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38.現状把握

◼️前回までのあらすじ◼️

真雪は新たなアイテムとスキルで暴れ回っていた(本人は無意識)


その頃、真雪を部活に勧誘しようと考えるeスポーツ部の部長は現状を把握しようと、真雪と同じクラスの部員を呼び出して話を聞くこととしたのだった。


※今回はeスポーツ部の部長・久遠寺 刹那からの視点です。

「あの、お疲れ様です」


 恐る恐るダイブルームに入ってきたのは、一年の大鍬と榎崎だ。急に三年である私に呼び出されて緊張しているようだ。


「緊張しなくてもいいよ。

 少し話が聞きたいだけだから。取り敢えず、座ってくれ」


 そう言って、用意しておいた椅子を指差す。


 後輩二人は恐る恐ると言った感じで椅子に座る。まぁ無理はないか、部活前に部長に呼び出されたのだから。

 そして私の後ろには副部長の慎一郎が立っている。慎一郎は基本無愛想なので、後輩たちの緊張はMAXなのが感じ取れる。


「単刀直入に聞くけど、柊木さんの今日の様子はどうだった?」


 余計な前振りは無しで、真っ直ぐに訊く。


 その質問に驚いたような表情をして後輩二人は目配せしあう。

 やはり、思った通りかな


「やはり、部活に対しては良い印象じゃなかったのかな? 私も慎一郎に言われて、昨日の私達の対応がマズかったのは自覚している。どんな意見でも構わないので、教えてもらえると助かる」


 言いづらそうにしている後輩二人に助け舟を出す。私が既にあの子がネガティブな印象を持っているだろうと予測していることを告げれば、マイナスな事も話しやすいだろうと考えての事だ。


「私達に気を遣って明言は避けてましたが、あまり部活に興味が湧かなかったみたいでした」


「うん。私が話を聞いた時には「学校にもまだ慣れていないから、部活はまだ早いかも」と言ってました」


 大鍬と榎崎がそれぞれ報告する。


 私はやっぱりそうかと、慎一郎に目配せすると、慎一郎も頷く。


「ありがとう。状況が分かっただけでも収穫だ。


 もう一つだけ訊かせてくれ。二人は柊木さんの事はどう思っている? いや、質問が悪いな、私達は本気で柊木さんを部にスカウトしようと思ってる。それについてどう思う? あの子は身体が弱いと聞いている。それを踏まえて部に勧誘することに賛成か反対かを確認したいんだ」


 まっすぐ質問をぶつけてみる。


 二人は暫く考えてから、まずは榎崎が口を開く。


「私個人としては賛成です。今日も教室でブレバトの話を真雪としました。その時、真雪はすごく楽しそうで、私は部活でも一緒にあの子と一緒にブレバトをやりたいです」


「私も真雪ちゃんとブレバトしたいです」


 榎崎に続いて大鍬も肯定的な意見だった。


「それを聞いて安心したよ。これから私達は柊木さんの勧誘作戦を立てる予定だ。もしかしたら、それに協力してもらうかもしれない。その時はよろしくな」


 そう声をかけると、二人は「「はい」」と快く答えてくれた。


「話は以上だ。ありがとう」


 そして話を終わらす。


 そのタイミングでダイブルームの入り口のドアが開く。


「ちぃーす。あれ、一年珍しく早いじゃん」


 入ってきたのは二年の風祭 楓だった。風祭も柊木についてこだわりを持っている生徒だ。


「二人は私が呼び出して早めに来てもらったんだ」


 私の言葉に目を細めると「なるほど。Snowの事ですか?」とこちらの意図を察したかのように応える。


「その通り。うちが全国を目指すためには、あの子の力が必要だからね。どうやって勧誘するか、これから考えるところだ。風祭も一緒に考えてくれないか?」


 ずっとSnowと闘いたいと言っていた風祭なら乗ってくると思って誘ったのだけど、風祭は首を横に振った。


「私は遠慮しておきます。


 一応報告ですが、昨日の部活の後、家からブレバトにログインして、グローバルエリアでSnowに会って話したのですが、あまり部活に対して乗り気ではなかったみたいですよ。

 それにあの子が入ってきたら、私のレギュラー枠が危うくなりますからね。

 はっきり言って同じ職業で同じ流派の私はSnowの劣化版でしかない。

 ならば、Snowを勧誘するための作戦に時間を割くよりも、もしSnowが入ってきたとしてもレギュラーとして勝ち残っていける様にトレーニングを積み重ねた方が有意義な時間活用だと判断しました。


 なので私は部活が始まるまでトレーニングします。


 一年の二人もただ単に「友達を誘う」程度の気持ちだったら、もう少し考えたほうがいいぞ。

 発展途上な大鍬はまだしも、レギュラーに手が届きそうな榎崎はSnowが入ることによってその枠を奪われる可能性があるからな。


 私からはそれだけだ。


 部長、このカプセル、部活が始まるまで借りますね」


 コンコンとダイブカプセルを叩いて、風祭はそのダイブカプセルの中に入って行った。


「ちょ、風祭」


 風祭の言葉の中に気になる内容が幾つかあったのだが、問い正す前にカプセルの中に入ってしまった。


 急に話を振られた一年生二人も困惑しているみたいだ。

 7月から始まるブレバト全高グランプリの地区予選。レギュラーを狙っている生徒からすると今は大切な時期なのだ。そう考えると、とんでもない実力の新人が入部する可能性があると分かったならば必死になるのも頷ける。


「ふむ。やはり風祭は柊木について何か知ってるみたいだな。部活が始まるまで出てこないと思うので、これは部活後に話を聞く必要があるな」


 私が思考を巡らせていると、今までずっと黙っていた慎一郎が神妙な面持ちで呟く。


 その意見には私も同意だ。


「部長、私達も部活までカプセルを使わせてもらいます」


 風祭の言葉に感化されたのか、一年生二人はそう言うとカプセルの中に消えていく。


「単純に実力者を迎え入れるってだけにはいかないのかねぇ……」


 ぼやきながら天井を仰ぐ。


「勝負の世界だからな。中々うまくいかないだろう。


 あまり一人で抱え込むなよ。いつでも俺や他の三年にも頼れ。

 高校最後の大会だ。悔いを残さないようにしよう」


「そうだな。頼りにしてるよ、参謀」


「ふん。ああ、任せておけ」


 そんな慎一郎の言葉に、私の心の中にあったモヤモヤが少し晴れた気がしたのであった。

投稿が遅くなってしまい、すみません…


短いですが、今回はここで区切らせてもらいました。

全体の文字数も増えてきたので、一旦全体的に校正を入れていこうと思います。


皆様からの誤字報告、非常に助かっています。

おかしいな?と思った箇所があれば、バシバシ誤字報告いただけると助かります。

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