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104. 県予選バトルロイヤル③〜戦場での決闘〜

◼️前回までのあらすじ◼️

ついにブレバトグランプリの県予選が始まった。

Snowが所属する神里高校は開始早々に不意打ちの連続魔法を喰らい大ピンチに。

そのピンチを脱するため、Snowは単独で不意打ちをして来た春日部花園高校へ特攻を仕掛けてピンチを脱するのであった。


一方、Snowのお陰でピンチを脱したと思われた神里高校の面々だが、大魔法を目にして集まってきた他の高校に囲まれており、まだまだピンチが続くのであった。


※今回は三人称視点となります。


※高校名ですが、ちゃんと調べたら実在する高校と同名になってしまっていたので、以下に学校名を変更いたしました(あまり影響ないと思いますが、実際に同名の高校に通っている方が不快な思いしない様に配慮しました)

・川越女子高校→川越女学院高校

・秩父農業高校→秩父龍勢高校

 バトルロイヤルが始まって7分が経過。


 各地でバトルが繰り広げられ、大魔法による火柱や竜巻、雷の光などがあちらこちらで見え始めてきた。

 そして、Snowが相手のスキルを受けて光の柱が上空に立ち昇った頃、残された神里高校のメンバーは苦しい闘いを強いられていた。


「奥義・雷霆八閃!」


 カエデの連撃が相手の投擲手を吹き飛ばす。相手の体力が減少し、さらに受身が取れずに無防備となる。

 とどめの一撃を食らわそうと踏み込んだカエデの後方から幾つもの矢が飛来する。


「カエデ、油断するんじゃないわよ!

 スキル【電磁加速投擲(レースガンスロウ)】!」


 カエデに向かって飛んできた矢の幾つかをクルミが投擲した槍が撃墜する。


「すまない、助かった」


 礼を言いつつ、振り返ったカエデは『流水の捌き』で何とか後続の矢を回避する。Snowの様に完璧な動きは出来ずに何発か矢が肌を掠めたが大したダメージとはなっていない。


「があああっ……」


 しかし、カエデが追い詰めた投擲手は幾つもの矢をその身に受けて退場して行った。


「くそっ、ポイントを掠め取られたか」


「ったく、ハイエナどもかウザいわね」


 カエデとクルミが不満の声を漏らす。それでも二人のコンビネーションは相性が良く、孤立したクルミを助けるべく駆けつけたカエデによって危機は回避できている。

 クルミは【空間転移】があり、カエデも『烈脚』を用いた高速移動術があるため遊撃部隊として的を絞らせない様に動き回って相手の陣形を切り崩していた。


 残りのセツナ、レッドリーフ、マリーについては、大魔法の連射を食らい一番大きく体力を減らしたマリーを守る様な陣形で防御に徹していた。


「こっちは手負いだが、無理して突っ込んでくる相手は居ないな。手数で追い詰められたが、私とレッドで対処可能だったのが幸いしたな」


 二刀流で【会心防御(パリィ)】を連発させながらセツナが言うと、素早い手数で矢を払い除けているレッドリーフが頷いて返す。

 集まってきた相手は運良く範囲攻撃を使用できる魔術士がいなかった様で、手数で勝負する掃射系の魔法スキルについてはセツナとレッドリーフにて対処可能であった。

 そのうちこちらの体力が削れないと気づいたパーティーが、集まってきた別のパーティーに向けて掃射系魔法スキルを放ったのだ。

 どれだけ体力を削ってもポイントが入るのはとどめを刺した者だけとなるので、むしろ手軽にポイントが稼げる初撃ポイントを狙い、体力の減っていない別パーティーを標的にしたのだ。

 こうして、セツナ達への集中砲火は鳴りを潜め、ハートのポイントが3ポイント残っているアバター同士での戦闘が始まり、混戦となったのだ。


「とりあえず、【瞑想回復】が完了したっす」


 マリーの声に、セツナ達が頷く。

 【瞑想回復】とは魔術士の固有スキルで目を閉じている間、魔法系スキルにて消費した体力分を上限としてジワジワと体力を回復させるものである。なので、不意打ちで食らった分のダメージは回復しないので、【瞑想回復】が完了しても体力は5割程度であった。


「このままじゃ、敗退濃厚だ。ポイントをとりに行くぞ。レッドリーフ、どこが狙い目だ?」


「3時方向、盾役の戦士と、中距離攻撃して来ているのが投擲士と射手の3人組だ」


 セツナの問いにレッドリーフが的確に答える。

 乱戦状態となっているため6人パーティーが纏まるより、もともとの団体上限であった三人一組で二手に分かれて闘っている方が多くなっていた。


「よし、我々も動くぞ。レッド、マリー、私が先行するので援護を頼む」


 セツナは両手の剣を構えて駆け出す。それに合わせてレッドリーフ、マリーも後に続く。


 セツナ達に狙われた事に気づいた三人グループは慌てながらも中距離攻撃を放ってくる。


「甘いっ!」


 飛来した鉄球と矢をセツナの二刀流の剣が弾く。


【会心防御】


 超重量である鉄球が『剣士』の固有スキルである【会心防御】にて軽々と弾かれ、矢についても叩き落とされる。難なくこなしているがとんでもない事である。タッチーの様に【知覚向上(コンセントレイト)】を使うわけでなく、素で【会心防御】を連続で発動させるのは神技としか言いようがない。


「くっ、くそ! スキル発動【散弾矢射撃(ショットアロー)】」


 相手は必死にスキルまで発動させ射撃と投擲を繰り出すが、それについても後方にいたレッドリーフの【斬波衝】によって弾かれる。


「止まらねぇか、ならば俺が前に――」


 (タンク)役の剣士が迎撃のために前に出ようとしたのだが、その言葉が途中で途切れてグラリと前に倒れた。


 致命の一撃(クリティカルヒット)


 その文字が浮かび、剣士が退場する。


「な――」


 セツナに向けて矢を連射していた射手が突然のことに驚いて声を上げようとしたが、その喉元に閃光が走り、またしても『致命の一撃(クリティカルヒット)』の文字と共に退場して行った。


「あらあら、こんな簡単にポイントを手に入れていいのかしら?」


 場に似つかわしくない優雅な動きで微笑むのは袴姿に襷と鉢巻を締めた姿の美女。


「き、貴様ぁ、よくも俺の仲間を!」


 生き残った投擲士がいきり立って武器である鉄球を振り上げるが、遠方から飛来した矢に脳天を貫かれて退場する。


「まったくなんて美味しい狩場なのかしら……

 あら、そこにいるのは神里高校のセツナさんじゃないかしら?」


 独特な巻き毛を軽く払いながら美女がセツナに話しかけてくる。


「レイン」


 セツナが相手の名を返す。そう、そこに居たのは川越女学院高校の部長であるレインであった。


「くっ、ここで強豪校と会敵するとは……」


「ツイてないっすね。どうします、私は撤退もアリだと思うんすけど」


 セツナの背後でレッドリーフとマリーが小声でやりとりする。


「ここで貴女に会えたのも運命かしらね。

 私のブレバト戦歴で唯一の汚点は二年前に貴女に敗北した事ですからね」


 レインはにこりと笑うが、その目はセツナを睨みつけたままである。


「見たところ貴女達は全然ポイントを稼げていない見たいね。このままだと予選敗退かしら……

 セツナさん、チャンスを与えてもよろしくてよ。私はまだ非ダメージで撃破ポイントも10ポイント持っていますわ。

 どうです、ここで1対1で闘うと言うのは?

 わたくしが相手になってあげますわ」


 ヒュンヒュンと薙刀を振って構える。


 これは願ってもない申し出のように思える。もし、セツナがレインを撃破したならば3+5ポイント取得できるのだ。だが、レインも県内で指折りの実力者である。セツナが勝利する可能性は五分である。冷静に考えれば、ここは撤退して弱そうな相手からポイントを稼ぐ方が現実的である。


「あら、怖気付いたのかしら? それともわたくしの1対1という言葉が信用できなくて?」


 薙刀を構えたまま、挑発する様に口端を吊り上げる。


 ビュン


 それと共に遠方から矢が飛来する。その矢はセツナを通り過ぎ、後方にいたマリーへ向かい飛んでいく。

 マリーは慌てて【火炎盾】のスキルで防御するが、飛来した矢にもスキルが付与されていた様で、炎の盾を貫通してマリーの頬を掠めて飛んでいった。


「今のはわたくしが指示してワザと外させましたのよ?

 ハッキリ言って貴女達を潰すのなんて造作もない事ですの。もし逃げる様でしたら背中を狙い撃たれる覚悟はしておいてくださいな。

 で、どうしますの?」


 さらに挑発の言葉を重ねる。


「そこまで言われちゃ、やるしか無いわね」


 チャキリと2本の剣を構える。


「セツナ……」


「レッド、ここは私に任せて欲しい。

 ああまで言われたら、やるしかないだろ」


 心配そうなレッドリーフの声に、セツナはニヤリと笑って答える。

 セツナは元々バトル好きの脳筋タイプである。正々堂々とバトルを挑まれて燃えないわけが無いのだ。


「レイン。私にバトルを仕掛けたことを後悔させてあげる」


「フン、まぐれで過去に一回勝っただけで調子に乗らないで欲しいですわね。

 完膚なきまでに叩き潰してあげますわ!」


 こうして、県内屈指の実力者であるセツナとレインの闘いが始まるのであった。

箸休め的な感じで、他の部員の方に視点を変えてみたのですが、意外と話が長くなってしまった……


次話はセツナvsレインのお話となります。



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