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マゼルの勇戦戦争  作者: モルモラ
第三章 魔王軍編
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第六十三話 悲しみの勇戦戦争

 俺は目の痛さを我慢しながら耳を頼りに相手の位置を確認するのであった。

 とりあえず「時空間魔法」を発動。

 ゆっくりと手を動かして穴を移動させる。

 時空間魔法の穴は俺の手の動かす方向と同じ方向に動いていく。

 俺にはそれが見えないのだが、俺が時空間に送り込まれていないのは確かだ。


 やはり時空間魔法は敵にしか効かない魔法なので反射されない。

 そうしている間にも矢が何本も胸に刺さる。

「お前にもう勝ち目はない。こちらの姿も見えないんじゃ勝負にならない。さっさと負けを認めろ」

 そんな勇者の声が聞こえるのだが、俺は負けを認めなかった。


 むしろ勇者たちには真実を伝えるしかないのか……。

 この異世界が勇者最強無双というゲームに利用されているということを。

 どうせ勇者は信じないことはわかっているので口には出さなかった。

 しかし、勇者と四人の女たちとの会話はとても楽しそうだった。


 いわば、ゲームでいう「協力プレイ」だもんな。

 そりゃ向こうは楽しいもんだ。

 俺は悪役なのか。こんなことしているのに。

 俺は悪いことした覚えはないし、なりたくてなったわけではない魔王。

 俺はこの異世界に来て、楽しいと思うことは色々あったけれど、それよりも苦しいことが多すぎた。


 ゲーム作っているザイザンドロールケッキー社の馬鹿げた奴らは俺のようになれ。

 むしろ死ねばいい。

 俺は小学生の頃に何度もいじめにあい、中学生になって異世界転移で地獄の生活。

 毎日、汚れた服で学校登校してた。

 それでも、俺はなんとか学校に行くことができた。


 飲酒運転で交通事故を起こす父親。助手席に乗っていた母親と一緒に死んだ。

 それで誰かを引いてしまったせいで、多額の借金。

 家族は貧乏だったので保険にも入ってなかった。

 それなのに父親は毎日毎日、競馬場に足を運んで金を使った。父親は当たらないことは当たり前ことだった。


 母親はなんとか俺と妹を学校に行かせるために毎日働いてくれていた。

 朝早くから夜遅くまで。

 なので俺は毎日、家事を全部やっていた。

 妹にはこんな辛い思いをしてもらいたくない気持ちがあったからだ。

 妹はおかげさまで友達が少なからずいた。

 友達が一人もいない俺にとって「遊びに行ってくるね!」という妹の声を聞くことが一番の幸せだった。


 そんなある日、妹が遊びに行っていた。

 俺はいつものように洗濯物を干す。

 サビきった鉄製のハンガーが俺の爪に引っかかる。


 夜、時計が七時を回る。しかし妹は帰ってこなかった。

 いつもなら六時には帰ってくるはずの妹。

 俺は妹の赤いランドセルを見つめる。


 夜八時。

 まだ妹は帰ってこない。

 そこに一通の電話が。

「両親が交通事故で死んだ」という内容だった。

 俺はショックで倒れこんだ。泣いた。信じられなかった。


 俺は妹が帰ってきてないことのほうが心配になってきた。もしかして死んだんじゃないんじゃ……。と。

 泣きながら走った。夜の中走った。走りまくった。

 両親は死んだ。妹は帰ってこない。

 怖くてたまらなかった。


 すると俺は妹を見つけられないまま警察に出会う。

 俺は警察に助けを求めた。

「すみません! 妹見ませんでしたか?」

「どうしたんだい?」

「妹が帰ってなくて……」

「じゃあ、妹の年齢、名前、服装を教えてくれる?」

「妹は……」

 俺はこのあと妹の情報を伝え、パトカーに乗せられた。


「夜遅いから危ないよ?」

 おじさんが柔らかい表情でこちらを見る。

「それよりも妹が……」

「おっちゃんが探してやるから家に帰るんだ。わかった?」

「わかりました……」

 俺は渋々パトカーで家まで運ばれる。

 俺が急いでいたせいか、家の鍵を閉め忘れていた。

 そしてその日一人、家の中で泣いていた。


 こうして俺は多額の借金を背負い、妹は行方不明のまま家を売ることになった。

 そこから俺のホームレス生活が始まった。

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