第八十四話 毒と勇戦戦争
頭の中が本当に真っ白だ。
俺はさっぱり何が起こったのかわからなかった。
もう俺の体力が残っていなかったのだろうか。
俺の意識はなんとかすぐに取り戻したが、なんだか頭がクラクラしてきた。
ぼんやりと勇者の姿が歪んで見えた。
そして、どんどん俺の力が抜けてくる。
自分自身の足で立ち上がれなくなくなった。
すると、勇者は倒れた俺の顔を黒い靴で踏みしめた。
「マゼル、お前は裏切られたんだよ!」
螺旋階段があった方から声が聞こえた。
俺が振り返るとそこにはシータの姿があった。
「君は僕に騙されたんだよ。マゼル」
「シータ……!」
まさかシータの攻撃だとは思いもしなかった。
「この魔法、意識を失わせる協力な毒を浴びせる魔法なんだけど、やっぱりマゼルは。意識を失っていないなんて。
でも、この毒はマゼルの体力をどんどん蝕んでいくからね」
「なんで……!」
「えっ? 僕は君の仲間なんかじゃないよ」
すると、勇者は思わず笑みをこぼした。
勇者の顔は勝ち誇ったような顔だった。
しかし、俺は信じれなかった。
まさかシータが勇者の仲間だったとは……。
確かに俺の背中には白い剣みたいなものが刺さっていた。
痛みは全く感じなかった。
力が入らない。ただそれだけだった。
「さあって、どうやってこの魔王を痛めつけようか」
勇者の憎たらしい声は、俺の心を真っ黒にさせた。
なんだか、モヤモヤするこの気持ち。
その締め付けられたチェーンみたいなものが俺の心を苦しめる。
俺は裏切られたこの気持ちを何処にも吐き出す場所もない。
ましては今、俺は追い詰められている状況だ。
俺は裏切ったシータのことをまだ信じているからダメなんだろうか。
「僕は魔王軍総本部に何人か送り込んだので、もう終わりだね。
マゼル、正義が必ず勝つんだよ。君みたいな魔王は居なくなるべきなんだ」
「や、やめろ!」
「辞めれないね。これでいいんでしょ? 勇者様」
「ああ、完璧だ! ありがとう、シータ。
やっと終わったよ。君の仲間も可哀想だ。
さてと、仲間の死に様を黙って見てるんだな!」
「どっちが正義かって、お前らが正義なのかよ……」
「はぁ!? 勇者に向かってそんな口答えするな!」
「俺は、俺はまだ諦められないんだよ……!」
俺は血を口から吐き出しながら、必死に立ち上がろうとした。
しかし、勇者に頭を踏みつけられた俺は立ち上がることは不可能だった。
でも、何かできるはずだ。
そう思いながら手をぐっと握りしめた。




