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マゼルの勇戦戦争  作者: モルモラ
第二章 勇者軍編
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第三十八話 ラズラの過去の勇戦戦争

 これは私が忍者たちにさらわれた後の話。


「おい、こいつを連れていけ!」

「ま、マゼル……」

 私はマゼルを心配したが、もう手遅れだった。

 私は忍者に両手を縄で縛られ軽トラックの後ろに乗せられた。

 軽トラックは全速力で砂ぼこりをあげながら走りだす。

「マゼルの餌に丁度いいだろう」

 軽トラックの前から聞こえる笑い声。私は怖かった。今から何をされるかと思うと。

 とても長い道のりだった。二つほど山を越え、多分、一時間ほど走ったと思う。いや、もっと長いかもしれない。

 乗っている間、何度も逃げ出すタイミングを探っていたが軽トラックが早すぎて、飛び降りたら死んでしまう。

 でも私はマゼルが心配だった。あの穴はとても深かったような気がするけど大丈夫かなぁ?


「おい、降りろ!」

 やっと軽トラックが止まった。急ブレーキだったので私は膝を打ってしまった。

「痛いなぁ、でもここは……!」

 私はこの場所に見覚えがあった。赤い煉瓦れんが造りの建物。青い大きな旗。ここはそう、勇者軍の本部。

 私が勇者軍の本部を知っているのは一度私は勇者軍から追放されたことがあるからだ。


「こっちに来い、小娘!」

「小娘とか言うな!」

 私は足で私の腕を掴む忍者を蹴り飛ばした。もう私は勇者軍に戻りたくない。

 私は街の方向に向かって走り出した。

 マゼルともう一度会いたい。そう思って。

 手を動かせないが、足は動かせられる。だって足は縛られてなかったから。


 だが、私の体が動かない。何で動かないの!

「ああ、ラズラ。マゼルはもう死んだ」

「だ、誰!」

 この声はどこか聞き覚えがあった。

 のそのそとした足音が聞こえる。どんどん動けない私に近づいてくるのだ。

「知っているだろう? 私のことを」

 私は顔を見た瞬間に誰だかすぐにわかった。


 霊魔法の持ち主、別名――黄金色ゴールデンフラワー。ゴルドラ・アシュコットである。

 彼女が使う霊魔法とは、その名の通り霊の力を使い敵を苦しめていく魔法が多いのが特徴である。


 いつもならアシュコットは安全のため、この異世界の受付をしているはずなのだが。

「ラズラ、私が異世界の入り口にいるとでも?」

 これは本物だ。霊魔法で自分の霊を創り出すことも可能なのだが、私にかけられている霊魔法はとても強い。

「なんで! ここに……」

 私は疑問に思った。まだ勇戦戦争は続いているのに、アシュコットはここにいる。もし魔王によってアシュコットが死んでしまったらこの異世界が滅び、ここにいる全員が死ぬことになる。


「私は不死の力を得たのでこの異世界が滅びることはないのだが、マゼルという男をどうやって料理してあげようか」


「マゼルを……、どうしたの!」

 私の声は建物に響き渡り、途端に砂煙が舞った。

 そしてアシュコットは大きく笑った。

「ほほう、私に向かってそんな態度か。ではお前から料理してやる!」


「や! やめて!」

 アシュコットは私の唇に触れた。

 本当にアシュコットは何をしでかすかわからない。


 霧毒ミストポイズン


 私の口からどんどん霧状のものが入っていく。


「教えてやろう、霧毒ミストポイズンの能力を。お前は三日後、毒によってに死ぬように仕込んでおいた。それまでにマゼルという男をここに連れてこい。それなら霧毒ミストポイズンを解いてやるが」

「嫌、マゼルは私の唯一の友達なの!」


「そうか、ならばスナイパーを三人連れさせておこう。もし、連れてこなかった場合はその場で殺してやるが」


 私はそうしてマッガの街に向かってマゼルを探すことになった。

 魔法教室で寝ていたのは、私を魔法教室のお姉さんが助けてくれたからだ。今頃、お姉さんがいなかったら私は死んでいるだろう。


 私は二日後に死ぬ。

 そのことを全てマゼルに話した。

 マゼルを苦しめようと思ったのも全部嘘。そしてマゼルは暗い顔をしていた。


 マゼルのその顔を見て、もしかして私の話を信じてもらえられていないと思ったが、マゼルの一言は私にとって深く響いた。

「俺はラズラを必ず救ってやるから大丈夫だ。だって俺たち友達だろ?」


 夜の星空はとても輝いていた。

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