碧の決意
ママはお裁縫が得意。プロのデザイナーかってくらい上手。
今日もレッスン前に急に手作り衣装を持ってきた。
「ほら、薫ちゃんの『プリンシパル』の衣装作ってみたわ。あおちゃん着る?」
「わぁ!素敵!ぜひ着たいわ!」
本当に素敵。
衣装に袖を通す。まるで薫になれたかのような気分になる。
そのままその場は私のステージになった。
こうなるとママと妹は体育座りをして私を見守ってくれる。
「この世界が物語だと私は知っている〜♪
…」
様々な運命のいたずらに抗いながら、夢を、未来を、大切な人を追いかけていく。
「誰なの?主人公 Ah 私はどうすれば良いの〜♪
…」
最後まで諦めなかったこと、夢のために諦めたこと、分かれ道の旅に迷いながらも必死に自分の手で切り開いていく。
「このストーリーの結末はまだわからないけれど
これは 絶対に確信してる
プリンシパルは そう、このわたしなんだから〜♪
…」
歌詞カードは何回も見た。
ひとつひとつのフレーズ、振り付けに込められた意味を妹と一緒に必死に考えた。
まだ私にはわからない気持ちもある。
それでも私にできる精一杯をこの歌を通じて演じる。
「さぁ、始めよう 終わらない物語を♪」
ーーー
曲が終わり、ふと顔を上げると、朱雀院さんがいた。泣きながら拍手していた。
ちょっと、大袈裟なんだから。
「本当に、本当に感動しました…!
歌っている人の思いが碧ちゃんを通じて伝わってきましたよ!やっぱり碧ちゃんはすごい!!」
「ありがとう。確かに、今まで1番の出来だった気がする。衣装のおかげかな。」
「うん、やっぱり私は碧ちゃんをずっとそばで支えていたい。そしてできれば隣で一緒にステージに立ちたい。…ダメかな?」
「何よそれ…。でも、一緒にステージ。いいわね。やっぱり私はアイドルになりたい。そんな夢に、あなたや翠ちゃんが付いてきてくれるなら、こんなに嬉しいことはないわ。」
「もちろん。ついていくよ。」
「翠も、お姉ちゃんとどこまでも。」
次回は桜子視点