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56.練習試合

◼️前回までのあらすじ◼️

eスポーツ部に入部して一週間。やっと真雪も部活に馴染めてきたよ。

 ゲームをログアウトして現実世界に戻った私は、いつものルーティーンである身体のマッサージとカプセル内の清掃除菌をして外に出る。


 緊急招集時にバトル中だった部員はいなかったみたいで、部員全員がカプセルから出てきていた。


 私が最後かも、と思いながら急いでみんなが集合している場所に向かうと、刹那部長の横に立っていた白衣を着た初老の先生(?)と目があった。


「あら、1年E組の柊木さんじゃない。そうか、うちの部活に入ったのね」


 その先生は柔和な表情でうんうんと頷いている。


 私のことを知っている?


「ねぇ、朱音ちゃん。あの先生って……?」


「ああ、老月先生ね。あの人はeスポーツ部の顧問で、保健室の先生でもあるのよ」


 朱音ちゃんに訊くと、そう答えてくれる。


「スポーツ大会の時に真雪ちゃんを応急処置してくれたのが老月先生って聞いたよ」


 美月ちゃんがさらに言葉を重ねる。


 なるほど、だから白衣を着ていて、さらに私を知っていたのか。

 老月先生と目があったので反射的に小さく会釈すると、にっこりと柔らかな笑みを返してくれた。


「みんな、急に集まってもらってすまないな。

 ひとつみんなに知らせがあって集まってもらった」


 部員が集まったのを確認して、刹那部長が部員に声をかける。


「先程、私が先生に呼び出されたのは、うちの部が他校から練習試合の申し込みがあり、その申し出を受けるか判断をするためだった」


 その言葉に部員達が「おお、練習試合」といろめき立つ。


「だだ、相手がちょっと困ったとこなのよねぇ〜」


 老月先生が頰に手を当てて呟く。


「相手は千葉県立津張工業高校。

 他県の高校なのであまり知らないと思うのだが、ちょっと問題のある相手なんだ」


 刹那部長は説明を続ける。


 なんでも、相当風紀の乱れた――砕けた言葉で言うと不良高校なのだそうだ。

 一年前に他校に対しての暴力事件があり、大会出場停止。一年間の活動自粛があり、その間は事件を起こさず反省の色が見えるとして規制解除されたばかりなのだと言う。


「今回の練習試合は仮想世界での交流になるので、直接の接触が無いので問題ないと思うのだが、皆はどう思う?」


 一通り説明を終えた後、刹那部長は部員に問いかける。

 その問いにみんなは押し黙る。


「刹那。お前の意見はどうなんだ? どうせ、お前は受けるつもりでいるんだろう」


 静まり返る部員の中で、椛谷先輩が言葉を返す。その言葉受けて刹那部長はニヤリと笑う。


「さすが慎一郎。分かってるな……

 私はこの申し出を受けようと思っている。

 ほら、ゲーム内で不良共を叩きのめすなんてワクワクするじゃないか? それに本大会でも威嚇してくる相手なんていくらでもいる。それに慣れるためにも、もってこいな相手だと私は思ったいる」


 バシッと拳をてのひらに叩きつけて告げる。


 その言葉は頼もしさを孕んでいて、不安を感じていた部員達の顔にも明るさが戻る。


「それに、向こうから個人戦を多く行いたいと要望があった。

 ブレバトグランプリの代表選考するにあたって、実力を判断するにはもってこいの相手だと思う。

 この練習試合の申し込み。受ける、で良いかな?」


 その言葉に部員達は「はい」と答えた。


「そうね。ゲーム内ならば危険はないと思うし、相手の顧問の先生からのメール内容も誠意の感じられるものだったから問題ないと思うけど、もし何か危険を感じることがあったらすぐに私に報告してね」


 真剣な表情で老月先生が部員に告げる。その言葉に皆が「はい」と答える。


「そうしたら、さっそく先生は相手の学校に承諾のメールを返信するわね」


 皆の返事を受けて、老月先生は承諾の返信のため耳掛け型の端末を起動させた。


「さぁ、新入生が入ってから初めての対外試合だ。


 みんな実力が上がってきていると思うので、存分にその実力を発揮できるように練習を怠るなよ!


 話は以上だ。みんな練習に戻っていいぞ」


 部長がパンパンと手を叩いて話を終わらせる。


 こうして、私が部活に入って初めての対外試合が決まったのであった。



  ★


 練習試合の日程は翌週の日曜日に決まった。

 休日返上の部活動だが、仮想世界とはいえ他校の生徒を学校のローカルネットエリアに招待するのだ。部活以外の生徒との接触もありうるので、要らない問題が起きないようにとの配慮があったみたい。


 練習試合の日まで、みんなは目標を「大会でレギュラーになる」を目標に練習に打ち込んだ。

 私はというとやはり、観戦やアドバイスする方が多かった。スポーツ大会のときは張り切りすぎて当日倒れてしまったので、むしろ身体を動かすバトルよりも、観戦をしていたほうが安全かなと思った。


 そして、練習試合直前の金曜日に団体戦で組むメンバーが発表された。


「基本的には個人戦を繰り返し行うが、向こうも団体戦の連携も試したいとの事なので、3戦ほど団体戦を行うこととなった。

 そこで、団体戦で出場するメンバーを発表する。


 まずはAチームは、私とレッドリーフ、そしてマリーの三人。今考えられるうちの最強の布陣だな。このメンバーでまず1勝を取るぞ」


 そう告げると、Aチームの先輩方がこくりと頷いた。


「そして、Bチーム。これは私が今考えている団体2の仮オーダーだ。

 まずはクルミ」


「っし! やっぱ私よね」


 選ばれたことに桃色のツインテールであるクルミが嬉しそうに飛び上がる。


「そして、プロテイン」


「うむ」


 筋肉質の芦田先輩が鷹揚に頷く。


「そして、リョーマだ」


「はい!」


 糸目で柔和な表情の二年生の獅堂先輩が嬉しそうに返事する。


「そして最後のCチームだが、こちらは試行用のメンバー編成にした。

 まずはカエデ」


「はい」


 順当に楓先輩が選ばれた。


「二人目は――アカネ」


 えっ、と部員内にどよめきが起きる。一年生の大抜擢にみな驚いているようだ。当の本人も予想だにしていなかったのか、一拍遅れて「はい!」と返事を返す。


「やった。やったね朱音ちゃん!」


 ずっと付きっきりで近接戦闘を教えていたから、本当に我が事のように嬉しい。私は朱音ちゃんに抱きついて喜ぶ。


「ちょ、ちょっと真雪」


 朱音ちゃんが驚いている。でも、嬉しいんだから仕方ない。


 ごほん、と咳払いの声が響く。


 あっ、まだメンバー発表の最中だった。


 私は慌てて姿勢を正す。あう、なんかずっと刹那部長がこっちを見てる。怒られるの、かな……


「Cチームの三人目は君だよ、Snow」


 えっ


「えーーーーっ!!!」


 私は驚きで素っ頓狂な声を上げてしまった。

はい。ということで次回からは練習試合編です。


お気づきだとは思いますが、Cチームは部活の秘密兵器であるSnowを中心とした編成です。

Snowが団体戦で成果を上げられるか、Snowと所縁の深いメンバーが選ばれてます。


ここがアカネの頑張りどころだぞ。Snowのバーターなんてみんなに言わせないような成果を上げられるでしょうか。

次回は練習試合当日となります。

相手は問題のある学校のようですが、どうなるでしょうか。



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