第三十六話 変わり果てた者の勇戦戦争
ラズラの顔は変わり果てていた。俺が知っているラズラではない。
「う、嘘だろ!」
「本当だよ。信じてもらえないかもしれないけど……」
すると彼女は自分の顔を破った。
「私、変装してたの。ごめんなさい」
本当だ。ラズラの顔だ。けれどもなぜラズラがここにいるのか?
けれども俺は声が出なかった。俺を刺した理由がさっぱりわからない。
「もう君とは会えない」
そう言ってラズラは窓を開けた。
雨の音が強くなり、風が俺のほうに吹いてくる。その風はとても寒くて思わず立ち上がった。
ラズラは窓から逃げ出そうとするが、ここで俺はラズラを止めたらいいのか。
俺はもう後悔したくない。だからラズラを止める!
俺はラズラの腕を掴み、逃げ出そうとするラズラを止めた。
「君に会えて良かった……!」
ただ俺はそれだけしか言えなかった。
もう俺の頭は真っ白だ。
でもラズラとここで出会わなかったら、俺は今頃……。
「私、ここに居ると駄目なの」
何を言っているのか理解できない。
「なんでここに居ると駄目なんだよ!」
俺はラズラとは一緒にいたい。ただそれだけだった。
「私が殺されるから……」
この小さな声は俺にとって恐怖だった。窓の向こうからスナイパーらしき人物が三人ほど見える。ひょっとしてラズラを……!
俺は急いでラズラの体に覆い被さった。
そこに響く銃声。雨音はもう消えた。
俺は必死にラズラを守った。痛い、でも俺はもう後悔していない。
「なんで、私なんか守るの?」
俺の口から大量の血が流れてくる。その血は俺の腕に垂れてゆく。
「俺が後悔したくないからさ」
本当に俺って馬鹿人間だよな。
俺はラズラの持っていた魔法書を手に取る。
爆炎銃!
俺の指をスナイパーたちの方向に向ける。
見事に三発全て的中した。
窓の外はどんどん晴れてくる。
「大丈夫、マゼル!」
とっさラズラは俺を心配してくれた。
「俺は死なないから大丈夫だ」
そう言いつつも俺の体はフラフラだった。
「マゼルくん、大丈夫!」
魔法教室のお姉さんだ。血まみれな俺を見ると、回復魔法を使ってくれた。
「あ、意識はあります……」
「これは病院に行ったほうがいいですね! 車用意しておくので安静に」
すると外から生徒たちが入ってきて俺の周りに円を作った。そこにはマゼルとラズラの姿もある。
そして俺はお姉さんの車でラズラと一緒にウールタウンに連れて行ってもらった。
俺の血はまだ流れている。




