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ゼリー

作者: AI子

風邪ひいた。

身体がだるいし、喉はイガイガするし、鼻水が止まらん。午前中で早退してうちに帰ったはいいものの、家族みんな居ないし。


今日は昨日までと違って暖かく、着込んでいったセーターの断熱作用でシャツが汗ばんだ。ただでさえ体温高くなってんのに気持ち悪いことこの上ない。

帰りに寄ったコンビニで買った飲み物とゼリーを出す。小さい時からの癖で、風邪をひいたらゼリーを食べていた。味は巨峰一択。でも寄ったコンビニには巨峰が無かったので、代わりにフルーツミックスにした。これなら一粒は入っている。本当ならもっと食べたい。


シャワーを浴びたかったが、これ以上熱が上がっても困るので身体をタオルで拭いてからスウェットに着替えた。体温計を探して、脇に挟む。ピピッと音が鳴った後に38.5℃とデジタル表示された。ああ、間違いなく風邪だ。インフルエンザの可能性も考えたが、この時期にはいつも風邪になる。よって、風邪。

買い置きしてある市販の風邪薬をポ○リで飲んでからゼリーを食べようかと思ったが、いかんせんフラフラして食欲よりも睡眠欲が勝ってしまった。

あとで食べよう、とそのままベットに入って寝た。



風邪だからか眠りが浅い。ウトウトとしか出来ない。ちゃんと寝たいのに。今何時だ?

「ヨッス、才川ー。起きてる?」

いきなり大きな声で起こされた。この声の主は、

「今日部活いなかったから才川と同じクラスのやつに聞いて風邪だって言うじゃん。LINE送っても既読になんないし、あれ、やばいんじゃね?どっかでぶっ倒れてんじゃね?って考えちゃってさー。いてもたってもいられなかったから、お見舞いに来たぞ!」

病人相手によく喋る。相手がなんだろうと御構い無しなところが吉井らしい。


「病人にそんな大きな声で喋んなよ。」

「まじ?そんなに悪いのかよ?」

「ただの風邪だよ。それよかどうやって入った?」

「ベル押して、お前の母ちゃんに『才川君の様子が気になって来ましたー。』って言ったら、『え、あの子帰ってきてるの?あらやだ、靴もあるわ。おばさん今帰ってきたところだから。ちょっと様子見てきてくれない?』って言われて今に至る。」

親よりも先に様子見に来るとか、ってか任せるなよ。

「今何時?」

「5時半。」

「え、もうそんなに経ってんのかよ。」

帰ってきたのが1時前だから諸々の用意を省いたとしても4時間ぐらい寝ていたのか。そういえば寝汗かいてる。

「お見舞いの品何がいいかなって考えたんだけど、相手の欲しがるもんが分かんなかったら自分の欲しいものを買うってのが俺の信条だからこれにした。」

そう言って、目の前に差し出されたものは、


「巨峰ゼリー。」

「俺風邪の時いっつもこれ食べるんだ。風邪の時だけの特別な食べ物って感じで。普段は全然食べたいとは思わないのに風邪ひくと食べたくなるんだよな。ちなみに、コンビニで探したんだけど無くってさー、スーパーとか行ってわざわざ探したんだぞ。感謝しろよな。」

だから、病人相手にまくしたてるように喋るなよなって言ったじゃんか。

「ありがと、食べたかったから助かる。」

「お、気に入ってくれた?良かったー。」

表情をコロコロ変えながら喋って、今はニカッと笑っている。

普段は部活でしか声かけないのに。家の住所だって誰かに聞いてくれたんだと思うし。そうまでしてお見舞いに来るって程仲よかったっけ?って思うけど。


今はただただ嬉しい。


ゼリーの件はたまたまで偶然だったのかもしれない。

こんな偶然あるのかって思うけど、じゃあ偶然じゃなければ?


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