第七話 ウールタウンの勇戦戦争
俺はまたウールタウンに戻ることにした。今度は金が十分あるため、戦うための装備やアイテムをいろいろ買えるだろうと思っていた。
けれどもウールタウンはそんなに甘いものではなかった。ポーションはフランコさんの店の値段の三倍、装備品は品薄状態。
お店の人が話をしてくれたが、勇戦戦争によってウールタウンからさまざまなものが勇者軍に送られているため、ウールタウンのほとんどの店が品薄状態であるらしい。そのため、商品の需要が高まり物価が上昇している。また貧富の差が激しく、安い賃金で勇者軍に入る人も多い。しかしながら、魔王軍に殺される人が半数を占めているため、勇者軍に入る人は恐怖におびえながら戦っているという。
なので勇者軍に入ることは容易なのである。黒いフードの男がもし魔王軍の仲間だった場合、話が早い。勇者軍に黒いフードの男の行方を追ってもらい、殺して貰えばいい。
そう思って俺は勇者軍に加入するための手続きをする場所を探す。俺は町の人たちの情報により、古い黄緑色の小屋に入ることにした。
「いらっしゃいませ! 」
「勇者軍に加入させていただけませんか?」
綺麗なお姉さんは俺に加入するための手続きをしてくれた。しかし俺に渡されたのは、二千円とボロボロな魔法書だ。魔法書はフランコさんの店でも見たことがあるがこんなに汚れているものは初めて見た。
「では、これから勇者軍に加入されたかたに連絡いたします! これからウールタウンに魔王軍が来る可能性がありますので防衛の準備をお願いします」
まさかの加入した直前に魔王軍と戦うのは流石に危険だ。俺は異世界に来てから一つも呪文を唱えてない。
しかもこんな汚れた魔法書で魔法を唱えることはできるのかがとても心配だ。味方は戦士だらけ、魔法使いは見つけられなかった。ざっと合わせて百人ぐらいだろう。
そういえばウールタウンの店には魔法書が売ってなかったな。ここの人たちはみんな戦士なのか。とりあえず魔法のワザを味方の戦士たちに教えてもらおうとするが、口を揃えて知らないと答える。
仕方がない。いま知っているワザだけでも試してみるか。よし、悪魔暴走!
何も起きかった。もしかしたら上級職しか使えないのかもしれない。というかこれは俺を呪っているので危ない魔法なのかもしれない。
「では、皆さまウールタウンの防衛に向かいますのでついて来てください」
出発が早かった。もっと遅ければいろんな魔法を試していたのに。
俺は列の最後尾に並んでた。魔法は遠距離でも使えそうなので後ろにいたほうがいいだろう。すると俺が門を出ると鉄の門が大きな音を立てて閉まった。
今はまだ一つも魔法を使うことができないが、様子を見ながら魔法を使おうと思ったがそんな暇はなかった。前から黒い騎士たちが見える。騎士は戦士の上級職であり圧倒的にこちらが不利。しかも後ろにはでかい化け物がいる。最低でも五メートルを超えるだろう。
味方の戦士たちはみんなおどおどしていて動き出そうとしない。そらそうだ、作戦も何も考えてないんだから。とりあえず魔法を唱えてみるか。爆炎銃!
爆炎銃はフランコさんが俺を助けようとしたワザだ。俺の指から火をまとった銃が飛び出し魔王軍の騎士に当たった。
当たったまでが良かったのだが、全く攻撃が通用しない。魔力が足りないのか。それよりもどんどん騎士たちがこちらに向かって来る。
俺が知っているワザは全て試した。ここで死ぬのは嫌だ。
すると騎士たちが突撃してくる。俺の攻撃が火種になったのかもしれない。
味方の戦士たちはみんな下がっていき、どんどん門に近づく。
俺は後ろから爆炎銃を放ちまくったが意味はない。どうすればいいんだ、まだ試していない魔法……!
そういえば一つだけあった。どうせ出せないのはわかっているが、試さないで死ぬよりマシだ。
まぁ、ここで出せなかったら死ぬことは覚悟しないとな……。そう思いながら騎士たちがギリギリこちらにくるのを待っていた。