気になるお年頃
教室での席順は、昨日の段階で決まっている。人も小学校からの持ち上がりのようなもので、知らない顔はいない。
あ、あのお化けさんは昨日がみんな初顔合わせだったんだった。
あまりに馴染んでいるのでそんな気がしなかったわ。
馴染んでいるといえば、席がお化けさんと隣になった。
「よろしくね。田中さん。」
「う、うん。よろしく。」
心なしか、みんなに遠巻きにされている気がする。
さすがのコミュ力お化けでも私のぼっちオーラには勝てなかったか。
フハハ。
今度こそ勝った。
ーーー
負けた。完全敗北でした。
休み時間ごとに私たちの席を中心に人が取り囲むように集まってきた。
そんなに大人数で話す経験がなかった私は、それはもうあたふたしていた。
私は聖徳太子にはなれないみたい…。
そんな私を尻目にお化けさんは笑顔でみんなに対応していた。すごい。
さすがお化け。
そして私が苦手な雰囲気を出していることを感じ取ったのか、それとなく促され昼休みには人が集まらなくなった。
…さすがお化け。気の利かせ方が半端ない。
とはいえこれまで隣の席になった子たちとは違い、ぐいぐい話しかけてきた。
「田中さん、今日はレッスンあるのよね?わたし楽しみで昨日眠れなかった!」
「ありますよ。」
「やった!
ところで田中さん。もしかして勉強得意?」
「んー、得意ってほどではないですけど、普通くらいですね。」
「そうなんだ。今日も当てられた時てきぱきと答えてたから。かっこよかったよ。」
「そう。ありがとう。」
慣れてないからか、ちょっと褒められただけで顔が火照っちゃう。
こんなことで動揺してることがバレちゃうと恥ずかしいので平静を装う。
「わたし勉強得意じゃないから、テスト前とか、教えてほしいな〜なんて。」
なによ。おだてたら教えてもらえるとでも思ったわけ?
残念ながらそんな安い女ではないわ。
「ま、まぁ別にいいけど。」
「ほんと?碧ちゃん好き〜!」
「そう。…そろそろ授業始まりますわよ。」
「そうだね、また後でね。」
…
ん?なんで私許可してるの!?
家族以外の人と話すことがこんなに難しいことなんて思いもしなかったわ。
特にこのお化けが天敵か…。
勉強が得意でないというのは本当にようで、先生の話も上の空。そして当てられても『わかりません』としか答えない。
むしろ理解しようとする素振りも感じられない…。
って、なんで私お化けのこと観察してるんだっけ?
べ、別に気になるってわけじゃないんだからね!?