第六十七話 始まる勇戦戦争
フランコさんは俺に手を差し伸べた。
俺はフランコさんの手を掴んでゆっくり立ち上がる。
虹のポーションのお陰で立っていられるのも楽になった。
シワの深いフランコさんの手はとても暖かい。
俺の手がただ小さいだけかもしれないが、俺の心が暖かくなったのは確かだ。
俺は息を大きく吸った。
目を開けて吸う空気は新鮮だった。
俺はフランコさんの手を離して笑顔でフランコさんを見ると、フランコさんは真剣な表情で勇者たちを見ていた。
「フランコさん……ありがとうございます」
「礼を言うならあいつらを時空間に送ってからにしてくれるかな」
「フランコさん、俺が時空間魔法を使っていること知ってたんですか?」
そうだ、フランコさんは確かに俺が悪魔暴走の呪いがかけられていることは知っているが、俺が魔王になったことは知っているのであろうか気になった。
「ああ、わかってるよマゼル。お前魔王だろ?」
フランコさんの太い声に俺はビビってしまった。
なぜならフランコさんは初代アーゼルと戦ったことがあることを自分は知っているからだ。
「魔王……そうです」
俺は小さくフランコさんの質問に答えると、フランコさんは小さな声で「俺はマゼルのことを敵とは思ってないからな、心配するな」と言ってくれた。
俺は安心できた。俺とフランコさんは仲間だって改めて確認できた。
「マゼル、一ついいことを教えてやろう。アシュコットがずっと悪い奴だと思っていたが、ここまでやるとは正直思っていなかった。俺はこう見ても元勇者軍だ。そして追放された。なぜなら俺がアシュコットの秘密を知っていたから」
「秘密……」
フランコさんは拳を思いっきり握る。
フランコさんの額からは大量の汗が出ていた。
「俺たちが『勇者最強無双』というゲームのテストプレイに利用されていることを知った。それがこの異世界の秘密だ。それを知ったのは俺がマゼルのことを探している間だったが……」
勇者最強無双とはザイザンドロールケッキー社のゲームだ。ここでザゼルの話と完全に一致した。
「ここから抜け出すには、やはり時空間魔法しか無いと……」
「そうだな、マゼルを狙うのもこの異世界のテストプレイヤーをまだ消したくないのだと思う」
そうやって話をしているうちにどんどん勇者が近づいてきた。
俺はもう光る剣に恐怖を覚えなかった。




