54.感想戦と部員たちの反応
◼️前回までのあらすじ◼️
eスポーツ部に入部した真雪は初のバトルとして団体戦(一年生同士の3対3バトル)に参加したよ。
ルナの戦槌がミキオの盾を砕くと同時に、相手の懐に飛び込んだアカネが乱撃を仕掛ける。
防御に特化したミキオも盾を失い、速度重視のアカネから繰り出される攻撃の手数に体力を削られ、事前に投げていたブーメランがミキオの背中に突き刺さって勝敗が決した。
画面に表示された『Winner』の文字を見てほっと一息入れる。
初めての団体戦は勝利で終わった。
それにしても、ギリギリの闘いだったな……
アカネちゃんに戦闘の指導をお願いされていたので、私は今回敢えて後衛を選んだのだけど、慣れない支援の動きに手を出すタイミングを計りかねてしまいバトル前半は何も出来ていなかった。
前衛の二人が危機に陥る前に威嚇射撃などをして、注意を分散させるべきだったな、と自己分析する。
相手は確実にこちらに対しての対策を練っていたようだった。なんとか私が相手の想定外の動きをとる事ができたので、勝機を見つける事ができた。
「初めて後衛スキルのコンボを実践で試したけど、上手くいって良かった」
私はほっと一息つくと、抱き合って喜び合うアカネとルナの近くまで歩み寄る。
「何とか、勝てたね」
声をかけると、アカネとルナが嬉しそうに抱きついてきた。
「ありがとー。Snowの支援があったお陰で勝つ事が出来たよ」
「やっぱり、勝利は嬉しいね。やった。やったー」
ぎゅー、むきゅー
「はわわ。二人とも、苦しいよ」
抱きつき攻撃で幸せのサンドイッチ状態になった私は慌てて声を上げると、二人は「あっ、ごめんー」と謝って私を解放した。
「あっ、あと、勝って嬉しいのは分かるけど、まずは対戦相手にお礼をしなくちゃ。『バトルでは敵でも、試合が終わったら同じ格闘家として礼を尽くせ』って師匠が言ってた」
bear師匠の言葉を受け売りで伝える。
実はオールスターゲームの後にあの言葉を思い出して、女王に対しての試合後の態度は礼を逸していたと後悔したのだ。
二人には私のような後悔はしてもらいたくない。
勝負が決したため、途中で体力が尽きて退場(敗者モードとなって、バトルに関与出来なくなった状態)した二人もバトルフィールドに再出現しており、最後に残ったミキオの周りに集まっていた。
私は対戦相手だった三人に手を合わせて「対戦、ありがとうございました」と頭を下げた。
アカネちゃんとルナちゃんは、私の所作を真似してお礼を言った。
「えっ、と…… こ、こちらこそ、ありがとうございました」
ポカンとしていた対戦相手だった三人は、慌ててお礼を返してくれた。
うん。これで敵対関係解消だね。
「はっはっは。いい試合だったじゃないか!」
そんなやりとりをしていた私たちに声がかけられる。
振り返ると、拍手をしながら近づくセツナ部長の姿があった。
その後ろにはレッドリーフ副部長とクルミ先輩、それにプロテイン先輩の姿もある。
「Aチームはまだまだね。相手が『拳闘士』だからって遠距離攻撃が無いって思っちゃってたでしょ? まだまだ経験が足りないわね」
クルミ先輩がツインテールの片方を手で弾きながら言う。
「Aチームは前半見事な連携だったが、クリティカルヒットでオーマが落ちてから崩れてしまったな。ミキオを中心になんとか立て直そうとしたが、Snowに上手く立ち回られてしまったな。
Bチームの方は逆に前半の戦略が甘かったな。Snowの援護がなければ一方的な展開もあり得たぞ。アカネとルナは相手を知っているのだから、何かしら相手の策を切り崩す戦略があっても良かったな」
セツナ部長が細かい評価を伝えてくれる。
今の闘いに参加していたみんなが「はい!」と返事をしたのに遅れて、私も「はい」と返事をする。
「折角だし、このままここで感想戦とするか」
中世貴族の様な見た目のレッドリーフが提案し、みんなが頷いた。
感想戦とはバトル後に、どのような展開であったかを再現したり、どの様な意図を持って闘ったかなどの意見交換をして、互いを研究し研鑽する行為の事だ。bear師匠との闘いの後も行っていたので、その言葉は知っていた。
「はい! まず訊きたいことがあります。
ぶっちゃけ、自分がどうやってやられたか把握できてないので教えてほしいっす!」
感想戦が始まると、まず最初に男エルフの様な外見のオーマが手を挙げて質問する。
「戦闘の最初から再現する形にしようと思ったのだが、まぁいいかな。あの状況だと当人は何が起きたか分からないのは仕方ないからな」
感想戦を進行しようとしていたレッドリーフがオーマの質問を受け止めると、みんなの視線が私に向いた。
「あ、あれは私の使ったスキル【水弾丸】が運良くクリティカルになったの」
みんなの視線に応える様に、私はオーマくんに説明する。
「たまたまって、でも【水弾丸】って水属性の初級魔法スキルだよな。なんでそんな初級スキルで俺は一撃退場になったんだ?」
オーマくんが質問を重ねる。
あっ、そうか。私は『くまたろう』としてこのスキルを研究して色々手を加えてたのだ。単純に【水弾丸】を使用しただけだと、当たってもそこまでのダメージを出すことはできない。
「えっと、見てもらった方が早いかな。私、このスキルを使うのにちょっと手を加えてるんだ」
とぷん、と属性効果で水の玉を出現させる。
「まずは出現させた水を操作して圧力をかけるの」
ふよふよと不定形で浮いていた水の玉が真円球となり、空中に固定される。
「あとは指に装備した『波の少女の指輪』の恩恵の【射撃速度向上】の効果で高速で撃ち出すと――」
私はキーワード登録している「bang!」と呟くと、指先に固定されていた水の球が高速で発射され、少し離れた瓦礫の柱に穴が穿たれた。
「こんな感じで、威力が増すのと、水の球も空気抵抗で形状が崩れなくなるので射程も広がるの」
実践しながら説明したのだけど、なんだかみんなの反応がおかしい。
「あの、一応確認のために聞くんだけど、バトルで撃たれた時、Snowちゃんの姿が見えなかったんだけど、どれくらいの距離で撃ったのかな?」
なんだか恐る恐る聞いてくるオーマくんに、私は小さく首を傾げながら正直に答える。
「そんなに離れてなかったよ。100メートルくらい離れた瓦礫に隠れて、そこから撃った感じかな?」
「射程が100メートルで、致命の部位をピンポイント狙撃って……」
私の言葉にオーマくんが呆然としている。
「あっ、そんなに命中精度は高くないの。狙った箇所に正確に当たるのは良くて3割だから、クリティカルヒットになったのは本当に運が良かっただけで――」
慌てて相手の誤解を訂正するけど、それでもみんなの反応は変わらない。三年の先輩方は目を見合っている。
「とりあえず、私がみんなを代表してツッコむね」
アカネちゃんが手を挙げて宣言し、息を吸い込むと
「射程100メートル以上で高速で弾を撃ち出すっておかしいから! ゲームで実装されてない『銃』に近い性能ってもう反則級のコンボだから! しかも、三割の確率で狙った場所にピンポイントで当たるって、ほぼ100%で的には当てられるって事でしょ? そんなの遠距離系の魔術士が泣き出すくらいの精密な遠距離攻撃だから!」
捲し立てる様に言うとアカネちゃんが私の肩のあたりを手の甲で軽く叩いた。
「えっ、えっ?」
急な事に私は狼狽する。
「はっはっは。本人は気づいていないかもしれないが、みんなが感じてる通りSnowはブレバトに於いては規格外の存在だからそういうつもりでいてくれ」
笑いながらセツナ部長が告げると、Aチームだったメンバーは驚いた顔をした後、納得した様に小さく頷いた。
「ええっ、みんな納得しちゃうの?」
その反応に慌てて意見を述べるが、「もー、そんな天然なところも可愛いよ。よしよし」とアカネちゃんに頭を撫でられた。
むむー、なんだか納得いかない……
「あの……私が…退場した時のこと……」
おずおずと猫耳フードの魔術士のシノちゃんが手を挙げて質問する。すかさずミキオくんが「シノが、自分が退場した時の説明が聞きたいみたいだ」とフォローを入れる。
「あ、それ、私も何で体力が回復したのか分かんなかった」
アカネちゃんも質問を重ねる。
その質問に私は苦笑する。何だか分からない事があっても、相手を倒しちゃうところがアカネちゃんの凄いところかもしれない。
「あれは私がスキル【回復水】を使ったの」
そう答えるが、みんなは納得していない様だ。
「いやいや、【回復水】って近接スキルでしょ? なんでSnowがアカネの近くにいなかったのに回復したんだ?」
みんなの疑問を代表してミキオが聞いてくる。
ああ、そうか。そういうことか。
「えっと、【回復水】は属性で出現させた水に『治癒』の効果を付与するスキルなの。なので使用する場合は対象の相手に近づいて治癒属性を付与した水を垂らすか、付着させるのが一般的な使い方なんだけど」
私は再度、属性の基本スキルにて水を出現させる。更にその水に【回復水】にて『治癒』の効果を付与させると、透明だった水が金色に輝く。
「この『治癒』の効果を付与した水をさっきの要領で圧縮してスキル【水弾丸】で飛ばすと――」
私はスキル発動のキーワード「bang」と呟くと、金色の水の弾丸が飛んでいき、離れた瓦礫の柱に「パシャリ」と弾けて広がる。
「こんな感じで離れた相手に治癒をかける事ができるの。けど、水にかける圧力が強すぎると、ダメージも与えちゃうのでそこの加減が難しいんだ」
スキルについての説明をするが、ふとみんなが呆然としてしまっている事に気付く。
あれっ?
「うはー、そんなのアリかよー。遠距離精密射撃だけでなく、遠距離回復とかされたら、そりゃ勝てるわけねーよ!」
ずっと黙っていたエルフ耳のオーマくんが天を仰いで絶叫した。
「ははは。初心者が入ってきたから、この機会にカモにしてアピールしようと思ったのに、こりゃ、とんでもない新人が入ってきたもんだ……」
「……ズルい……」
ミキオくんとシノちゃんがガックリと肩を落とす。
「そう気を落とすな。私の視点から見ると、まぁSnowは規格外なので対象外とすると今の団体戦のMVPはミキオだと思っている」
「そうだな。盾の2枚使いで、二局面の闘いにて有効的な動きを見せていた。
当たったのが相性の悪いハンマー使いのルナだったのだが、最後まで持ち堪えたのは評価に値するな。同じ防御特化としてプロテインにプレッシャーを与えられたのではないかな?」
セツナ部長がチラリとプロテイン先輩を見ると、いつも「がはは」と笑っている印象のプロテイン先輩は「うむぅ〜」と唸った。
「ふふ〜ん、その点、私は安泰ね。同じ投擲士として、アカネはまだまだ未熟だったわね。
アカネはもう少し防御や回避の技術を上げることと、自分より射程の長い相手への対応手段をもう少し持つべきね」
その隣にいたクルミが慎ましやかな胸を張ってアカネにダメ出しとアドバイスを送る。
「そうだな。アカネだけでなく、ルナとオーマも中・遠距離攻撃に対する対応手段を持つべきだな。
あとは――」
続けてセツナ部長が次々と今の闘いを行ったメンバーに対してアドバイスをしていった。
「総評はこんなところだな。何か他に聞きたい事がなければ、今回の団体戦はこれで終了としよう」
一通り戦況分析とアドバイスが終わったところで、セツナ部長がそう締め括る。
「あのぅ〜、私に対するアドバイスとかって……」
恐る恐る訊いてみる。他のメンバーへのアドバイスは多かったのだが、私に対するアドバイスがほとんどなかったのだ。
「Snowにか…… う〜ん、特になし。以上!」
キッパリと言われてしまった。
私は不満気に「むー」とむくれると、「もー、貴女は規格外すぎるのよー」「この天才少女がー」とアカネちゃんとルナちゃんに揉みくちゃにされたのであった。
◼️登場人物紹介(アバター編)◼️
ミキオ
幹谷 巌のアバター。鎧と盾を装備した防御特化。重装備に分別されるが、俊敏が低下しない程度まで装備を絞っているため、露出箇所は多め。
職業:騎士
属性:地
武器:ソードブレイカー(短刀。防御時に相手武器の耐久を大きく減少させる)
スキル:
武具錬成(大楯)
念動力
???
???
???
オーマ
根岸央磨のアバター。耳を長くしたエルフのような見た目。胸元、腕、脛を防具で覆っている。
職業:射手
属性:水
武器:弓・短刀
スキル:
分裂矢掃射
???
???
???
???
シノ
葉山しのぶのアバター。アバターでは完全に目が前髪で隠れている(ゲーム内なので視界は保たれる)猫耳フードのローブを装備している。
職業:魔術士
属性:風
武器:短杖
スキル:
暴風炸裂爆弾
風刃連撃
???
???
???




