってない耐久性能が低い練習機で8Gも加えたら中に乗ってる人は失神するに決まってるにゃ、機体がバラバラにならなかったのが不思議だにゃぁ、特にハツカさんは加速には弱いの知っているにゃん」

 アイリーンは心のなかだけで抗議した。

(バカやろう、あの機体でも上手く乗りこなせば8G位は屁でもないわよ、加速Gを上手く逃がせない下手っぴーが操縦するからバラバラになるのよ、確かにハツカさんには本当に悪い事をしたわ、あそこでもっとスピードが落ちれば良かったんだけど、調子に乗ってしまっていたのよ、でも、うちの後ろにそんな弱い人を乗せないで欲しいわ)

「今回も反省文書いてもらうにゃん。去年の9月入校して10ヵ月間で反省文書くの今回で12枚目にゃん、本校始まって以来の不祥事の新記録だにゃん、従って明日から1ヵ月の謹慎を追加するにゃ。授業は座学のみリモートで行うにゃ。だから学業の遅れはにゃいので安心するにゃん」

(何を安心しろって言うのよ1ヶ月も部屋から出られないのはらうちに死ねって言うのと同じなんだからね、うちは、本当にこのネコ教官と相性が悪いと思うわ)

「あんたにゃ、今からハツカさんの所へお詫びに行くにゃ、その後は真っ直ぐ自分の部屋に帰って反省するにゃん」

「分かりました、ハツカ教官の病室を見舞ったあと自室で反省します」

(とりあえずハツカさんには謝らないといけないな、チーズケーキ持って行ったら許してくれないかなぁ)

 アイリーンが退室した後の主任教官室で唯一備わっている教卓の椅子に浅く座り足を机の上に投げ出したベンガル主任教官はほくそ笑んでいた。

(チョロいもんだにゃ、しかし、アイリーンの強運にも驚かされたにゃ、本当はもっとGを加えて貰いたかったにゃのに野生のカンってものだかにゃ、上手いこと躱したにゃん。それでもにゃ、たかが9才の操縦する練習機に乗って失神する様ではハツカさんを初め全てのマウス星人にゃ練習機に乗る資格がにゃい事を実証出来たってもんだにゃ、これで目障りだったマウス星人は排除出来たにゃん。アイリーンにしたって、今回で反省文12枚目、訓練生としては落第にゃん、来月からは、雑用係にでもなってもらうにゃ…そうだにゃ練習機の細工はちゃんと戻したにゃんか確認しに行くだにゃん)

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