140.県大会・決勝戦(vs大宮電子高校)⑤
■前回までのあらすじ■
ブレバトグランプリの県大会。
真雪(Snow)率いる神里高校は決勝まで勝ち上がった。
そして、ついに決勝戦が始まった。
初戦となる団体戦1では、目まぐるしく変わる試合展開であった。
闘気を利用し攻勢に出た大宮電子高校のクワンタをSnowによる対闘気用のカウンター技で下し、さらにSnowが自らを犠牲にして発動させた回復スキルによって復活したアカネの活躍により神里高校の逆転勝利となったのであった。
現在は以下の状況となっていす。
●試合結果●
①神里高校○ 3-0 ×久喜総合学院
②大宮電子高校○ 3-0 ×松伏緑山高校
③秩父龍勢高校○ 3-2 ×川越女学院
④所沢国際高校× 1-3 ○浦和赤城高校
〜準決勝〜
⑤神里高校○ 3-1 ×秩父龍勢高校
⑥大宮電子高校○ 3-1 ×浦和赤城高校
★試合中★
〜決勝〜
⑦神里高校 1-0 大宮電子高校
・団体戦1 神里高校○ - ×大宮電子高校
決勝戦第一試合の「団体戦1」が勝利に終わり、私は喜びを爆発させてアカネちゃんに駆け寄って抱きしめる。
「ちょ、Snow……」
私の行動にアカネちゃんは目を丸くする。
辺りは大歓声に包まれている。逆転に次ぐ逆転の展開に会場のボルテージも最高潮だ。
「やった。やったね、アカネちゃん」
そう声を掛けると、アカネちゃんは「ったくあんたってば」と私の頭を撫でてくれた。
「あれだけお膳立てしてもらっちゃったらね。片手だったけどなんとか倒せてよかったよ」
にひひと笑みを見せる。バトルが終わって、部位破壊されていた左腕も動かせるようになったみたいだ。
『ここで会場の皆様にお知らせいたします。
ただ今の試合にて体調不良となって退場したクワンタの状況を確認するため医療チームがダイブルームに向かっております。
状況が確認できるまで、しばらくお待ちくたせさい』
そんな中、会場に試合中断を知らせるアナウンスが流れる。
『アナウンスにもあったように、大宮電子高校の選手にアクシデントがあったみたいだね。
試合中に不自然に倒れたみたいだったから、ちょっと心配だね。状況確認ができるまで、しばし試合進行を中断するので、ちょっと待っててね』
司会進行を務めているマスコットキャラが観客へと状況を説明する。
背後の大画面にはクワンタが退場した時の場面が映し出されている。
「Snow、これって……?」
そのシーンを見てアカネちゃんが訊いてくる。
「うん。私が使ったのは対闘気使いの返し技『威水滅華』。闘気の共振効果を使用して相手を強制的に気力切れに追い込む技を使ったの」
自分が使用した技の説明をすると、アカネちゃんは「そ、そんな技が、あるんだね」と驚きの声を漏らした。
「うん。だから、闘気は発動させることと同じくらい解除する技術も大切なんだ」
そう説明する。アカネちゃんとタッチー先輩に闘気の使い方として、基本となる発動と解除をみっちりと教えて来たのだ。なので、今回のバトルでもハルートが<炎鳥飛翔>を放った時に咄嗟ではあったがしっかりと闘気で防御できたのだ。
私達はひとまず仲間のところへと移動する。
試合が中断されているため大きく喜ぶことはせずに、小さくグータッチで喜びを分かち合う。
『クワンタ選手の状況確認ができました。
精神的疲労の蓄積による意識レベルの低下が原因との診断でした。
現在もその状態が続いているため、医師の判断で本試合でのバトルへの参加は不可能、ドクターストップという結果となりました。
現在、大宮電子高校にオーダー変更等の確認を取っております。もう少々、試合再開までお待ちください』
そして再度アナウンスによって状況が伝えられる。
試合中の不慮な事象によって途中で選手が参加できなくなった時の救済措置が取られるみたいである。医師の判断のため、やむを得ない状況と判断されたらしい。
「なんか向こうは大変な事になったみたいね……
けど、これも時の運だと思ってこのまま一気に畳みかけるわよ」
クルミ先輩が声を上げる。不測の展開に動揺しないようにとみんなに発破をかけたのだ。
『お待たせしちゃってごめんねー。ちょっといいかな?』
試合が中断する中、司会進行のマスコットキャラがこちらに話しかけて来た。
『Snow選手のボディチェックをさせてもらいたいんだ。
相手のクワンタ選手からSnow選手に不正があるのではないかとの抗議があったので、ちょっと調べさせてもらうね。特に触るとかないので、何もせずにそこで立っててもらうだけでいいので、ちょっと協力してね』
マスコットキャラは私にそう告げると、懐から眼鏡を取り出してそれを掛ける。
私は何のことだか良くわからないけど、とりあえず言われるがままに真っすぐ直立して待つ。
『管理者権限アイテム『解析眼鏡』起動――装備「鉄甲」「武闘着(中華風)」「革のチョーカー」「波の乙女の指輪」――スキル構成「超過駆動」「水弾丸」「治癒水」―― うん、問題ないね。ありがとう』
マスコットキャラは眼鏡を通して私を見ると、問題なかったと告げて礼を言う。
「ちょっと待ってよ、アホ鳥。Snowが不正してるって、いくら何でも失礼なんじゃないの?」
お礼を言って戻って行こうとしたマスコットキャラに不機嫌そうな表情を浮かべたクルミ先輩が抗議する。
『アホ鳥、は酷いなぁ。けど、クルミさんの言葉も尤もだね。こちらとしても運営のチェックを疑われているみたいで気分悪かったからね。大宮電子高校には厳重注意することを約束するよ。
クワンタ選手がダイブルームで少し暴れたみたいでね。実をいうと僕も不本意だったんだ。神里高校のメンバーには運営チームに代わって僕が心から謝罪するよ』
マスコットキャラは私達に頭を下げて謝罪した。
『けど、これで相手からの抗議内容も全て問題ないと証明できたので、試合は再開されるね。
こちらの都合で振り回してしまって申し訳ないけど、気を悪くせずに、フェアプレーをお願いするよ』
そう言葉を残して、マスコットキャラは飛び跳ねるような動きを見せながら舞台中央へと戻って行った。
『さぁ、試合再開だよー
お待たせしちゃったので、サクサク行くよー
第二試合・団体戦2のメンバーはこちら!』
マスコットキャラは司会進行に戻ると、次のバトルのメンバーを発表する。
神里高校
レッドリーフ 剣士 属性:風
クルミ 投擲士 属性:雷
マリー 魔術士 属性:火
大宮電子高校
ラフィール 拳闘士 属性:地
サバナ 射手 属性:雷
ラビィ 魔術士 属性:氷
団体戦2のメンバーは三年生のチームだ。
「中断があったけど関係ないわ。ここで連勝して一気に王手を掛けましょう」
「ああ、油断なくいくぞ」
「了解っす。中断でやすめたので、私としては助かったっす」
三年生の3人がそう言葉を交わす。
クルミ先輩は長いツインテールを手で弾きながら大胆不敵に、レッドリーフ先輩は眼鏡を押し上げて油断なく、そして連戦となるマリー先輩はローブをたなびかせて舞台中央へと歩み出る。
「ここでひとつ取り返すぞ」
筋肉隆々の拳闘士であるラフィールは胸の前で拳を打ち合わせて前に出る。
「ああ、スマートにいこう」
緑色の片眼鏡の位置を合わせながら長髪美形男子の射手が続き。
「……」
無口な魔導士であるラビィが小さく頷いて最後に部地位中央へと歩み出る。
『それでは早速、バトルフィールドへ転送だ』
マスコットキャラの言葉に、私達はバトルフィールドへと転送されるのであった。
◆
転送されたバトルフィールドは『廃墟』であった。崩れた建物の瓦礫が多く存在する障害物が多いフィールドだ。
「遠距離攻撃が得意な相手の編成に有利な地形だな」
すぐさまにレッドリーフ先輩が状況を分析する。
対戦ではバトルフィールドはランダムとなる。しかし、下位チームが得意とするフィールドとなる確率が高いという統計もある。もしかしたら、バトルロイヤルにて下位であった相手チームに有利な地形になったのかもしれない。
「なるほどね。障害物が多い地形は私も得意よ。この試合は私がメインで行くわね」
すぐさまにクルミ先輩が前に出る。
「そうだな。クルミを中心に据えたフォーメーションでいくぞ」
「了解っす」
さすが三年生のチームだ。すぐに陣形が決まり配置につく。
「こちらに有利な陣形だな。俺が前に出る。二人は援護を」
「了解」
「ん……」
相手チームもすぐさまフォーメーションを組む。
拳闘士であるラフィールを前に据え、二人が援護する1凸2射の陣形だ。
試合開始までのカウントダウンが始まり、それぞれが戦闘準備に入る。
Fight!!
そして、試合が開始される。
「最初から全力だ。多重詠唱――スキル【武具錬成】――『巨人の腕』!」
まず動いたのは大宮電子高校の拳闘士・ラフィールだ。高度な魔法詠唱スキルである多重詠唱にて2つの魔法陣を同時に描き、大きな篭手を召喚する。
自らが装備するには大きすぎる武具である。
「……支援魔法【氷の加護】」
さらに魔術士のラビィがその篭手に支援魔法をかけ、凍気を纏わせる。
「スキル【念動力】。
これで準備万端だ。行くぞ」
ラフィールがスキルを発動し召喚した一対の篭手を宙に浮かべると、ニカリと笑って動き出す。
「うむ。あれが噂に名高い『四拳のラフィール』の戦闘スタイルか」
ともに観戦モードとして戦況を見ていたタッチー先輩が言葉を漏らす。
「しけん?」
「ああ。四つの拳で『四拳』だな。【念動力】を駆使してまるで拳が四つあるかの如く闘う姿からつけられた二つ名だ。我が個人戦で闘う可能性が高い相手だから昼休みの間に調査していた」
私の問いにタッチー先輩が独特の古風な口調で答えてくれる。
なるほど、動き出す前に拳を打ち合わせた姿を見ると、篭手を操っているというより見えない腕が篭手を装備しているといった印象であった。あそこまで自然に物を操るのは相当の技術が必要だ。やはり大宮電子高校の生徒は皆ゲームに精通してる。
闘いの序盤は静かな動き出しであった。障害物が多いフィールドのため、まずは身を隠しながらの索敵となったからだ。
先に大きく動いたのはこちらだった。
まずはレッドリーフ先輩が牽制のために斬撃を飛ばすスキルである【斬波衝】を放ったのだ。その攻撃はいまだに敵を視認できていないため、単に障害物オブジェクトを破壊しただけではあるのだが
「むっ」
近くを進行中であったラフィールがその破壊音に身構える。
「今だ、クルミ、ポイントE3だ!」
レッドリーフ先輩の声に、クルミ先輩が大きく飛び上がる。
障害物の柱を利用し三角跳びの要領で高く飛び上がり、更にスキル【二段跳躍】を利用しさらに高く飛び上がった。
「初手は頂くわよ。スキル【超電磁投擲】!!」
天高く飛び上がったクルミ先輩はスキルを使用して主武器である投擲槍を投げおろす。雷を纏い高速で投げ下ろされた槍は障害物がない絶好の位置にいたラフィール目掛けて飛んでいく。
これはレッドリーフ先輩のスキル【索敵微風】にて相手の位置を把握し、更に【斬波衝】による破壊音で相手の気を逸らし、完璧なタイミングで指示を出した連係があっての先制攻撃だ。
「ラフィ、上っ!」
「くっ」
ドシュッ――
相手魔術士から声が飛ぶ。その声に反応して宙を浮く篭手が高速で動いて防御した。
高速で投げ下ろされた槍はとっさに十字防御した『巨人の腕』に突き刺さり、その切っ先は相手まで届くことが無かった。
通常に防御するならば間に合わなかったであろうが、【念動力】にて操作していた篭手は通常の反応速度を凌駕する動きで防御したのだ。貫通効果のある雷属性の投擲スキルであったが、防御に長けた地属性の武具との相性が悪く、その効果が相殺されたのだ。しかも氷属性の恩恵にて武器が凍結され武器が固定状態となったのだ。この状態では投擲士の固有スキルである【武具帰還】が発動しない。
「防御された?! しかも【武具帰還】が発動しない。ならば――」
クルミ先輩はスキル【武具錬成】にてもう一つの武器を召喚する。が――
ズシュ――
遠方から飛来した矢がクルミ先輩の眉間を貫く。
「う~~ん、スマート。狙撃は相手に気付かれず一撃で仕留めるが鉄則だね」
片眼鏡をつけた相手・射手のサバナが気障ったい笑みを見せる。その身に纏う防具は隠密の効果が付与されており、さらにスキル【迷彩纏衣】によって周囲の色と同化している。索敵系のスキル対策がされており、位置を特定されにくくしていたのだ。
眉間に一撃を受けて一撃必殺となったと思われたクルミ先輩だが、ボウンという効果音と共にその姿が丸太と入れ替わる。それと共に発動したスキル名である【空蝉】の文字が画面に浮かぶ。
「スマートじゃなくて残念ね。あんなに目立つ動きをするんだからこれくらいの保険を掛けるのは当然よね。
マリー、私から見て十一時方向に相手射手!」
スキル効果で別位置に転移したクルミ先輩が指示を出す。それと共にマリー先輩が掃射系のスキルである【星屑火炎波】を放つ。
障害物があるために空に向けて撃ちだされた炎の矢軍は弧を描いて相手射手のいる位置に降り注ぐ。
「くっそ。マジか」
サバナは必死にその場から離脱する。それでも広範囲に撒かれた炎の矢が襲う。スキル【念動力】にて装備していた盾を操りなんとか炎の矢を防ぎきる。
「くっそ、身代わりスキルを使って俺の位置を探るなんて。とりあえずここから離脱しねぇと」
「させませんよ。クルミが身を挺して貴方の位置を特定したのだ。一気に畳みかけます」
そこに現れたのは細身剣を装備した軽剣士であるレッドリーフ先輩だ。クルミ先輩が相手の位置を指示したということは、そこが相手陣形の崩しどころだと判断したからだろう。それを感じ取ったリッドリーフ先輩が距離を詰めたのだ。
「狙撃手が相手と近距離で切りあうなんて、全然スマートじゃねぇ。肉弾戦担当のラフィールは何をやってるんだ」
サバナがその整った表情を崩して愚痴をこぼすが、その話題の矛先であるラフィールはクルミ先輩との交戦に入っており足止めされている状態だ。
【雷音発破】
閃光と共に轟音が響く。クルミ先輩のスキルだ。
「ぐおぉぉっ、猪口才なっ」
ラフィールは【拳圧衝弾】を放ち牽制をするが、【空間転移】によってそれを躱し、相手の背後に出現したクルミ先輩の蹴りが相手の後頭部に炸裂する。
圧倒的な接近戦闘技術を持つラフィールの猛攻を、クルミ先輩が華麗に躱しながら少しずつ体力を削っていく。
「私だって伊達にプロテインやSnowと闘っているワケじゃないわ」
そう言いながら、クルミ先輩らしい相手を翻弄する戦術で確実にダメージを与えている。なんだか、私の事を化物って言ってた気がしたけど、多分気のせいだろう。
「くそっ、正々堂々と闘えっ!」
そう叫びながら、ラフィールは『巨人の腕』をクルミ先輩に向けて飛ばす。
クルミ先輩を掴み取ろうと飛んできたその腕をギリギリのところで【空間転移】を発動させて回避する。ラフィールは先ほど喰らった【雷音発破】の影響で視覚と聴覚が阻害されている状態で動きが鈍い。そのお陰でクルミ先輩の方が優位に戦闘を進めている。
「スキル【連射矢】」
サバナは連射スキルにて牽制行為を行うが、レッドリーフ先輩を引きはがすことが出来ない。逆に【斬波衝】にて反撃を受けることとなる。その攻撃を【念動力】で操作した盾でなんとか防御していた。射手の弱点である『弓を番えている間に無防備になる』という点をスキルを利用して上手く補っている。
「ふむ。やっぱり決勝の相手、みんな高いゲーム技術を持つ猛者たちの様だ」
タッチー先輩が感嘆の言葉を漏らし、私はその言葉に頷く。通常のプレイヤーならば中距離タイプの射手だと距離を詰められたらなす術ないはずなのだが、上手くスキルを駆使して対処している。
「引きはがせないか。こんな正面から泥臭く闘うなんて、全然スマートじゃないぞ、くそっ」
サバナは特徴の長髪を振り乱しながら毒づく。
「くっ、こちらが有利な状況なのに距離がこれ以上縮められない」
対するレッドリーフ先輩の顔にも焦りの色が見えている。有利な状況であっても決定打を与えられずにいる。
もう一つのマッチングとなっているマリー先輩と相手魔術士であるラビィのぶつかり合いについても、氷と火で属性的に有利であるマリー先輩の方が押しているのだが、こちらも決定打を与えられずにいる。
全体的にうちが形勢的には押しているのたが、決定打を与えられないという、なんだか嫌な流れである。
「なんだか嫌な流れね」
共に観戦していたアカネちゃんがそう言葉を漏らす。アカネちゃんも私と同じ予感を感じたようだ。
「スキル【超電磁投擲】!!」
「巨大な鷲掴み!!」
クルミ先輩とラフィールが同時に技を放つ。雷を宿した槍と巨大な腕が交錯し互いに向かって飛ぶ。
「念動力の効果範囲は把握済みよ」
クルミ先輩は大きく後ろへ跳んで篭手による掴み攻撃を回避する。
ラフィールももう一つの篭手にて投擲攻撃を防御する。
「そして今回の攻撃はさっきとは違うわ」
クルミ先輩がニヤリと笑う。
投擲された二本目の槍はクルミ先輩によって螺旋回転が加えられていたのだ。先ほど篭手にて防御できたので今回も防御可能と思っていたラフィールが驚愕の表情を浮かべる。
螺旋回転が加わり貫通力の増したニ投目の槍は防御した籠手を貫いてラフィールの喉元に突き刺さったのだ。
致命箇所への一撃。まずは一人退場だ、と思ったその瞬間、「ぼうん」という場違いな効果音とともにラフィールの姿が丸太に変化する。
【空蝉】
ラフィールが発動させたスキル名が画面に浮かぶ。
「危険な場面では保険を掛けておくのは当然、なんだろ?」
身代わりと入れ替わったラフィールが意趣返しの様に、ニヤリと笑う。それと同時にクルミ先輩に掴みかかっていた方の籠手の掌が開く。
「それにスキルの効果範囲を読みきっているみたいだが、そこから物を飛ばす事はできるんだぜ――これが俺の奥の手だ。五指弾!!」
「しまっ―― スキル【空間――」
籠手の指の付け根部分が爆ぜ、弾丸のように指部分の部位が射出される。クルミ先輩は咄嗟にスキルを発動させようとするが間に合わず射出された指のうち二本を脇腹と太腿に受けてしまう。
「かはっ……」
「これでもう召喚した籠手は使えないが、それでも貴女の機動力を削げたならばこちらのものだ!」
召喚した籠手の制御を解いたラフィールが、苦悶に耐えるクルミ先輩に向けて距離を詰める。
クルミ先輩は最後の足搔きとして相手が接近した瞬間に【雷音発破】を発動させるが、二度目の不意打ちは不発に終わり、格闘戦に持ち込まれた闘いにて一気に形勢逆転されてしまった。
障害物が多いバトルフィールドであったため、クルミ先輩のピンチに他の二人が気づくのが遅れ、先にクルミ先輩が退場となってしまったのであった。




