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序章「悪意」
────悪意。
それは、人を害したいという欲望の発露。
ふっと浮いては消える泡沫のようなモノ。
だけれどその泡は、ぱん、と弾けては音を生む。
心を揺さぶる、気味の悪い音。
その音は、いつまで経っても耳の後ろにこびり付いて離れず。
気にしないように努めても、耳鳴りのように残響する。
拭っても拭っても消えることのない、火傷にも似た痛みを遺していく。
ずきずきと痛んでは。
じくじくと疼く。
その痛みに人は苛まれる。
何をするにも嫌になって。
やるせなさとどうしようもなさに苦しんで。
それでも人は生きていくのだろう。
忘れられない痛みを抱えて。
……けれど、その痛みに気を取られて、心優しきあなたは大切なことに気付けない。
ふっと浮いては消える泡沫。
────悪意。
ずっと押し込めて。
やり過ごして。
何ともないと気丈な振りをして。
そうして忘れて、消え去った悪意の行方────
────消えた悪意とやらは。
一体どこに行ったんだろうねぇ?────