第八十六話 仲間と勇戦戦争
「いくぞ、お前ら!」
フランコさんの掛け声と共に、ザゼル、ラズラ、そしてフランコさんが一斉に動き出した。
「そんな人数で私を倒せるはずはない! さあ、さっさと消えてもらおう」
そう言いながらも、少し不満げな勇者は俺の顔を踏みつけたままだった。
フランコさんは魔法書を構え直す。
「爆炎銃!」
指はきっちりと自分の方向に向けていたフランコさんの爆炎銃は反射され、勇者に向かって飛んでいった。
勇者はとっさの判断で避けた。
勇者が避けてくれたお陰で俺の頭から勇者の足が離れた。
その間に俺は最後の力を振り絞って、立ち上がった。
しかし、フランコさんは攻撃を止める気配はない。
「爆炎銃!」
フランコさんはもう一度勇者を狙うが、避けられて当たらない。
それを見据えたように、ザゼルが台風剣で攻撃した。
なぜか、ザゼルが台風剣を発動した先は天井だった。
勿論、勇者の光る剣の効果で魔法は反射される。
たくさんの光る剣が、床に突き刺さっていく。
これが意味あるのかどうかと思いきや、床に刺さった光る剣の上を飛んでいき、勇者に近づいていった。
「破壊攻撃!」
ラズラの拳が鉄のようなものに変わり、勇者に向かって殴りにいった。
「そんなもの効くか! 盾魔法!」
勇者が盾魔法で守ろうとしたが、透明な魔法の結界は現れることすらなかった。
なぜなら、勇者の剣の効果は自分にも及ぶからだ。
ついに勇者に攻撃が通った。
ラズラの拳が勇者の顔に思いっきり当たったのだ。
「うっ!」
勇者の口から大量の血が吐き出た。
その攻撃によって、勇者が砂埃をあげて吹き飛ばされた。
「大丈夫ですか、勇者様!」
あの例の四人の女が勇者に駆け寄った。
斧使いはなぜか泣いているし、短剣使いは天井に向かってなにか叫ぶわ、弓使いは勇者見てないし、あげくには、槍使いは勇者に近づいたが、逃げていっていた。
もうわけがわからない。
一方でラズラはこんなに強い。
怒った顔で勇者に殴りかかった姿はまるで、どこかのヒーローのようだった。
「よしっ!」
ラズラはぐっと手を握りしめ、ガッツポーズで俺を見つめた。
先ほどの怒った顔ではなく、顔はとても優しい顔をしていた。
俺はフラフラな状態だった。
立っているのも辛くて、この砂まみれな床でも寝ていたいものだった。
「マゼル!」
ホッとしたラズラの笑顔が俺の気持ちを少し楽にさせた。
こんな笑顔今まで見たことがないんじゃないかってくらいに。
すると、勇者の剣の輝きがどんどん無くなっていった。
もう、鉄のような灰色の剣に変わり、この剣は本当に先ほどの勇者の剣だったのか?と思うぐらいに黒ずんでいた。
「私、マゼルの顔を見ることができて、本当に嬉しいよ……!」
ラズラのその涙はとても透明だった。




