表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/207

53.団体戦(vs1年生)

◼️前回までのあらすじ◼️

eスポーツ部に入部した真雪は、一年生同士の団体戦を行う事になった。


※部長の刹那からの視点です。、

「おっ、一年生が団体戦やるみたい。どーれ、お姉さんが観戦してアドバイスでもしてあげるかな」


 後輩が試合を始めるのに気付いて、特徴のツインテールの揺らしてクルミがメニュー画面を操作している。観戦の設定をしているようだ。特定のアバターを観戦登録することで、そのアバターがバトルする場合に、同じバトルフィールドへ飛ぶようになるのだ。


「がはは。一年からすれば、この闘いが今年のメンバー入り当落の指標になるからな。互いに気合が入ってるな」


 仮想世界の中でも腕立てをやっていたプロテインが、筋トレを止めて立ち上がる。


 ブレバトグランプリの登録選手は控えを含めて10名。eスポーツ部の部員は新たに入部した柊木を含めて15名だから、落選するのは5名ということになる。

 その中で特に落選の可能性が高いのは一年生の6名なので、一年生同士のこのバトルは是が非でも勝っておきたいところだろう。


「どうやら1年E組と、その他というチーム分けにした様だな」


 レッドリーフが話しかけてくる。


「Snowは部員となってから初のバトルだな。私達も観戦しよう」


 レッドリーフに言葉を返すと、部長の私も新入部員の初バトルを見守るという名目で観戦をするのであった。



   ★


 バトル開始と共に、バトルフィールドへ転送される。


 3対3となる団体戦では、指定したバトルフィールド内にある幾つかの出現ポータルから指定できる。

 速攻で闘いを進めたい場合は、中央近くのポータルに出現し、相手陣地へ切り込む事も出来るのだ。一年の両陣営ともに、無難な中間地点を出現場所にしたようだ。


「バトルフィールドは『廃墟』か。

 Aチームは『ミキオ』と『オーマ』と『シノ』だな。

 ミキオがいるから、1盾2射の陣形だな。

 対するBチームは『アカネ』と『ルナ』と『Snow』か。職業(ジョブ)が前衛に偏っているが、どうやら分散攻撃の陣形だな」


 レッドリーフが状況を分析する。


 Aチームは中央前方に防御特化のミキオを置き、その後方左右に中長距離攻撃のあるオーマとシノを配置した布陣だ。

 対するBチームは横一列に布陣を敷く分散攻撃陣形だ。中央にSnow、向かって右側にアカネ、左にルナとなっている。このまままっすぐ突っ込めばSnowはミキオと、アカネはシノと、そしてルナはオーマとぶつかる事となるが、下手をすると中央のSnowが集中砲火を喰らう可能性もある。


「早速、動いた」


 レッドリーフの言葉に戦場に目を向けると、Bチームの側にてスキル【濃霧(フォッグ)】が発動したようだ。フィールド全体が薄らと霧に包まれる。


「視界を悪くする【濃霧(フォッグ)】の広範囲発動だな。相手に遠距離攻撃可能な選手が多いから良い手だ。使用したのはSnowか」


「いや、相手に風属性がいるすぐ散らされるぞ」


 私の言葉に、レッドリーフが意見を被せてくる。


「スキル……【暴風炸裂爆弾(ハリケーンブラスト)】……」


 アバターでは完全に目元が髪で隠れていて猫耳型のフードのついたローブと星形のオブジェがついた可愛いステッキを装備した魔術士の『シノ』がスキルを発動させると、霧発生の中心部で爆発が起こる。


 その爆風に霧が散らされる。


「シノちゃん、見つけた。スキル発動【属性纏衣】――からの、【長距離(レンジド)投擲(スロウ)】!!」


 敵陣に向けて駆けていたアカネが発動したスキルの表示から相手を見つけ、武器のブーメランに風属性を付与して投げ放つ。

 ブーメランは空気を切り裂き、障害物となる瓦礫を避けるように上空に弧を描いて相手へと襲いかかる。


 しかし、ガキンと金属音が響き防がれた。


「くそっ、この音。盾で防御された。ミキオかっ」


 アカネは弾かれた事によって制御不能(ロスト)状態になった武器を、職業固定スキル【武具帰還】にてすぐさま手元に戻す。が――


「スキル……【風刃連撃(サイクロンエッジ)】……」


 すぐさまシノが魔法スキルを発動する。それは幾つもの真空の刃を撃ち出す範囲攻撃だ。

 アカネは手元に戻った武器で防御を試みるが、防ぎきれずにダメージを負う。First Attack判定もあり、アカネの体力が一気に減少した。


「アカネちゃん!」


 別ルートから敵陣へ突撃していたルナが仲間の窮地に、駆ける足を早めるが――


「はあぁぁぁっ!!!」


 廃墟の瓦礫の陰から飛び出してきた相手に弾き飛ばされる。

 そこにいたのは全身鎧に包まれた戦士の姿。その左腕には中型の盾が装備されていて、その盾でシールドバッシュを仕掛けたのだ。


「ミキオ?! なんで?

 向こうでアカネちゃんの攻撃を止めていたはず……」


 ルナは戦槌(ハンマー)を構えながら驚きの言葉を漏らす。


「はっはっは! 代表選考が行われるこの時まで秘密にしていた。スキル【念動力(サイコキネシス)】を利用した盾の遠隔操作だ。

 部長が剣の二刀流ならば、俺は盾の二刀流だ!」


 ミキオが左腕に装備されている盾を掲げて宣言する。フルフェイスの兜を付けているので表情は見えないが、多分ドヤ顔をしているのだろう。


 すぐ横で戦況を観戦していたクルミが「盾なのに二()流って。そこまで防御に特化しなくても。面白すぎ」と笑い転げているが、案外面白い発想だと思う。


「元から防御重視のスタイルだったミキオが、盾2枚使用とは面白いな。

 【武具錬成】で追加した大楯を【念動力(サイコキネシス)】で運用することで、射撃や投擲などの遠距離攻撃をそちらに任せて、自身は近距離防御に徹することができる。常に【念動力(サイコキネシス)】を発動させていないといけなく、制御が難しいだろうが面白い戦法だ。

 クルミは笑い転げているが、これは極めれば投擲士の天敵になるかもしれないぞ」


 レッドリーフも私と同じ感想を持ったようだ。


「しかし、Snowはどこだ?」


 【濃霧】のスキルで目眩しをして、アカネとルナがバラバラに特攻したようだが、Snowの姿が見えない。どこかに身を隠しているのか?


「盾ごと打ち砕いてあげるわ! でりゃぁーーっ!!」


 私がSnowの姿を探しているうちに、ルナとミキオの戦闘が始まる。


 ルナの振りかざした戦槌(ハンマー)がミキオを襲う。高質量の武器による一撃は、盾で防御したならその耐久値を大きく削り、数回で武具破壊となるであろう。

 しかし、それは承知の上のミキオはバックステップでその攻撃を回避する。

 防御特化だからって、全ての攻撃を受けるわけではないのだ。


「うむ。良い判断だな」


 感想が漏れる。


 ドオオォォン!!


 地面に打ち付けられたハンマーが地面を揺らすが、『地』属性の【地形効果無効】でミキオにはスタン効果が発動しない。


「地属性同士の闘いに慣れていないみたいだね。パワーとハンマーの付随効果によるゴリ押しだけじゃ、俺は抜けないぜ」


 ミキオは巧く防御と回避を駆使してルナを足止めする。


「隙ありっ!!」


 ルナが大技を繰り出そうと大振りになったところに再度シールドバッシュを行い、体勢が崩させる。


 そのルナの身体に遠方から飛来した矢が突き刺さった。


「くうっ!」


「ズギューン! オーマの矢が乙女の心臓(ハート)を狙い撃ちだぜ!」


 耳を尖らせてファンタジー世界のエルフを意識させて造形が作られた射手のアバター『オーマ』が楽しそうな声を上げる。


 ルナが嫌そうな悔しそうな表情を浮かべる。


 オーマは普段からおちゃらけた言動が多く、ゲーム内でも気障ったらしい言動が多いのだが射撃の腕は高いのだ。二年のリョーマと比べると見劣りしてしまうところがあるが、堅実さならばオーマに軍配が上がるだろう。速さや手数ではリョーマ。命中率ならオーマと言ったところか。


「ナイスアシスト! だけど、もう一人のSnowの方は大丈夫なのか?」


「分からん。全然姿を見せないから威嚇射撃も出来ていない。このまま相手の動きを待つより、ミキオに加勢しあぶり出した方がいいかなって思ってこっちに来た。

 このまま動きがないようなら、二人でまずルナを落としてしまおう」


「ま、そりゃそうだがな!」


 そんなやりとしをしながら、ミキオがルナに追撃をする。

 元々知り合いだった二人の息のあった連携攻撃に、ルナは防戦一方だ。


 もう片方のアカネも、シノブの遠距離攻撃に反撃できずにいる。

 隙を見てブーメランを投げつけるが、その攻撃はミキオの遠隔操作された大楯に防がれる。別の相手と対峙しながらも、もう一方の攻防にも気を配るミキオの視野の広さが際立つ展開となった。


「うむ。ミキオがいい動きをしてるな。これは同じ防御特化(タンク)のプロテインはうかうかしてられないな」


 副部長であり参謀であるレッドリーフが言葉を漏らす。


 このまま一方的な展開になると思われたのだが、次の瞬間に流れが一転する。


「まずは一人落ちてもらうぜ。スキル発動【分裂矢――」


 攻勢であったAチーム。一気に勝負を決めようとオーマが大技を発動させようとしたその瞬間


 オーマの顔が跳ね上がる。


――致命の一撃(クリティカルヒット)


 オーマ、体力0となったため退場――



 システムメッセージが画面に踊る。


「なっ……」


 驚きの言葉を言い合える暇もなく、スキル発動の予備動作の状態のままオーマが光の粒子となって消えていく。


「くそっ、だが――」


 急な展開に動揺の色を見せつつも、ミキオはすぐに切り替えて体力残りわずかのルナに襲いかかる。早くルナを斃して2対2に持ち込もうとしたのだ。


 ガン! ガン! ガン!


 しかし、連続で襲った衝撃にミキオの足が止まる。


「なっ、これは水属性の攻撃。Snowかっ!」


 全身鎧に守られて弾かれた弾が霧状に砕け小さな虹が浮かぶ。


「シノ! Snowからの遠距離攻撃があるぞ! 水属性で視認が難しい、警戒しておいてくれ!」


 相手に聞こえるように大声を張り上げる。その声を聞いて、シノが小さく頷く。


「うぉりゃあぁぁぁっ!!」


「くおっ!」


 ミキオが言葉をシノに伝えている間に、間合いに入ったルナの攻撃が襲う。

 回避出来ずに盾で防御するが、戦槌(ハンマー)の凄まじい衝撃に体力が削られる。


「くそっ、これだから大型武器は嫌いなんだよ!」


 そう吐き捨てながらもミキオは前蹴りを繰り出してルナを弾き飛ばして距離を取る。


「ふぅ、こうなったら向こうはシノに任せて、こっちの闘いに集中するしかないな」


 ミキオは遠隔操作の大楯を一定箇所に固定すると、盾で身を護りながらもソードブレイカーと呼ばれる特殊な短剣を構える。


「一気に戦局が動き出したな」


 レッドリーフの言葉に「ああ」と頷く。


「スキル……【風刃連撃(サイクロンエッジ)】……」


 シノも前面への広範囲魔法を発動させる。


「魔法系スキルの連打で体力が低下しているが、シノはここで一気に勝負に出たな。これならば前方からの遠距離攻撃も防げる」


 レッドリーフの声にそちらへ視線を向ける。


 魔法系スキルは体力を消費して発動させるスキルのため、一方的に思えたがシノの体力も六割にまで減っていた。この魔法スキル発動で体力ゲージが半分を切り黄色表示に変わる。


「うおおおおおおおおっ!!」


 対するアカネだが体力は残り三割だ。この大魔法を回避できれば勝機は見えるのだが、発動された魔法の効果範囲を見て回避不能と察したのか、特攻に切り替え、武器と鉄甲を盾にして真っ直ぐに真空の刃の嵐の中に飛び込んだ。


「いい判断だ。広範囲魔法については下手に回避行動をするより、当たる範囲を小さくして飛び込んだ方がダメージは少なくなる。

 しかし判断が遅すぎたようだな」


 アカネとシノの距離が一気に詰まるが、アカネの体力も一気に減っていく。このままだと接近し切る前にアカネの体力が尽きる。シノは念には念を入れて追加コストを払い魔法の発動時間を延長する。


「決まったな……」


 そう呟いた瞬間、アカネの身体が小さく揺らぐ。


 後方からの攻撃? まさか、友軍攻撃(フレンドリーファイヤ)か⁉︎


 アカネの体力が一割を切り体力が尽きたかと思われた瞬間、想定していなかった事が起こる。

 体力ゲージがのこり数ドットのところで止まり、なんと一気に五割近くまで回復したのだ。


「嘘っ……」


 目の前で起きた事が信じられず、シノは硬直する。


「でやあぁぁぁぁ!!!」


 そんなシノにアカネの渾身の一撃が炸裂する。打撃モードとしていた武器の一撃はカウンター判定も重なり、シノの体力を一気に削る。


「まだまだぁ!」


 さらに畳み掛けるようなアカネの連続攻撃で、シノを撃破するのであった。

色々と分かりにくい部分があると思いますが、その辺の説明は次話の感想戦で解説する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ