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1000字短編

対勇者最強の刺客! 四天王最弱のもふもふ(・ェ・`U)

作者: 百地おもち

 剣と魔法の世界ユグナ。人族と魔族の間に発生した熾烈な戦いは、生命を支え魔法の源となる『魔素』を大量に消費した。


「このまま争い続ければ魔素が枯渇し、ユグナが滅んでしまう。悔しかろうが堪えてくれ」


 魔族たちを諭すのは巨躯・双角の魔王である。武に秀でていながら、人間勢力へ講和を促し、共存の道を模索してきた。

 しかし、人間勢力が採用した、人体へ大量の魔素を注入し強化人間をつくる勇者システムによって、魔王軍は敗北の危機に瀕している。


「なんだ、この光は!」


 突如、魔王城に神気を(まと)う光球が生じた。女神の声が荘厳に響く。


 ──聡明なる魔王よ。この者の助力を得て争いを静めなさい。


 女神が投じた一滴(ひとしずく)の希望。異界の太陽神A(仮)が里子にくれた逸材が、光と共に降臨した。


 □


 半壊した魔王城。四天王の三人が倒れている。勇者カインの圧勝だ。残る一人を倒せば、玉座の間へ続く道が開かれる。


「くくく、勝ったと思うなよ」

「まだ、シバ・ワンコ卿が残っておるわ」

「ワンコ卿は我らの中で最弱。だが、果たして貴様に倒せるかな」


 満身創痍の敗者が嗤う。


 てしてしっ……そんな足音が近付いてきた。油断なく大剣を構えるカイン。ついに、四天王最弱が姿を現した。


「きゅわん!」


 キラキラ輝くつぶらな瞳。くるんと巻いた尻尾。獣のくせに、満面の笑みだと分かる愛らしい顔。ぷりぷりボディを覆う、もふもふの短毛。

 シバ・ワンコ卿は、この人は遊んでくれると信じきった笑顔で駆け寄ってきた。木製円盤の玩具を足元に置き、激しく尻尾を振っている。


「よ、よせ……そんな目で見るな……俺は遊ばない……遊ばないったらぁ!」

「くぅん?」

「降参しないぞ!」

「わふっ!」


 仰向けに寝転ぶワンコ卿。惜しげもなく腹を晒し、朗らかにカインを見上げてくる。ワンコ芸『降参』である。


「ちが……あう、腹ぁ……」

「くくく、貴様にワンコ卿が斬れるかな?」

「勇者もまた人族の犠牲者よ。望めば、ワンコ卿の配下にしてやろう」

「お散歩係に空きがあるぞ」


 カインの脳裏に半生がよぎる。勇者となるべく集められ、過酷な訓練と魔素注入に耐えた孤児たち。全ては強制されたものだった。


 カインの手から大剣が落ちる。


 彼は知らなかったが、神の寵愛を受けたワンコ卿は、全攻撃反射の恩恵持ちだ。斬りかかっていたら危なかった。


「俺は、勇者より、お散歩係がいい」


 勇者カインは静かに泣いた。四天王最弱に屈し、癒される勇者たちの、最初の一人であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱもふもふは最強ですねw にしても女神様は神様と称するだけあって何が最善か分かってますねw
[一言] おれは勇者をやめるぞ! 人間共ーーーッ!!
[一言] 私も散歩係になりたい…
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