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連絡会・親睦会

 ドロンパ号AIは光一が乗り込んだ『エッグ』を目的場所へ送り届けるために船体内に張り巡らされたチューブの中へと滑り出させる。

 食堂までゆっくり歩くと60分は掛かるところこのエッグで移動すると1分と掛からない。

 ほとんどが乗り降りの時間で実際の移動時間は加速と減速の時間を合わせても10秒程度だ。

「ではこれより、臨時の連絡会を始めます。いつも通りキャプテンの挨拶から」

「皆、揃っているねでは始める。資料は各自の手元にあるよね、後で読んでね、意見がある人はいつも通り目安箱に投書するようにして下さい。では終わります」

 いつもの連絡会は一瞬で終わった。

 定員100人の食堂が満席で立っている人も何人かいる。

 1人で2~3人分の席を占有している人が居るからだ。

 そして、終わると言った後になってもその場を動こうとする人はいない。

 皆は次の人の挨拶が始まるのを待っている。

「それではこれから恒例の親睦会を始めます、いつも言っていることだけど連絡会の延長でありますから無礼講ではありません。酒を飲んでもいいですが独房に叩き込まれた者は始末書提出の上罰金が待っていることを忘れないように」

 テラマンラッキーの挨拶終了を待たずにテーブルの上に料理やら酒やらが出てくる。

 そして親睦会が始まった。

「キャプテン今回は何か手こずったみたいですね」

 テラマンサスケが気配を立てずに後ろから声を掛けて来た。

 テラマンとは地球出身者の事を言っている。

 各種族の宇宙人達も全て人なので地球出身者だけを人間と呼ぶ訳にはいけないからだ。

「そんな事はなかったと思うよ思い出深い場所だからね少し感傷的になったのはあったけど、それより変わった事はなかったですか、こっちは地球を出てから一寸したトラブルが連続であったからですね、ドロンパ号まで飛び火してないか心配してました」

「そうそう資料に書かれていた宇宙嵐の件でしょう、えげつない事しますねやっぱり犯人は地球人排斥派ですかね」

 ラッキーが中指を立てている。

「確証がないことを軽々しく言ってはだめでしょう。もうお酒をかなり飲んでますね、しょうがない人ですね」

「嫌だなまだそんなには飲んでませんよ、これから本格的に飲まないと次がいつあるか分かりませんからね、キャプテン」

 そうメインは連絡会の後に行われるこの親睦会だ、酒が飲めて皆でわいわい出来るのだが不定期で行われるため次の開催日は分からない。

 酒を飲みながらシラフでは口に出来ない事を言って酒に罪を被せて終わりにする。

 もちろん飲み過ぎて羽目を外したり暴れだせば独房行きだ。

 でもその価値はあるとして最初は冗談で始めたこの形式が結構人気があって未だに絶えることなく行われている。

 何も問題がない時には滅多に行われないので、わざと小さな問題を起こして連絡会を開かせようとする不届き者が出てくることが一時期あった。

「宇宙嵐はこちらの観測では規模が小さかったので殺害が目的ではなく拉致が目的じゃないかと言われてますね、何処に飛ばされるのかは実際に入ってみないと分からないのでいっそ拉致られてみたら良かったですね」

(酒のせいにしてとんでもない事を言う奴だな)

「宇宙嵐の規模が小さいのが分かったのは発生した後なので結果論にしか過ぎませんね、それにアイリーンもいましたしそんなバクチは打ちませんよ」

「でも誰が犯人か明白になったのになぁ、今みたいに『かも知れない』状態が長く続くと疑心暗鬼が拡大して誰も彼もが犯人に思えてきて嫌なんですけどね、終いにはキャプテンが見せ掛けでやったんじゃないかなんて事にも成りかねませんよ」

(鋭いことを言うなぁ、酒が入って頭の回転が早くなってないか)

「犯人探しか…あの赤いキャラバンの連中は嵐の一件に関わっていたと思うかい…」

 光一は サスケに話していたつもりだが既にいなくなっている。

 本当に忍者みたいなテラマンだ。

 あっちこっちでいろいろな話題が立ち上がり幾つかのグループで論議が始まっている。

 まあ言い争いとも言えるがここでの会話は全て記録されて文書化、回覧、保管までされる事になっているのだが皆それを知っていても結構羽目を外す。

「これじゃ今回の親睦会でアイリーンを紹介するのは無理だなぁ、しかし連続で開くってのもなぁ」

 光一はお酒が入ったせいもあって少し大きめの独り言を言った。

「うちがどうしたって?」

 いつの間にかアイリーンが小皿にオードブルを山盛りにして口にも頬張りながら斜め後方に立っている。

(サスケみたいだ、それとも僕の感覚が鈍っているのだろうか)

「アイリーンどうやってここに… いやそれより落ち着いて食べなさい、椅子に座って」

 彼女の首に煌めくブレインに目を止め理解した。

「やっぱりネックタイプにしたんだ」

「もちろんよ見掛けよりも機能が大切なのは常識でしょう、それに皆が嫌がる理由の一つに首を絞められるんじゃないかと言う恐怖心もあるんだって、これからうちは誰もが恐れる女戦士になるんだからこっちのほうが格好いいでしょう、おに…キャプテンもそう思うよね」

(このタイプのブレインはしばらく装着してると皮膚に馴染んで同化するんだったよな、その時になってがっかりするだろうな)

「さすがアイリーンだね、でも女戦士ってのはちょっと違うと思うよ」

「何でよ、うち達を襲った竜巻の犯人とか赤い車の犯人をこれから見つけてやっつけて捕まえに行くんでしょ」

「いや、犯人を捕まえるのは僕たちの仕事ではないから、捕まえには行かないから、これから行くところは宇宙基地でアイリーンはそこの学校で勉強して卒業してから新たな進路を決めるからね、焦ったりしたら駄目だよ」

「お兄ちゃんも一緒だよね!ずっと一緒って言ってたよね」

「宇宙基地まではずっと一緒だよ、その後はアイリーンは学校で勉強して、僕は仕事で出て行ったりするから時々会える程度になるね、この会場まではブレインが案内してくれたのかな、ゴートさんは来てないみたいだけど」

 ジラーフ室長は部屋を空ける訳にはいけないから分かるけど、ゴートさんが一緒に来てるはずなんだけどなあ。

「うち一人で来れたよ、そうブレインを首に付けてもらったらね、何でも分かるような気になったんだもう皆が話してる言葉もこの船の中も自分でわかるよ」

「そうかいわかった。でもどうして一人なのかないくらブレイン付けてても危ないよ」

「ジラーフのお姉さんがブレイン付けてくれて、色々な質問されてから大まかな調整は終わったよこれから付き合いながらの微調整をしましょうねって言って終わったの、そしたらゴートさんがここでの決まり事について説明しますねって言い出したの、それでついキャプテンの所に行って来ますって飛び出して来ちゃった」

「ついってのもないと思うけど、取りあえずゴートさんたちに連絡しとかないといけないね」

「ゴートさんたちも自分のブレインに聞けばうちの居所とか直ぐに分かるよね」

「そういった個人的な事に使ってはいけない決まりになっているんだ、規則ではないけどね」

「そうなんだ、こんなに便利なのに、不便なものね」

「アイリーンだって秘密のお店で美味しく食べているのを他の人に知られたくはないでしょう、それと同じことですよ」

「そうだよね… ここの料理もなかなか美味しいよ、何の料理か分からないけどね」

 アイリーンが食べてるそれは地球人用のテーブルから取って来た料理だよねとは、今さら聞けない。

 椅子に浅く座って食べながら喋ってる。

 お行儀が良いとはとても言えないがこれも地上で戦場を生き抜くための業なのだろうかと光一は思う。

「折角、アイリーンも来てくれた事だし今からでも皆に紹介しようね…」

〈緊急! 緊急! 警報レベル2〉

 突然船内に緊急警報が鳴り響いていく。

〈緊急警報が発信されました。レベルは2です〉

 親睦会参加者全員が会場出口に集中する。

 そんな中でも誰一人として中途半端なことをしている人はいなくて、みんな真剣な表情で自分の役割を果たすため目的の場所へと一斉に向かう。

「お兄ちゃん何かあったの?」

「まだ分からないね、アイリーンは僕と一緒に行くかい?」

「お兄ちゃんと一緒にいる!」

「緊急だから相手はしてあげられなくなるかも知れないよ、それと言うことはしっかり聞くこと、これは命令だよ」

「ラジャー」

 アイリーンがピシッと敬礼する。

 どこまでが本気かわからないけど今はそれでも良いのかも知れない。

「でもみんな結構お酒を飲んでいたみたいだけど大丈夫かなぁ」

「当直員は出席してないし、強烈な酔い覚ましがあるから、大丈夫でしょう」

 強烈な酔い醒ましは別名嘔吐剤とも言う、飲用時はトイレを使用するので順番待ちになることが多い、また普通の酔い醒ましはアルコールの中和剤で口の中で舐めながら溶かして飲むタイプになるが凄く苦い、癖になる程に… どちらを飲用するかは本人の判断に任せてある。

 ただ飲酒状態で職務に就いた場合は厳罰が待っている。

 飲酒条件が厳しいのは宇宙を含めた全世界どこでも同じみたいだ。


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