最初の嘘、最期の言葉
「私は君に 絶対に嘘はつかないよ!」
大好きな彼女が言った台詞。
今になって思えば、脈絡も何もない奇妙な発言だ。
「自信満々なとこ悪いけどさ、
つかないんじゃなくて、つけないんだろ?
エイプリルフールなんかも、すぐばれてるじゃん。」
「ん~~!それもそうなんだけどね!?
私は君に つこうとすること自体したくないんだよ!
そういう、不誠実なことはしたくないの!」
エイプリルフールの嘘…にもなってない嘘はどうなんだ?と思いつつ、なんだか必死になっている彼女が微笑ましくて
「はいはい。」
と、適当にあしらったのだ。
今思えば おかしかったんだ。
なぜあの時、異変に気づかなかった。
あの時何か言っていれば、今が変わったんじゃないのか。
「嘘はつかないんじゃ…なかったのかよ………」
___嘘ついて、ごめんなさい。
___愛していました。
彼女が遺した手紙には、短く、それだけが書かれていた。
彼女は不治の病だったのだと、後に医者から聞いた。