たまたまガラスの靴がぴったり入ったオバサン
オシャレは足下から……
「──!?」
王子はその容姿を見て咄嗟に口を押さえ、後ろを振り向いて狼狽えるのを隠しました。
「なんだあのオバサンは!?」
舞踏会で一目惚れした麗しき女性。鐘の音と共に走り去った美しき女性。ガラスの靴の片割れを残して消えた儚げな女性──あの夢の続きが、何故かお話ですのでとなって現れたのですから、王子は腑に落ちずオバサンの履くガラスの靴の片割れを確かめました。
──カポッ
(……ぴったりなんだよなぁ…………)
──カポッ
(暗くてよく見えなかったけど、足こんなに太かったかなぁ……?)
──カポッ
(顔は絶対違うだろ……)
──カポッ……
明らかに怪しむ王子を見た大臣は、苦労して見つけた『ガラスの靴が履ける女性』にケチを付けられてはいけないと思い、こっそり王子に耳打ちをしました。
「女性は化粧で化けると申します故……」
「──なるほど」
王子はオバサンに化粧を施すよう、召使いに命じました。
そして化粧が終わり、王子がその顔を覗くと、黙って首を横に振りました。
(酷くなってる──!!)
しかし例え手違いとは言え、無下にオバサンを追い返すと王家の名に傷が付いてしまう為、王子はとりあえずオバサンと食事へと出掛けました。
「から揚げ定食。から揚げ少なめで」
体重を気にしてか、油物をやや控えながらも食べたい衝動には抗えないオバサンを見て、王子は少しだけときめきました。
「あ、美味しい……!」
から揚げを口いっぱい頬張るオバサンを見て、王子は少しだけときめきました。
「から揚げおかわり♪」
少なめでと言ったくせに何だかんだおかわりする謎のオバサンに、王子は完全にときめきました。
「──大臣。私はこのオバサンと結婚する」
「──えっ!?」
城に戻るなり開口一番態度が逆転した王子を見て、大臣は不思議に首を傾げました…………。