第六十二話 主人公の勇戦戦争
そう、俺の目の前で不思議なことが起こったのである。
何度も大風剣を使ったが、なぜか剣先が俺に向かってくるのであった。
大風剣を使用していた俺はとっさに盾魔法を使用する。
しかし、あまりにも大風剣を使いすぎたせいでもう結界が破れそうだ。
俺の必死に耐える姿に勇者は笑う。
「最高だなぁ、お前が勝つなんて絶対にできやしない。なぜならこの光り輝く剣は魔法を反射できる能力があってな。それでこのお嬢ちゃんの魔法で仲間も自分も巻き込んだってわけさ」
そうか、ラズラやブルコビルはやられたのではなく、自滅した……。
魔法が反射される。
ということは今使っている盾魔法も反射されるのか……。
俺のその予想は当たっていた。いつのまにか俺の目の前にあった結界が消え去る。
俺の全身に剣がぶっ刺さった。
まるで俺の全身に電撃が走るように。
全身から血が大量に出ていく。
俺の目は剣が刺さって見えなくなった。
暗い世界に飲み込まれた俺は恐怖で立ち上がることもできない。
普通の人間なら死んでいるが、俺は不死の力のおかげでなんとか生き続けられている。
けれども俺の勝ち目はもうなくなった。
目が見えないので相手がどこにいるのかわからない。
耳だけで相手の位置を判断するしかないのだ。
でも一つ勇者は俺が勝つためのヒントをくれた。
あの光り輝く剣が魔法を反射する能力があって、勇者自体にはそのような特殊能力はない。
ならあの光り輝く剣を取って仕舞えばいい。
それしか俺に勝ち目はないのだ。
それかもう一つ俺に勝つ方法がある。時空間魔法だ。
時空間魔法はあくまで「敵を時空間に送れる」という魔法。
ならば仮に反射されても俺は敵ではない。だとすれば俺を時空間に送り込むことは不可能である。
俺はうつ伏せになったままこんなことを必死に考えていたのだ。
それなのに勇者は……。
「これで魔王はもう終わりだ!」
「流石です! 勇者さん!」
女はハキハキした声で話していた。
勇者はチート武器があるだけで流石と言っていいのか?
俺は誰が喋っているのかはわからない。しかし、男の声だけは確実に勇者だと理解できている。
俺にはもう仲間がいない。
必死に耐え抜くしかないのか?
あっちはチート武器を使う勇者。それと四人の女。響く笑い声。
一つお前らに言いたい。
「俺は遊びでやってるんじゃないんだよ……」と。




