第八話 貧弱魔法使いの勇戦戦争
そう、俺がまだ試していない魔法。
時空間魔法!
そう、この魔法は初代魔王アーゼルが使っていたというチート魔法だ。
魔法を唱えると黒い小さな穴が現れ、みるみる大きくなっていく。時空間魔法は確か、敵を時空間に送ってしまう魔法。俺が手を動かすとその方向に穴が素早く動く。これは便利な魔法だ。どんどん騎士たちを吸い込まれていっていいる。
ついでにあの化け物も一緒に吸い込むことができた。しかし、アーゼルしか使えないという時空間魔法が使えたのは奇跡だ。発動できなかった場合、俺は確実に死んでいるだろう。
味方の戦士たちは驚いた様子でこちらを見て拍手喝采の中、鉄の門が開いた。
皆、俺に感謝の言葉を送ってくれた。しかし、時空間魔法の威力が強すぎたかもしれないが、門を通り過ぎたあたりで俺は意識を失ってしまった。
ウールタウン――病院
これでウールタウンの病院は二回目だ。すっかり夜になってしまっているが、俺の周りには数十名の男たちがいる。多分、俺と一緒に戦った戦士たちだろう。
「意識が戻ったぞ! よかった」
一人の戦士が大きな声を出して喜んだ。それに続いて他の戦士たちも笑っている。
「そういえば、国王様からお前さんへの手紙が届いてるぜ!」
そう言われ封筒の中を開け、手紙を取り出した。
勇敢な魔法使いへ
あなたは魔王軍からこの街を守っていただいた。本当にありがとう。是非、あなたと会って話をしたい。それに私ができることであれば、一つ願いを叶えよう。私はウールタウンの中央にある青いレンガの建物でいるのでいつでも来てくれ。
「おっ、国王様からの手紙はどうだったか?」
「何か一つ願いを叶えてくれるらしい……」
「いいじゃないか! いっぱい金もらえよ」
「いや、そんなことはしないさ」
「じゃあ何を叶えてもらうんだ?」
周りの戦士たちはみんなテンションが高い。ただ、病院の中でうるさくするのはどうかと思うが。
「この街を救ってもらうさ」
「えっ⁉︎」
戦士たちは驚いた顔でこちらを見た。
「どうゆうことだよ!」
「まぁ、やってみせるさ」
俺は急いで病院を出て、戦士たちと別れる。そしてウールタウンの中央にある青いレンガの建物に向かった。
夜なので、紺色になっていたが確かに青いレンガの建物だ。俺はノックをして中に入る。
「失礼します!」
「いらっしゃい、魔法使い」
国王様は紅茶を飲みながら机に座っていたが、俺もその机に座ることになった。
「本日はウールタウンを守ってくれてありがとう。君は魔法使いなのかな?」
「そうです、名前はマゼルといいます」
「そうか、さっそく本題に入るが、私ができることで一つ願いを叶えてあげよう。金もアイテムも十分用意してあるから、なんでも言ってくれ」
「この街はホームレスの方がたくさんいることはご存知でしょうか?」
「ああ、それがなんだ?」
「この街で働ける人を増やしてください、お願いします!」
国王様は困った様子であった。何か考え事をしているように。
「しかし、金が足りない……」
「用意している金とアイテムを全て使い、新しく起業してはどうでしょうか」
「しかし……」
「ここに三十万円があります。これも使ってください!」
「わかった。この金で起業してみるよ。これで働ける人も増える、ありがとうマゼル。けれども君の本当の願いなのか?」
「はい!」
このあと少し国王様と世間話をし、ここを出ることにした。
でも俺の所持金二千円しかないが、これで生活できるのか心配でたまらなかったが、今日は千円で一泊することができた。
普通なら三千円かかるがウールタウンを救ってくれたということで安くしてもらえることになった。
明日は、ここから三十分歩けば魔法使いの街があるという情報を国王様から聞いたので行ってみるとするか……。そう思いながら、俺は青いペンダントを見つめる。