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205/207

201.全国大会準々決勝戦(vs甲賀不忍高校)⑥

◾️前回までのあらすじ

夏の一大イベント、ブレバトグランプリ。

三回戦を勝ち上がった神里高校は決勝トーナメントへと駒を進める事となった。


準々決勝の相手は滋賀県代表の甲賀不忍高校。

忍者軍団の強かな戦略に苦戦を強いられる。団体戦1、2と連敗し後がなくなったが、続く個人戦1・2で勝利し勝負の行方は最終の個人戦3へと委ねられることとなった。

このまま逆転勝利で準決勝へと駒を進めることが出来るのか!?


■大会経過■

<結果>

準々決勝

・仙台神薙高校(宮城) 1 - 3 白幌高校(北北海道)

・クラーク電子(西東京) 2 - 3 金沢蓮花(石川)

・祇園女子高校(京都) 3 - 0 湘南白浜高校(神奈川)


<対戦中>

・甲賀不忍高校(滋賀) 2 - 1 神里高校(埼玉)

団体戦1 甲賀不忍高校(シャドー/サスケ/ハンゾー) ○-● 神里高校(セツナ/マリー/Snow)

団体戦2 甲賀不忍高校(フウマ/アツオ/アヤメ) ○-● 神里高校(クルミ/カエデ/タッチー)

個人戦1 甲賀不忍高校 (シャドー) ●-○ 神里高校(Snow)

個人戦2 甲賀不忍高校 (サスケ) ●-○ 神里高校 (セツナ)

個人戦3

『決着ぅぅぅぅーーー!!

 個人戦2は神里高校の主将のセツナが、甲賀不忍高校の風の忍者サスケを破って2勝2敗に持ち込んだぁぁぁー!

 これで勝負の行方は最終戦の<個人戦3>へと持ち越されたぁぁぁぁ』


 実況アナウンサーの声に、会場全体に大歓声が巻き起こる。


「勝ったぞ」


 バトルフィールドから戻ってきたセツナ部長が拳を掲げて勝鬨を上げる。


 私達は喜びの声を上げ、迎え入れる。


「これがセッつんよ。最初っからこの実力を出してればよかったのよ」


「やったっすね」


「見事です」


 次々に仲間達が声を掛けてハイタッチを交わす。私も「さすがです」と声を掛けてハイタッチする。そして――


「次は頼んだぞ」


「はい」


 そして最後に、<個人戦3>へと出場するカエデ先輩とグータッチをする。


 カエデ先輩は気合十分、その表情からしっかりと次の試合に向けて集中力を高めていることが分かる。


 セツナ部長は全員と言葉を交わしたあと、身を投げ出すように椅子に腰かける。そして、そのまま天を仰ぎ目を閉じた。

 今のバトルで闘気を全開で使用したのだ。大丈夫そうに見えて、それでも心身への負担は相当なものだったのだろう。みんなもそれに気付いているのか、敢えて声はかけずに静かに休める様に配慮する。


『さぁ、運命を掛けた最終戦。泣いても笑っても、次のバトルで勝負が決まる<個人戦3>の対戦カードはこちらだ!』


 司会進行をしているマスコットキャラのバトラーくんの言葉と共に画面に対戦メンバーが表示される。


≪個人戦3≫

神里高校

 カエデ  拳闘士 属性:雷


甲賀不忍高校

 フウマ  剣士  属性:風


 メンバー発表と同時に歓声が上がる。


『神里高校は攻撃的な戦略を得意とする拳闘士のカエデ。

 対する甲賀不忍高校は特殊な武器である鎖鎌を使い相手を屠る暗器使いのフウマだ。

 勝敗を決める最終戦、どのようなバトルが繰り広げられるのか――』


 実況の煽り文句を告げ、バトルメンバーである二人がバトルフィールドへと転送される。


 転送されたバトルフィールドは『廃墟』だ。朽ちた宮殿の中庭というようなフィールドで。中央部分は開けているが、崩れた石柱や周囲に転がる障害物に囲われた戦場だ。

 開けた中央部で闘うか、障害物が多い場所へと誘導し闘うか戦略が問われるフィールドである。


 カエデ先輩は中央部で正面から闘う戦術を選ぶはずだ。対するフウマはどのような戦術を取ってくるかが注目だ。


 フィールド中央で両者が向き合う。


 カエデ先輩はゆっくりと拳を構え、フウマも武器である鎖鎌を構え鎖分銅を頭上で回し始めた。

 搦め手が得意な甲賀不忍高校としては珍しく正面から闘うようなそぶりだ。


「武器の射程が広く、その優位性から正面戦闘を選んだのか。それとも別に何かを狙っているのか。不気味っすね……」


 共に観戦しているマリー先輩が言葉を漏らす。その感想は私も一緒である。


『さぁ、泣いても笑っても準々決勝第4試合、神里高校vs甲賀不忍高校はこのバトルで決着になります。

 どんなバトルとなるのか、バトル開始までのカウントダウンが始まります』


 実況の言葉と共に画面中央にバトル開始までの数字が表示され、カウントダウンされる。


 フィールドに緊張が走り、鎖分銅を回転させる音のみが場に響く。


 Fight!!!


 そして、バトルが開始される。


「スキル【消音(ミュート)】」


 開始と同時にフウマがスキルを発動させ鎖分銅を回転させる音が消え、それと同時に爆発音が響く。


 爆発音の正体はカエデ先輩の強力な蹴足で地面を蹴った音だ。氣功術を利用した高速移動術の『烈脚』だ。烈脚を利用して一気に相手との距離を詰める。


「疾ッ――」


 それをフウマが分銅を投擲し迎撃する。それを腕に装備した鉄甲て弾こうとするが――


「スキル【念動力(サイコキネシス)】」


 フウマはスキルを発動させ投擲した分銅を操り、軌道をうねらせてカエデ先輩を捕縛しようとする。


 スキルの効果で音の消えた鎖分銅が軌道をぐにゃりと変えて捕縛しようとするその様子は、まるで外敵を捕らえようとする生物だ。


 それを察知したカエデ先輩は移動術を無音の移動術である『幻歩』に切り替え、弧を描いて締め付ける様に迫る鎖を身を屈めつつ回避。

 高速移動から無音の移動術に切り替えたことによる急減速と消音効果で、まるで姿を消した様に感じられる動きに、対戦相手のフウマは幻惑され、対応できずにカエデ先輩を見失う。その混乱が伝播して鎖分銅も制御を失ったかのように宙を彷徨う。


 対するカエデ先輩は、無音の移動術で相手に気付かれる前に近距離まで距離を詰め、下段蹴りを繰り出す。


 だが、フウマはすぐさま防御に切り替え、脛当てで蹴りを防御。それと同時にカウンターで鎌の一撃を繰り出す。独特なな大きく弧を描く斬撃をカエデ先輩は『流水の捌き』で軌道を逸らし、逆カウンターで拳を繰り出すが、それを大きなバックステップで回避する。


 開幕から高度な攻防だ。


 逃がすまいと、カエデ先輩は追撃を試みるが「ぼうん」という効果音と共に煙幕が立ち上る。


 フウマがスキル【煙幕(スモーク)】を発動させたのだ。立ち上った煙幕ににカエデ先輩が突っ込む形となり、逆にバックステップで距離を空けていたフウマはその煙から飛び出るような形となる。


 それによりカエデ先輩のみが煙幕に包まれ視界を遮られる事となる。


「スキル【念動力(サイコキネシス)】」


 フウマは右手を前へ突き出しスキルを発動させる。

 右手の指の先には鎖鎌の分銅があり、スキルの効果でそれが浮き上がり指の動きに合わせて分銅が敵へと襲い掛かる。バトル開始と共に発動させている【消音(ミュート)】の効果も継続されているため、音による攻撃察知も不可能。闘気による気配察知がまだ扱えないカエデ先輩では相手の攻撃を認識できない。


「先輩っ」


 思わず声が漏れる。が、それと同時にカエデ先輩が発動させたスキル名が表示される。


 【生命錬剣(オーラブレード)


 煙幕の中に表示されたその文字から、カエデ先輩はスキル効果で剣を作り出しそれを装備したことが分かる。


「――紫電一刀流、奥義・斬空閃(ざんくうせん)!」


 ボという音と共に煙幕が横一線に切り裂かれる。


 私の知らない、剣術の技だ。煙幕が切り裂かれて姿が確認できたカエデ先輩の装備していた剣は闘気を纏っていたので、闘気によって効果範囲を広げたのであろう。多分だけど、威力を煙を裂ける程度に抑え、効果範囲を最大限に広げて斬撃を放ったのだ。


 煙幕が切り裂かれ視界が開けたことで飛来する分銅に気付いたカエデ先輩は、大技を出した後で対応が難しいと判断し、回避を選択する。


「甘い!」


 だがフウマが右手の指をくんと動かし、念動力(サイコキネシス)の効果で分銅の軌道を変える。


 ドゴッ


 ――First Hit!!――


「くっ」


 肩口に分銅を喰らったカエデ先輩は言葉を漏らす。大ダメージではないが、初撃ボーナスを取られた事への悔しさから出た言葉だ。

 初撃ボーナスが乗って、通常よりやや多く体力ゲージが減少する。


『高度な攻防戦の末、最初の一撃を与えたのは甲賀不忍高校のフウマ選手!』


 実況もすぐさま戦況の説明し、会場も一層盛り上がりをみせる。


「まだまだ」


 フウマは左手の指を細かく動かし、分銅を再度けしかける。


「ハッ!」


 カエデ先輩は気合一閃、さらに軌道を変えて襲い掛かった分銅をスキルで生成した剣で叩き落とす。その影響で分銅は【念動力(サイコキネシス)】の制御を失う。


「分銅を叩き落としても無駄だ。スキル【念動力(サイコキネシス)】」


 すかさずフウマはスキルを再発動させ分銅を制御する。フウマは距離を空けたまま、操った鎖分銅で攻め立てる作戦の様だ、が――


 ズシュッ


 フウマの肩口に剣が突き刺ささる。


「なっ」


 フウマが驚きの声を漏らす。カエデ先輩は襲い掛かる分銅を迎撃するそぶりを一瞬みせた後、剣を投擲したのた。


 生命錬剣(オーラブレード)の効果で生成された剣は術者が手にしている間は破壊不能の武器となる。だがその剣は手から離れれば数秒で消滅してしまうのだ。

 そのため、まさか投擲するとは思っていなかったフウマは意表を突かれた形になる。


「くうっ!」


 予想外のダメージに表情を歪めつつ、隙を突かれないように【念動力(サイコキネシス)】で操った分銅をけしかけるが、目標とした場所にはすでにカエデ先輩の姿はなかった。


「真陰熊流、奥義・雷霆八閃(らいていはっせん)――」


 相手が怯んだ一瞬の隙を逃さず、無音の移動術『幻歩』を利用し距離を詰めたカエデ先輩が連撃を仕掛けていた。


 雷霆八閃はこれまでのバトルでも使用しているカエデ先輩の代名詞ともなる連撃技だ。隙を生じぬ八連撃は知っていても防ぎきる事は困難である。


 最初の数撃は防御出来ていたが、四発目からは有効打となって相手の身体に突き刺さる。


「ぐぬぅ、くそっ。闘気発動っ!」


 止まらぬ連撃にフウマは堪らずに闘気を発動し、大技を繰り出し反撃する。相打ち覚悟の捨て身の一撃だ。


「――閻魔(えんま)断獄刃(だんごくじん)!」


 鎌に闘気を纏わせ巨大な刃を形成し、心の力で威力を極限にまで上げた斬撃がカエデ先輩を襲う。


 ザ――……クン!!


 空間をも切り裂くような防御不能の強大な一撃。だが、その斬撃は大きく斜め上へと逸らされる。真陰熊流格闘術・防御の極意『流水の捌き』だ。

 相手の斬撃の軌跡の横面に触れる事で軌道を逸らす技だ。相手が全闘気を込めて放った極大技の威力を会心の防御法で回避したのだ。


「奥義・崩穿華『轟』!」


 そして、渾身の一撃が炸裂する。闘気を纏わせた防御不能の拳を腹部に喰らいフウマが大きく吹き飛ばされる。


 これで勝負あり、と思われたが――



 ぼうん!


 気の抜けたような効果音と共にフウマの身体が丸太に置き換わる。それと同時に発動されたスキル名の【空蝉(うつせみ)】の文字が浮かぶ。


 やはり一筋縄では勝たせてもらえない様だ。


 空蝉の効果で身代わりと入れ替わり、離れた場所に出現したフウマは満身創痍だ。体力ゲージも危険域の赤色表示となっている。


 対するカエデ先輩はと言うと、こちらも右腕を押さえながら苦悶の表情を見せている。先程の大技を捌いた時に傷めた様だ。


「危ない所だった。空蝉の術が無ければやられていた。だが、おぬしの方も無傷とはいかなかったようだな」


 肩で息をしながら、フウマが声を掛ける。


「ここまで温存していた我が最終奥義は触れるだけでもダメージが発生する究極の一撃。まさか軌道を逸らされるとは思わなかったが、その右腕、もう使用不能となったのではないか?」


 そう問いかけながらフウマが鎖鎌の分銅を頭上で回転させ始める。


「フン、まさか斬撃技に打撃の効果も付与してるなんて、本当に滅茶苦茶な技を隠し持ってたもんだよ。ダメージは大きかったが部位破壊までは至っていない」


 何度か右手の指を開閉させて動きを確かめた後、ゆっくりと拳を構える。その右手の動きにぎこちなさが残る。


「次の攻防で決着となるだろう。覚悟はよいか」


「体力が残りわずかな身でよく言えたもんだ。次の攻防で敗北するのはアンタだよ」


 カエデ先輩の挑発を込めた返しにフウマは動揺することなく言葉を続ける。


「では、尋常に――」


 その言葉と共に「ぼうん」という音と【煙幕】が立ち上る。


「チッ、なにが尋常にだ。姑息な手を使いやがって」


 煙に姿を消した相手にカエデ先輩が不満の言葉を吐き捨てる。一気に距離を詰めて決着させそうとした足が止まる。

 姿が見えない相手の懐に飛び込むのは自殺行為だ。相手には鎖分銅を利用した投擲攻撃があるのだ。


 カエデ先輩が警戒を強める中、観客である私達からはフウマの動きが見て取れた。


 スキル【煙幕(スモーク)】を発動すると同時に後方へ跳び、鎖分銅をカエデ先輩とは反対方向へと投げつけたのだ。


 予想外の行動に観客たちはどよめく。


 フウマが投擲した分銅はそのままフィールドの外側へと飛んでいき、フィールドの外側に転がる石柱の塊(オブジェクト)に鎖を絡みつかせる。


「闘気全解放、剛力全開! ぬおぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁっ!!」


 そして、闘気による補助効果で極限まで高めた筋力で絡めとった石柱をひっぱり上げ、そのままカエデ先輩へと叩きつける。


「な――」


 想定外の質量攻撃にカエデ先輩は慌てて回避。凄まじい轟音と共につい先ほどまでカエデ先輩がいた場所に巨大な塊が叩きつけられる。


「先ほどは攻撃を受けながらだったため威力半減していたが、これが本来の威力を乗せた究極の一撃だ!」


 鎖を引いた力を乗せて一気に加速して距離を詰めつつフウマは鎌へと全闘気を纏わせる。漆黒に染まる闘気は禍々しい光を帯び巨大な刃を形成する。


「朧無心流・究極奥義、――閻魔(えんま)断獄刃(だんごくじん)んんん!」


 心の力――闘気――により破壊と威力の効果を極限まで付与した禍々しき凶刃が、先程の回避の影響で体勢を崩しているカエデを襲うのであった。

運命を決める、準々決勝の最終戦。


究極の一撃の前にカエデは――


次回、準々決勝の結着です。

乞うご期待ください。


◆スキルに説明◆

消音(ミュート) ★

 行動時に発生する音を消す。発動時間は任意で意図的にスキル解除しなければ永続的に効果が続く。


念動力(サイコキネシス) ★

 持ち主が自分である、もしくは一度触れた持ち主なしの物質を操ることが出来る。効果範囲は半径5メートル。また使用時は対象の重量が自信にかかることになるため、重い物質を操る場合はその荷重追加によってダメージが発生する場合がある。

 ただし、鉄球や鎖分銅など対象が鎖等で繋がれていて、武器が手に触れていると判定される武器については効果範囲の制約は発生しない。


空蝉(うつせみ) ★

 スキルを発動させた後、10秒以内に大ダメージがあった場合に効果が発動する。

 ダメージを無効化し、身代わりの丸太と入れ替わりそちらにダメージを移し替える。自身は10メートル先の位置に出現する。

 スキル効果発動後、0.2秒間の硬直がある。また、スキル効果発動後300秒はクールタイムとなり、同スキルの再発動は不可となる。


生命錬剣(オーラブレード) ★

 体力を3%消費し破壊不能の剣を生み出す。生み出された剣はどの職業であっても装備することが出来る。生み出せる剣は一本のみ。スキル解除、もしくは手から離れると剣は消滅し、再発動可能になる。スキル解除しても消費した体力は回復しない。


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