第七十三話 ゲームと勇戦戦争
雨で泥まみれになってしまった俺たちは、露天風呂に入ることにした。
俺は露天風呂に先に入ることにした。
泥だらけになった服を脱いで、俺は掛け湯をしてゆっくり湯船に浸かる。
俺はホッとした顔で外を見ていた。
もう虹は消滅しており、もう夜だった。
星空はとても綺麗だと思ったが、この異世界はザイザンドロールケッキー社が作ったと思うと少し残念だ。
この星空は作られた星空。それなのに俺はここで生きている。
もし俺を殺したいのならばザイザンドロールケッキー社が直接俺を消すはずだ。
消さないということならば、考えられることは二つ。
一つ目は、ザイザンドロールケッキー社と勇者軍が全く関わっていないということ。
二つ目は、俺がある理由で消さないということ。
けれどもこのゲームはとても不思議だ。
戦いに敗れてゲームオーバーになればどこかに戻る場所が存在しない。
死んだらそこで終わりなのだとこの異世界では考えられている。
じゃあ戦わなければいいんじゃないのか?
そうだ、そんな危険と隣り合わせで戦う必要はあるのか?
俺は戦うことを嫌った。
痛みもちゃんと感じるし、俺が思うように身体を動かすことができる。
それをテストプレイと言えるのだろうか。
やはりこの異世界はおかしい。
俺はどんどん不安になった。
このゲームが本当になにを目的として作られたか理解できない。
そう考えているとフランコさんが露天風呂の入り口から入ってきた。
「おっ、マゼル。お待たせ」
フランコさんは、顔に泥を塗ったように汚れていた。
フランコさんがお湯で顔を洗うと、いつものフランコさんの顔が現れた。
スッキリとした顔のフランコさんは俺の隣に入ってきた。
「どうした? 暗い顔をして……」
「すみません、考え事をしていて」
フランコさんはなんでも俺のことを知っているようだった。
付き合いの期間はとても短いのに、こんなに俺のことを知っているのはフランコさんぐらいなのではないのか。
すると、続けざまにブルコビルが風呂に入ってきた。
「マゼル様、フランコ様。もう入ってらっしゃたんですね」
するとブルコビルも俺の横に入る。
「ブルコビルさん、一ついいですか?」
「なんでしょうか?」
「本当に俺は戦う必要はあるのでしょうか?」
「もちろんです! 人々を救うために頑張っておられているのですから」
ブルコビルは自信に満ち溢れた顔でこちらを見る。
「いえ、人々が戦う意味って……」
「私もそう思いますよ。でも、アシュコットが嘘の情報を流しているせいでみんなが戦う。そして大多数の人はそれを知らないのでしょうね」
「嘘の情報って具体的にどんなものなんですか?」
「マゼル様には伝えたくはないのですが、伝えておくほうがいいですね。
魔王は勇者軍の土地を奪ってくる、魔王を倒せばこの異世界のリーダーになれる……などですね」
俺は改めてアシュコットが悪い奴かと知った。




