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123.一年生レギュラーの重圧

◼️前回までのあらすじ◼️

ブレバトグランプリの県大会。

準々決勝で久喜総合学園と対戦した神里高校は勝ち上がる。

次の準決勝の相手は秩父龍勢高校となった。


準備決勝は進み、現在は以下の状況となっています。


●試合結果●

①神里高校○ 3-0 ×久喜総合学院

②大宮電子高校○ 3-0 ×松伏緑山高校

③秩父龍勢高校○ 3-2 ×川越女学院


〜試合前〜

④浦和赤城高校 - 所沢国際高校


〜準決勝〜

・神里高校 - 秩父龍勢高校

・大宮電子高校 - (④の勝者)

 激闘の決着に歓声が湧く。


『決まったぁー、決着だー!

 準々決勝第3試合は3-2にて秩父龍勢高校の勝利!

 これで明日の準決勝のひとつは神里高校vs秩父龍勢高校となりました』


『これは見応え十分なカードとなりましたね』


 実況と解説が言葉を交わす。


 勝利した秩父龍勢高校のメンバー達は喜びを爆発させ、最後に闘ったアキラをメンバー達がハイタッチで迎え入れていた。


 対する川越女学院のサニーは、立ち尽くしたままであったが、駆け寄ってきた仲間を目にすると、俯いて大粒の涙を溢した。

 ポーカーフェイスに見えたサニーであったが、やはりチームの勝敗がかかるバトルにて敗北してしまったことが悔しかった様で、優しく声をかけたレインの胸の中で声を上げて涙していた。


 そうこれはトーナメント戦なのだ。

 敗けた時点でそのチームの闘いが終わるのだ。


 サニーは私と同じく一年生だと聞いている。その一年生がチームの命運を賭けた闘いを任され、敗北する。同じ一年生だから共感できる絶望感に私は目眩を覚えてテーブルに力なく突っ伏した。


「Snow。どうしたんすか。もしかして体調を崩しちゃったすか?」


 そんな私にマリー先輩が慌てた様子で声をかける。


 私は顔を起こして「すみません。大丈夫です。川越女学院のサニーさんを見てたら、なんだか一年生でレギュラーやる事の責任の重さに気がついてしまって……」と力なく笑って見せる。

 マリー先輩は私の言葉に、目を瞬かせて驚いた表情をする。


「まったく、いまさら何を言ってるんすか」


 マリー先輩が呆れたように息を吐く。


「そう、ですよね。いまさら重責を感じて弱音を吐くなんて、私、レギュラーとして失格――」


「何言ってんすか、逆っすよ、逆」


 私の言葉を遮って、マリー先輩が私の頭をくしゃりと撫でる。


「よく考えてみるっす。Snowが居なかったら私達は予選落ちだったんすよ。ハッキリいって今の時点でSnowはレギュラー陣の中で誰よりも活躍してるっす。

 もしこの後、Snowがどんな惨敗をしようが、私達三年は感謝こそしても責めることなんてありえないっすよ」


 マリー先輩は柔らかな笑みを見せて、諭すようにそう言ってくれた。

 その後に少し遠くに視線を向けて「……まぁ、Snowが惨敗なんてすることなんか、ありえないっすけどね」と呟く。

 なんだかすごく私のことを過大評価してくれているようだけど、そう言ってもらえて、すこし不安が解消された。


「あの、先輩。ひとつ聞いて良いですか?」


「ん、なんすか?」


「これも今更なんですが、私って予選でそんなに活躍したんですか?

 あの、私、夢中で闘って、終わってすぐに倒れちゃったので、他の人と比べてどれくらい活躍できてたのかあまり実感が持てなくて……」


 ずっと疑問に思ってたことを聞いてみる。


 私の質問を聞いたマリー先輩は、先程とは比べ物にならないくらい驚いた表情を見せた。


 あれ? なんか変なこと訊いちゃったのかな……


「前々から思ってたんすけど、Snowの天然っぷりはすごいっすね。あれだけ活躍して、話題になったのに自覚がないなんて……」


 マリー先輩が呆れた様な言葉を漏らす。私はその言葉が理解できずに「えっ」と聞き返すと、マリー先輩はちょうどバトルフィールドから控え室に転移してきたレッドリーフ先輩を呼び寄せる。


「何だ、マリー? 俺はすぐにでも次の試合に向けての対策を考えたいのだが」


 ぶっきら棒に告げるレッドリーフ先輩に「まあまあ、少しだけ付き合ってほしいっす」とマリー先輩がフランクに返す。


「Snowが予選の時の活躍がどれだけだったのか知りたいみたいなんす。私だと語彙力が無いんで『すごく活躍した』としか言えないんで、レッドリーフから説明お願いしたいんすよ」


 マリー先輩の言葉に続けて、予選の後に倒れてしまってその時の活躍の実感がない事を伝えた。

 いつも冷静なレッドリーフ先輩には珍しく驚いたみたいで、端正な眉がピクリと動き、その反応を悟られない様にごほんと咳払いしてメガネの位置を直した。


「Snowは予選でどれだけポイントを稼いだか把握しているか?」


 メガネ越しに視線を私に向けてレッドリーフ先輩が問いかけてくる。

 問われて私は自分がどれだけポイントを稼いだのかすら把握していなかったことに気づく。


「えっと、あの時は夢中で、あまりポイントを見ていませんでした…… 5人以上は倒したので、20ポイントくらい、ですかね?」


 自信なく答えると、レッドリーフ先輩は「やはりそこからか」と小さく息を吐いた。


「Snowが獲得したポイントは41ポイントだ。

 これはとんでもない数字なのだが、理解できるかな?」


 レッドリーフ先輩から教えたもらった自分の獲得ポイントに驚く。思った以上に私は予選でポイントを稼いでいたみたいだ。続いた質問に私は首を傾げた。

 41ポイントっていうのが多いのは分かるけど、どれだけすごいのかまでは理解できていなかったからだ。


「分かりやすく言うと、埼玉県大会でのベスト8に入ったチームのポイントのボーダーラインが()()()()()()31ポイントだった。

 例えばだが、もし予選のバトルロイヤルで俺たちが全滅していてもSnowが獲得したポイントだけで勝ち残れたぐらいのポイントをSnowが稼いでいたことになる」


「ちなみに、Snowを抜いた私達が稼いだポイントは合計で18だったっす。

 さっきも言った通りSnowがいなければ、私達は予選で消えていたっすよ」


 レッドリーフ先輩に続けて、マリー先輩も言葉を重ねる。

 私は思った以上に自分が活躍していた事にびっくりする。


「もちろん個人成績では埼玉県ではぶっちぎりの一位だ。

 ベスト8に残ったチームは皆Snowを警戒していると言っても過言ではないな。

 現に準々決勝で当たった久喜総合はSnow対策として『天候操作』や『課金アイテム』などの対策をしてきたからな。

 話は変わるが、いきなりうちの学校に新聞の取材が来たのも、Snowがいた事が大きいと思うぞ。Snowが居る時に取材させてくれと条件がつけられたくらいだからな」


 レッドリーフ先輩が私の活躍について説明するたびに、私は衝撃をうける。

 多少なりとも活躍できたかな、と思っていたのだが、まさかここまで凄いことになっていたなんて思いもよらなかった。


「さらに言うと、全国を見ても個人で取得したポイントは女王SaeKaに次いで2位の成績だ。

 ネットの掲示板などでは、全国十桀として取り上げられていて、全国的レベルで注目されていると思ってもいい」


「ええー、そこまでなんですか」


 全国レベルと言われて、思わず声が出てしまった。


「やっぱり本当に自覚なしだったんすね。

 ほら、画面を見てくださいよ。ちょうど次の対戦相手のチームのインタビューみたいっすよ」


 マリー先輩に促されて、画面に視線を送ると、丁度先ほどの試合に勝利した秩父龍勢高校のメンバーへのインタビューが映っていた。



『準々決勝、勝利おめでとう。

 次の相手は予選第一位で通過し、準々決勝もストレート勝ちを納めた神里高校となりますが、次の試合に向けての意気込みを一言いただけますか?』


 埼玉のマスコットキャラが、試合に勝った秩父龍勢高校のメンバーにコメントを促す。


『今年のうちは最高のメンバーが揃っています。

 主将である俺だけでなく、二枚看板のエースのユキヤとアキラがいます。

 圧倒的な破壊力で、相手がどこであろうと勝利を引けを取ることはありません。

 相手は現在絶好調であると聞きますが、絶対に勝利し頂点を掴み取りたいと思います』


 秩父龍勢高校の部長であるジータが答える。


『神里高校で脅威なのはなんつってもバトロイで最高ポイントを獲得したSnowだな!

 是非とも対戦して、県内No.1拳闘士(ファイター)が誰か証明したいぜ』


『そうだな。是非対戦したいものだ。

 神里はいままではSnowの強さと、それ以外は幸運(ラッキー)で勝ち残ってきたチームだろう。

 第一回大会みたいに幸運だけで勝ち残れるほど今のブレバトは甘くはない。

 もし次で消えるとしても、俺等のどちらかとSnowが当たってすこしでも見応えのある試合となることを願おう』


 双子の拳闘士が不敵な笑みでインタビューに答える。


 私を名指しした挑発とも取れる言葉に少し苛立ちを感じる。


「まぁ奴らの言葉には不適切な部分があるが、これから闘うどのチームもSnowを意識してくると思っていい。

 それだけSnowの活躍が衝撃的だったと言うことだ」


 私が今のインタビューに不快感を持ったのが顔に出てしまったのか、レッドリーフ先輩は苦笑しながら私に声をかけてくる。


「マリー。Snowへの説明はこれで良いか?

 そろそろ俺は明日に向けての対策を立てたいのだが」


「そうっすね。サンキューっす。引き止めちゃって悪かったっすね」


 そう言葉を交わすと、レッドリーフ先輩はスポーツドリンクを飲み干してカフェエリアを離れていった。


「さてと、次の対戦相手も決まったことだし。もう一回、足湯ゾーンでゆっくりしてから宿に戻ろうと思うんすけど、Snowはどうするっすか?」


 マリー先輩は「う〜ん」と伸びをすると私に問いかける。

 土日と決勝トーナメントがあるため、部活で会場周辺に宿を借りているのだ。老月先生曰く「部費が結構余ってるからね。良い宿をおさえておいたわ。もし、負けちゃったら日曜日は観光して帰りましょう」との事だった。


「私はもう少しカフェ(ここ)でゆっくりしたいと思います。

 宿へは朱音ちゃん達と合流して帰ろうかなと思うので、連絡とって見ようと思ってます」


「そうっすか。了解っす。

 じゃ、私は足湯エリアに行くっすねー」


 マリー先輩はフランクに手を振って席を離れた。


 私はそんな先輩の背中を見送りながら、明日の対戦に向けて今の秩父龍勢高校の試合の録画データを再生するのであった。

上手くまとめられずに、この話は丸ごと没にしようと思っていましたが、折角書いた話だし、もう一度書き直すとしたら投稿の間が空いてしまうので、「え〜い」という感じで投稿しました。


とりあえず、神里vs秩父龍勢の構想は出来上がっているので、バトルパートの方はテンポ良く投稿できると思っています。


「いいね」や「★★★★★」で応援いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  続きも楽しみにしています!  「幸運」とか言われてますけれど、実際には奇襲作戦の標的にされるっていうのが度を越した「不運」だっただけなんですよね。ボーダーの高さ的に成功していても予選を抜け…
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