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78.デモ体験⑤〜共同戦線〜

◼️前回までのあらすじ◼️

七夕イベントにてブレバト紹介ブースに足を運んだ真雪達。

ブレバトを体験できるコーナーにて体験者に選ばれた真雪と冴華。ただ単純に新作の衣装とスキルが使える体験をする予定だったのだが……


魔法少女衣装を着た真雪と、ビキニアーマーを着た冴華のアバターは討伐バトル体験でどんなモンスターを相手に闘うこととなるのだろうか

『さあ、最後に登場するのはビキニアーマーの刀使い「サエ」ちゃんと、マジカルナースの「ゆき」ちゃんだー!』


 司会の声で私達はメインフィールドへ迎え入れられる。

 冴華さんは会場に手を振って投げキスまでしている。四方八方に愛嬌を振りまいている今の姿からは、先程私とバトルしていた姿は想像できない。


「ゆきちゃーん。マジカルナース、可愛いよー」


 不意に観客席から私を褒める言葉が届いて、驚いて転んでしまう。うぅ、恥ずかしい……


「うおおおっ、ドジっ子たまらん! がんばえー」


 慌てて立ち上がる私にさらに声がかけられ、顔の温度が一気に上がる。


「お、応援、よろしくお願いします」


 よく分からないけど、応援してくれているみたいなので声のした方へ向けて頭を下げる。


『さてさて、討伐クエスト体験の三組目。

 これまでの二組は劇的勝利。さあ三連勝できるでしょうか。準備が完了しましたらクエスト開始です』


 司会の熱のこもったアナウンス。


 ピコン、と音が鳴り『パーティーに「セシル」さんが加わりました』とメッセージが表示された。


「よ、よろしくお願いします」


「セシル叡王、よろしくね〜」


「ええ、こちらこそ」


 私の言葉の後に、冴華さんとセシルさんが言葉を交わす。お互い笑顔であるが、目が笑っていない。なんだか、不穏な流れに私の顔も引き攣る。


(で、私にかかってた疑いは晴れた感じかな?)


(まあね。東雲(しののめ)所長が「問題ない」って言っていたので、不本意ですが今回の件は不問とするしかないでしょう)


 小声でのやりとり。


(私は正体バレるわけにはいかないので、いい感じにフォローお願いしますね)


(まったく、こんな事するためにプロになった訳じゃないのだけど)


 セシルさんが小さくため息をつく。


 うぅ、なんか気まずいな。


「ゆきちゃんは気にしないでね。貴女については全力で援護するから」


 私の心を読んだかの様に、安心させる様にセシルさんが優しい笑顔を見せる。


「あ、ありがとうございます」


『さてさて、準備が整ったようだ!

 次の討伐モンスターはこいつだ!』


 司会が盛り上げる様な煽り文句を告げる。すると――


 ビー!ビー!ビー!ビー……


 警告音と共に、警告の文字が踊る。これはゲームにて本当に問題があったわけではなく、ゲーム内の演出だ。それを示す様に、さらにシステムメッセージが表示される。


『レアモンスター出現!』


 その文字と共に、轟音が鳴り響き、天から光が降り注ぎ一体の魔物が舞い降りる。それは輝く水晶の鎧に身を固めた鳥型の魔物だった。


『こ、こ、こ、こ、これは、えっと、私も知らないモンスターですが……』


 司会者が想定外のモンスター登場に慄いている。その代わりにシステム開発担当の実況者が説明をする。


『これは本日のアップデートで追加された期間限定モンスターの怪鳥デネブです。

 しかもレアなクリスタルアーマー装備状態ですね。この状態ですとレアアイテムのドロップ率が5倍と上がりますが、戦闘力が1.25倍となるため複数パーティーでのレイドアタックが推奨されているモンスターなのです。ですが、なぜこのデモ体験バトルに――』


 なんとか説明を続けるが、疑問は晴れない様だ。


「ちょっと、セシル叡王さん。これはどう言うことかな?」


 一歩下がってセシルさんに近づいて冴華さんが訊く。


「ちょ、私も聞いてないわよ。所長は確かに問題ないって言ってたはずなのに」


 想定外の事態の様で、慌てて言葉を返すセシルさんにメッセージが届く。


 ピコン


『SaeKaが参加してるってことで、討伐モンスターを変更してみました。驚いたかな? ドッキリ成功!(ブイ、ブイ)

 ちゃ〜んとあなた達に合わせて()()()調()()()()()()()()安心してね。

 ふふふ。いいデータを取らせて頂戴ね。よろー』


 この軽い感じの文章は東雲所長に間違いない。


「ちょっ、所長! 私達は兎も角、初心者がいるのよ。こんなモンスターどうすればいいのよ!」


 いつも冷静なセシルさんに似合わない絶叫。


「いまの文章って、あの東雲さんやよね」


「こんなふざけた文章書くのはあのマッドサイエンティストしかいないわ」


「やっぱりね」


 冴華さんは「はぁ」とため息をつく。


「私は全力で『ゆき』ちゃんを守るから、あんたは何とかあの化け物にダメージを与えなさい。強さは調整されているみたいだから」


 苛つきながら指示を出すセシルさんに、冴華さんが「その必要はないわ。むしろ、貴女は全力で自分を守るべきよ」と遮る。


「はぁ? 何を言って――」


「今の話の感じだと、貴女は真雪ちゃんの正体を聞かされてないみたいね。

 端的に伝えるけど、この子はオールスターバトルで私を倒した子よ」


「な、あり得るわけないでしょ。こんな弱そうな子が」


「私がそんなつまらない冗談言うと思う?」


「ちょっ、まさか」


「だから、あのモンスターは私達に合わせて相当戦闘力は()()()()されてるはず。

 だから、悪いことは言わないからますばは全力で自分を守りなさい。余裕ができたら私達にバフをかけて」


 そんなやりとりをしている間に戦闘開始のカウントダウンが始まる。


『と、とりあえず、期間限定のレアモンスター討伐だ。少女達はどう闘うのか、いまバトルが始まります!』


 司会者は何とか言葉を取り繕って、煽り文句を告げる。


「真雪ちゃん。いま聞いた通り。本気を出すしかないよ」


 展開についていけず、ただ話を聞くだけだった私に冴華さんが言葉をかける。


「えっ……」


 戸惑っている間にバトルが開始される。


『グ、ガァァァァァァア!!!』


 それと共に怪鳥デネブは口から氷属性のブレスを吐き出す。

 凄まじいエネルギーの本流が襲いかかる。


「えっ、嘘っ!」


 私は慌てて杖を前に出して防御を試みるが、耐えきれず吹き飛ばされる。


「きゃああっ!」


 錐揉みしながら吹き飛ばされる。防御に使用した杖も一撃で耐久値をオーバーして砕け散る。


 やばい。このままじゃ、何もできずに退場してしまう。吹き飛ばされながらも、私は必死に体制を制御しようと試みるがうまくいかない。やはり使うしかない


「スキル起動――【超過駆動(オーバードライブ)】!!」


 身体に力が漲る。

 これで思うように身体が動く。まずはダメージを最小限に抑えなくてはっ


 私は受け身を取って、落下と衝突のダメージを最小限にとどめる。


「くっ、状況はっ?」


 すぐに起き上がり状況を確認する。


 冴華さんは何とかブレスを回避しており、セシルさんも氷の盾を召喚するスキルにて防御していた。


 さすが、プロの二人。ほぼノーダメージで先程の攻撃を乗り越えている。それに比べて私は主力の武器を失い、さらに体力は3割も削られている。


「このままじゃ、私、ただのお荷物だ……」


 戦況から目を離さず、ゆっくりと起き上がる。


『キャオオオオオオオウ!!』


 怪鳥デネブは大きくひと鳴きすると、詠唱状態に入ったセシルさんへと突撃する。


「ウソでしょ?! 私はサポート役よ。デモバトルなのに何で私を狙うのよ!

 くっ、仕方ない。スキル【氷結盾(アイシクルシールド)】――多重詠唱(マルチキャスト)――独自魔法(オリジナルマジック)『アイアス』!!」


 セシルさんは不満の声を吐き出すと、詠唱していた防御魔法系のスキルを自らに発動させる。それは多重詠唱で展開された7重の盾。そこに怪鳥デネブの巨体が正面から突っ込む。


「くっ、くううっ。止まれぇーーー!!」


 必死にスキルを展開させるが、凄まじい衝突時の衝撃に7つのうちの5つの盾が砕け散る。


「だから言ったでしょ。あのマッドサイエンティストは、デモだの何だななんて考えてないって。

 私達を利用して戦闘データを取りたいだけ。本気で()らないと退場もあり得ますよ!」


 冴華は仕込み刀を抜き放ち、【属性纏衣】と【斬波衝】の合わせ技にて炎を纏った斬撃を三発撃ち出す。


『キャオウ!』


 その斬撃は怪鳥デネブの纏う鎧の隙間を縫って本体に命中する。弱点の『火』属性が付与された攻撃にデネブは悲鳴に似た鳴き声を上げ、飛び上がる。

 飛び上がりながら、翼の羽ばたきで氷塊の雨を降らせる。それの対応でセシルさんは次の魔法詠唱が出来い。

 そして、空高く舞い上がった怪鳥デネブは、狙いを冴華さんに替えてたのか、視線を冴華さんに向けると、【硬化】のスキルを嘴にかけると、冴華さんに向けて急降下攻撃を仕掛ける。


「くっ、対処できるか……」


 冴華さんは仕込み刀を傘の部分に収め、居合の構えを取る。


「バ、バカ! 迎え撃つつもり⁈ あんな巨大な身体の一撃を受けたらあんたペシャンコよ! 私の詠唱も間に合わない」


 セシルさんが必死に声をかける。だが、その声を聞いて冴華さんは不敵に笑うと「やってみなきゃ分からないでしょ」と呟く。


 ん、今、冴華さんがこちらをみた様な。もしかして――


 私は覚悟を決めて「ふぅ」と息を吐くと、スキル【武具錬成】を発動させる。召喚したのは『鉄甲』。どの職業でも装備出来る攻防一体の武器だ。さらに氷属性の特性を利用して鉄甲を氷で包む。これて耐久値が僅かながら上がるはずだ。

 あとは――


 私は一気に駆け出す。新陰熊流の移動術『幻歩』を使い、無音で駆け出したため、誰も私の存在に気づいていない。


 上空から重力の力も利用して超高速で下降してくる怪鳥デネブ。冴華さんに向けて降りてくる相手に向け私は地面を蹴って飛び上がる。そしてさらに『飛翔靴(ウイングブーツ)』の効果を使い【二段跳躍】でさらに加速させる。


――武器は装備した。あとは、この拳を相手に叩き込むだけ!!


「真陰熊流奥義――『崩穿華』!!!」


 超高速で滑降してきた怪鳥デネブに気を込めた渾身の一撃を叩き込む。


 ドゴォォォォン!!!!


 凄まじい轟音と共に、怪鳥の巨体が吹き飛び地面を削る。

 私はそのまま冴華さんの近くに着地すると、右手の鉄甲が覆った氷ごとパリンと砕け散る。


「冴、さん。大丈夫ですか?」


 振り返って訊くと、冴華さんは少し驚いた顔ししていたが「無事よ。まさか、ここまで完璧に危機を脱っするとは思わなかった。やはり真雪ちゃんはすごいね」と答えが返ってきた。


「セシル叡王も今ので分かったでしょ。この子が只者ではないって」


 油断なく居合の構えのまま言葉を投げかけた冴華さんに、セシルさんは「え、ええ……」と驚きの表情を浮かべながら頷いた。


「あの、なんの話ですか?」


「真雪ちゃんには関係ないこっちの話よ。

 さて、真雪ちゃんの一撃で大ダメージを与えられたけど、相手はS級モンスター。まだまだ体力は残ってる。気合を入れて行くよ」


 私の問いに冴華さんはそう答えると、起き上がってくる怪鳥デネブを睨みつける。

 なんだか私の話をしていた気がしたけど、とりあえず今は目の前の敵に集中だ。


「まさかこうやって共に闘う時が来るなんてオールスターバトルの時は思ってもみなかったわね」


 肩を並べる様に横に立って冴華さんが語りかけてくる。


「そう、ですね。でも、こうやって冴華さん達、プロの方々と共に闘えるなんて、とても光栄です」


「貴女も――いや、なんでもない。共に強敵モンスターを倒しましょう!」


 何か言いかけていたけど、今は闘いに集中だ。

 私は再度【武具錬成】にて『鉄甲』を召喚して、怒り狂った様に威嚇しながら立ち上がる怪鳥デネブを見据えながら拳を構えるのであった。

試合に集中しているため、気付いていませんが観客側はとんでもない盛り上がりになっています。


実況『おおおおおお、まさかまさかの先程吹き飛ばされた魔法少女の鉄拳炸裂ぅーーーっ! 怪鳥デネブ、魔法少女の拳にて吹き飛ばされるぅぅぅ!!!』


観客「どうなってんだ、こりぁーーー! まったく展開が読めないー! がんばれー少女達ー!」

観客「グーで殴る魔法少女、たまらんー」


解説『…………(予想外の展開すぎて言葉が出ない)』


解説『起き上がったデネブに、ビキニアーマー剣士と拳を構えた魔法少女が向かって行くー さらにさらに、後方ではセシル叡王が極大魔法を唱え始めてる。こ、これはとんでもない展開だー』



という感じで、次回は観客サイドの視点でのお話になります。

乞うご期待ください。

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