第六十話 馬鹿勇者たちとの勇戦戦争
俺は手を弓使いに向ける。
片手にずぶ濡れになった魔法書を構えた。
「爆炎銃!」
そうさ、相手が弓使いなら俺が遠距離でも使える魔法を使えばいい。
俺は何発も火をまとった銃を撃っていった。
弓使いはすぐさま岩陰に隠れる。
しかし、弓使いよりももっと厄介な奴がいたことに俺は気づかなかった。
短剣使いは足が速い。
武器が短剣だからか移動が速いのだ。
しかし、それよりもブルコビルが強かった。
大きく斧を振り回していると思いきや、確実に敵を狙って攻撃していた。
しかし、短剣使いは華麗にかわす。
一方で馬鹿勇者が刃こぼれしている剣をなぜ構えているのが不思議だった。
ブルコビルはどんどん俺たちから離れていく。
そんなに離れてしまっては、ブルコビルはきっと殺される。
「ブルコビル! 戻れ!」
大声で俺は叫ぶが、言うことを聞かない。
それよりも、まだ弓使いを倒せていない。
俺は爆炎銃を使い続けているが、距離が遠いせいか中々当たらない。
どんどん近づいてくる馬鹿勇者たち。
俺は敵を弱らせてから時空間魔法を使って送りつけるという作戦だったが、いっそのこと全員時空間魔法の穴に吸い込んでしまおうか。
「時空間魔法!」
俺は弓使いを狙うのをやめ、目の前に黒い穴を開けた。
すると勇者たちは後ろに下がる。
ただ、勇者は俺のほうに一人でジャンプして飛び込んできた。穴は大きいというのに。
本当に馬鹿だと思ったが、想像以上に脚力があり時空間魔法の穴を通り越してきた。
そして剣を振りかぶる。
このままでは刃こぼれした剣といっても、俺に相当なダメージが残る。
俺は避ける暇もなかった。
「盾魔法!」
俺の目の前に白い結界が張られた。
結界は馬鹿勇者を跳ね飛ばした。
「間に合ってよかった……」
発動したのはラズラだ。ナイスタイミングだった。
「今だ!」
俺はとっさに爆炎銃を発動した。
狙った先は勇者でなく短剣使いの足元だ。
見事に的中して、足からは血が流れる。
女性だから可哀想だったが、今はそんなところではない。
俺の使命はこの異世界を救うことだ。
「よくも、やったな……」
勇者の顔つきが変わる。吹き飛ばされたことが腹が立ったのだろうか。いや、違う。
短剣使いの足元に爆炎銃を当てたからだ。
「許さないぞ、魔王!」
刃こぼれしていた剣が光り輝き始めた。




