第六十九話 二人の男の勇戦戦争(中編)
短剣使いはまだ動けることを俺は知らなかった。
爆炎銃を確実に足に当てたのに。
短剣使いは右腕を伸ばすが、フランコさんには当たらなかった。
なぜなら俺は盾魔法を使用したからだ。
爆炎銃が反射されるなら盾魔法も反射される。
なぜなら俺が大風剣を守る為に盾魔法を使用したとき、反射されて勇者にうっすら透明の霧のようなものがかかっていたのが見えたからだ。
霧の正体はすなわち俺が使用した盾魔法の魔法の結界。
ならばフランコさんに盾魔法を発動するとフランコさんは守られる。そう思った。
その考えは見事に的中しており、フランコさんの周りに魔法の結界が張られた。
短剣使いは後ろに引くが、俺はこの瞬間を見逃さなかった。
人差し指をまたこちらに向けて爆炎銃を発動すると、短剣使いの腹に当たって倒れた。
俺は笑みを浮かべていたが、そんな暇などなかった。
斧使いと槍使いがまだ残っている。
しかも、斧使いはまだ一歩も動いていない。
なにかを狙っているのか?
しかし、斧使いの顔はとても冷静だった。
勇者が倒れているというのに、まだこちらを睨んでいる。
斧使いの表情からして、動かないことはなさそうなのだが。
するとやはり槍使いがこちらに向かってくる。
また、フランコさんが狙われた。
よほど、勇者が倒されたことに対して焦りがあるのだろう。
するとどんどん槍使いは距離を詰めてきた。
「マゼル、槍使いは俺に任せろ。それよりもあの斧使い、なにか狙ってるぞ!」
フランコさんもわかっていた。斧使いがなにかを狙っていることを。
俺は槍使いをフランコさんに任し、斧使いに向かって走った。
フランコさんは槍使いが顔を狙っていたので少し姿勢を下げてから、横蹴りを腹にくらわせた。
その協力な横蹴りは槍使いをふっとばしたのである。
俺はまたまた自分に向かって爆炎銃を発動する。
狙う先はもちろん斧使いだ。
しかし突然、斧使いが謎のオーラを放つ。
とても赤くて俺に対して憎しみを持っているかのように。
「精霊魔法!」
斧使いが斧を上に掲げると、地面が揺れた。
まるで震度七くらいの地震のようだった。
斧は赤色に光り輝く。俺は立っていられずにしゃがむしかなかった。
斧使いはこの揺れを余裕で耐えていた。とても不思議だった。
後ろを見るとフランコさんもしゃがんでいる。
すると、地面から大きな木が現れた。
木は枯れていて、右と左から木が伸びていった。
そしてその木は大きな赤い目を光らせた。
右と左の伸びた木はうねうねと動く。見ていてとても気持ち悪かった。
そうして俺を攻撃するかと思いきや、大きな木は斧使いを右の木で全身を締めていったのだ。
なぜ、木は斧使いを締めるのか意味不明だった。
自分を犠牲にする魔法なのか?
いや、違う。これは、勇者の剣の反射能力が効いているのであると察した。
本来なら俺を狙って攻撃するはず。自分を犠牲にする魔法なんて聞いたことも見たこともないけど。
だから、斧使いは今自滅している。勇者の剣の能力をわからずに。
「なんでこんなことなるの!」
斧使いは助けてほしそうに叫んでいるが、俺たちは他の仲間を仕留めてしまった。
助けるべきかと悩んだが、ここで殺されてしまっては地球に送ることは不可能である。
だから俺は斧使いを助ける必要があった。
たとえ一人でも失いたくないんだ。
「誰か……!」
斧使いは苦しそうに声をあげている。俺はそれを見ていられなかった。
俺は殺したくない。もう誰も。だからたとえ一人の人間でも助ける必要がある。
俺は決めたんだ。あの木のお化けと戦う。
そして全員を地球に送るって。




