第四十五話 救世主の勇戦戦争
ラズラが……死ぬ……!
なんでラズラが殺されなければならないのだ。
俺はどうなってもいいって言ったではないか。
下手に行動すれば、ラズラが殺されるのは間違いない。仲間……そんなもの誰もいない。
ラズラが死んだら、俺がこの異世界で生きていく理由がなくなってしまう。
せっかくの友達なのに!
森の奥から銃声。
銃弾は火をまとっている。これは、間違いなく爆炎銃だ。
魔法書がない俺が発動しているわけもなくただ俺は森の奥をじっと見つめた。
アシュコットも森の奥をじっと見ていた。
アシュコットの指示により森の中に忍者たちが颯爽と入っていき、暗闇の中に消えていった。
銃声は激しくなる一方でアシュコットの額から汗が出ていた。
俺は今の状況では逃げることはできない。足についている重りがあって走ることさえできないのである。
「爆炎銃!」
この、どこか聞き覚えのある男の声。
暗闇から出てきたのは……
フランコさんだ!
「やっと会えたな、マゼル!」
体の筋肉がすごい、いつものフランコさんだ。
フランコさんは黒いリュックを背負っているが、汗だくだ。
「か、かかれ!」
アシュコットの震えたような声が響き渡る。
勇者軍のバッチをつけた者たちが一斉にフランコさんを攻め始めた。
「豪炎銃!」
フランコさんの胸から大量の銃が飛び出し、敵にどんどん当たっていく。
豪炎銃という強力な魔法はあっという間に勇者軍を全滅させた。
「アシュコット、俺はこんなことする人だと思ってなかったけどなあ」
フランコさんは笑いながらアシュコットを見ていた。
「流石フランコ、やはり魔王アーゼルと互角に戦ってきただけあるな」
余裕があるフランコさんに対して、アシュコットは何かフランコさんがここにいることを怖がっているような顔をしていた。
やっとフランコさんと出会えたことがとても嬉しくて、思わず俺は声を上げてしまった。
フランコさんは素早く俺とラズラを担ぎ上げた。
重りがついている俺を全く重たいと感じないくらい楽に持ち上げたのである。
「フ、フランコさん!」
「話は後だ。早く逃げるぞ!」
フランコさんは森の方向に逃げようとしたが、忍者たちが追ってくる。
忍者たちはとても足が速く、このままでは追いつかれる。
俺とラズラも魔法で援助できない状況の中、フランコさんは魔法書を口にくわえていた。
「このままでは、追いつかれる!」
ここは森の中、ただでさえ視界が悪いのに忍者たちが黒い服を着ているせいでどこに何人いるのかわからなかった。
しかしながらフランコさんの体力の限界がそろそろ終わりそうだ。
息切れしているのがよくわかる。
フランコさんは諦めなかった。
俺たちを救うため必死に走っていた。汗だくになりながら。
「もうだめだ!」と思ったそのとき、突然俺たちの目の前に黒い扉が現れた。木製の扉だ。
「入るぞ!」
フランコさんは思いっきり扉を力強く開けた。どうやら扉の鍵はかかっていなかったようだ。
急いでフランコさんは中から鍵を閉め、俺とラズラを床に下ろした。
「ようこそ、いらっしゃいました」
この異世界でこんなところ見たことないような不思議な建物の中に俺たちは入ってしまったようだ。




