第六十六話 正義の勇戦戦争
俺は何か大切なものを取り戻したように気持ちがだいぶ楽になった気がした。
しかし、俺の魔法を反射する厄介な剣があることを忘れてはいけない。
今ふっと気づいたのだが『反射』とは俺の魔法を跳ね返すんだよな。なら攻撃を俺自身に向けたらどうなるんだ?
もしかしたら、相手のほうに攻撃がいくのではないのか?そう思った。
試してみる価値はあった。
このままでは魔法を発動できずに終わる。
敵ははっきり言って何処にいるのか見えない。
しかし、もし俺のほうに攻撃を向けて俺がダメージを受けなかった場合、有効であることはわかる。
俺は人差し指を立てて俺のほうに向ける。
「爆炎銃!」
俺は静かに魔法を唱えると銃声が耳に響く。しかし、俺の爆炎銃は自分には当たっていない。
前方に銃弾が当たったような音が小さく聞こえた。
やはり、反射するから自分を狙えば相手に攻撃を当てられるのだ。
それだったら俺にもまだ勝ち目はある。
しかし、どうやって攻撃が反射されたのかてっきりわからなかった。
音は少し左側で聞こえたくらいだし、それほど距離も飛んでいないはずだ。
すると背後から、誰かが俺の肩を優しくポンポンと叩いてきた。
この大きな手はきっと男の手だ。
俺も目が見えないながらも瞬時に判断した。
「マゼル、大丈夫か?」
この声は……フランコさんだ!
「フランコさん……ですよね?」
俺は目が見えないので本当にフランコさんなのか不安だったので確認してみた。
「ああ、そうだ」
やっぱりフランコさんだ。
そしてフランコさんは俺にガラス製のものを渡してきた。
「これ、何ですか?」
「ポーションだ、形忘れたのか」
「そうですね……」
よくしっかり触ってみるとポーションだった。
俺はポーションの蓋をゆっくりと落とさないように開ける。
そして俺は喉にポーションを流し込んだ。
すると俺の全身がなんだか軽くなってきた。
胸の痛みも目の痛みもなくなり、おまけに目が見えるようになったのだ。
自分も驚くほどの回復速度だ。
目を開けるとそこには顔が赤くなったフランコさんがいた。
顔が赤くなっているのは昨日のお酒のせいだろう。
「どうだ? よくなっただろ?」
「はい!」
「これはな、虹のポーションって言うんだが驚くほどの回復速度。別名幻のポーションと呼ばれるからな」
「そんなの俺に使う必要あったんですか?」
「俺は元アイテム屋の店長だぞ? 気にする必要ないって。それよりもあっただろ、あっち」
フランコさんが指を指した方向は勇者たちだった。
勇者はまだ俺を睨んでいた。
俺の爆炎銃の跡が左側の地面にしっかりと残っていた。
「マゼル、行けるか?」
「もちろんですよ、フランコさん!」
フランコさんが来なかったら、今頃俺は負けていたかもしれない。
俺は自分に自身を持って戦う。そう決めたんだ。




