勇者が現れた。村人Aはどうする?
大分前に書いて没にして居たやつを、完結だけさせました。
俺は白いドラゴンに背を預けて考える。
ちなみにこの白いドラゴンは《天命星龍ハクラ・カグラ》だ。
冒険者からは最強の龍として恐れられている。
そんなドラゴンになぜ背を預けてるのか?
答えは単純。友達だから。
数年前にハクラと同等の邪龍ラスナ・クーカに襲われていた所を助けた時からの友達だ。
考えているのは幼馴染と勇者のこと。
俺の幼馴染は勇者が持っている金に釣られてホイホイついて行った。
あの勇者は一度、ハクラに挑み敗北している。
ハクラの気迫に押され、小の方も大の方も漏らして逃げ帰ったらしい。
まぁ、俺は既に幼馴染の事はどうでも良い。
いや、裏切った事に対して、少しばかりキレている。
そして、勇者にも。
その方法を考える。
もういっそのこと神にでもなって世界を手に入れようか?
それも良いが、ハクラがまた一人になってしまう。
ハクラは、周りが恐れている程、恐ろしい奴では無い。
むしろ、人間の方がクズばかりで、同族ながら恐ろしい。
ハクラは優しい奴だ。生き倒れている人間が居れば、回復してから森の入り口まで送る。
ちなみに、ハクラが住んでいるのは、周りを深い森で囲まれた山の洞窟の中だ。
人は滅多に来れないのに、人間はハクラを邪魔に思っているらしい。
愚かだよね。ハクラがいた所で害は無いのに。
人間は自分より強い奴を恐れる。だから、ハクラを邪魔に思っているのだろう。
まぁ、今はそれよりも、勇者の事だ。
勇者は来月には幼馴染と結婚するらしい。
ならいっそのこと結婚式をめちゃくちゃにする?
いや、それだと俺が悪者だ。
「なぁ、ハクラ」
「どうしました?クナシさん?」
「これからどうすれば良いと思う?」
「そうですね。私としては、このままクナシさんと過ごしたいのですがね。」
「俺もそうしたいのは山々なんだが、勇者とあいつをどうにかしたい。」
「なら、私を使って下さい。」
「ハクラを?」
「えぇ」
そう言うと、ハクラは発光して姿が変わり、人間になった。
銀髪を腰まで伸ばし、顔は少し幼さが残っており、目は赤と黒のオッドアイだ。
胸は大き過ぎず小さ過ぎずと言った具合だ。
「なぁ、ハクラ。その姿って動きにくいんじゃねぇの?」
「慣れです!」
「お、おう」
この際、悪も善も関係ない。
とりあえず、やる事は決まった。
後は準備だけだ。
そして、結婚式の当日が来た。
スキルで王都に飛ぶ。
スキル『世界掌握』
世界の全てを掌握する能力。
言わば、神そのものの様な能力だ。
世界の支配者になる事も可能な能力。
しかし、それはしない。
その理由は面白く無いから。
その一言に尽きる。
クナシは、そんな人間なのだ。
飛んだのは王都上空。
ハクラは背中の翼で。クナシは『世界掌握』で空を飛ぶ。
王城では華やかな結婚式が行われている途中だった。
クナシはドス黒い笑みを浮かべて。
「さぁ、終わりを始めよう。」
「えぇ、クナシさん!」
ハクラは満面の笑み、しかし、その表情にも何かドス黒いものを感じられた。
まずクナシとハクラは王城の門の前に降りた。
門の前に居た人達が驚いているが、そんなのはどうでも良い。
どうせ消えるのだから。
王城に入ろうとすると、兵士に止められた。
「邪魔だ。」
クナシは『世界掌握』で兵士の首から上を消す。
そして、ついでに消した王城の門があった場所から王城に入る。
王城に入ると周りの兵士達も止めようと槍や剣を持って走ってくる。
其奴らも、王城の門の前に居た兵士と同じ運命を辿った。
勇者と王が此方を驚愕の表情で見ている。
「やぁ、勇者。祝福に来て上げたよ。」
「な、貴様は!しかし、今の力は何だ!?」
「君が知る必要は無い。まぁ、冥土の見上げに教えてあげよう。」
そう言い『世界掌握』で王都から王城以外の全てを消す。
騒がしかった周りが一瞬で静かになる。
「な、何をしたんだ?」
王が聞いてくる。
「何って、消しただけだよ。王都を。」
「な、何を言って…」
理解出来ないか…
クナシは邪魔な建物を消して王都のあった場所を見せる。
そこに広がるのは、だだっ広い荒野だけだ。
「な……」
王と勇者が驚きの表情を浮かべている。
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!」
勇者が聖剣を手に向かってくる。
それを『世界掌握』で見えなくして居た【神剣 グラム】で叩き折る。
「最期に能力の名前だけでも教えてやろう。俺の能力の名は『世界掌握』だ。」
「『世界掌握』……?」
「何を敵に回したか分かったか?」
そう言うと後ろにいたハクラが元の姿に戻る。
「あ、あぁっ…」
勇者の顔が絶望に染まる。
「ふふふ、はぁははははははは!そうだ、その顔が見たかったのだ!」
「止めろ!!」
「あ?五月蝿えな。」
クナシはグラムを振り下ろす。
その瞬間、王と王城が真っ二つに切り裂かれる。
崩れゆく王と王城を見ながら、勇者をハクラが亡き者にする。
そして、最後に残ったのは、俺たちと、勇者と王の亡骸と崩れた王城、そして、幼馴染だった奴。
「さぁてさてさてさて。君はどうするのかな?」
「えっ…」
絶望に染まった顔で此方を見る女。
「助…けて…ください…」
泣きながら懇願する女を見て笑いを堪えながら、
「良いだろう。しかし、次に俺の目の前に姿を現した時がお前の最期だ。」
そう言い、『世界掌握』で世界の最果てに女を飛ばす。
それからハクラを見て、
「ハクラ、ありがとう。」
「いえ、私も良いものを見せて貰いました。それで、これからどうするのですか?」
「うーん、そうだな…よし。」
クナシは一息ついたから、能力を発動する。
『世界掌握』で王城と勇者達の亡骸を消し、『叡智の書』の補助を受けながら、『創造スル者』を使い、一から街を創り始める。
「出来た。」
「街、ですか?」
「あぁ、俺が王でお前が王妃だ。」
「それって!」
「あぁ、結婚しよう、ハクラ」
「はい!喜んで!いえ、むしろ、結婚して下さい!」
こうして、俺とハクラは結ばれた。
後に、この街は繁栄するのだが、それはまた別のお話。
追記なのだが、俺はあの後、龍へと進化した。
そして、ハクラと子を成すことが出来た。
その子供たちは、全員が生まれながらの龍王。
俺たちの間に出来た子らは、各様々な伝説を後世に残したとさ。
〜END〜
ある意味バッドエンドに思える。




