第三十五話 占い師の勇戦戦争
彼女は俺の肩を持ち、ゆっくり立ち上がった。
「私、占い師なの。だから貴方の過去も見える。そのせいで私は勇者軍から追放された。もう、死にたいと思った。けれども貴方を捕まえて勇者軍に連れていったらきっとまた勇者軍に戻れる。」
「そうか、だから俺を……」
彼女の大量の粒が俺のほうに垂れてきている。俺だって死んだ。それで彼女を幸せにできるなら……。
「俺を勇者軍のところに連れていってくれ。俺が協力してやるからさ」
彼女は黙って右のポケットからポーションを取り出して俺に渡そうとしてきた。
「これ、あげる……」
これは赤ポーションだ。体力が回復されるらしい。
ちなみに俺は使ったことは一度もない。
彼女のほうを見ると、水晶を手に触れ何かをしている。
「おい、俺を連れていくんだろ? なんで俺にポーションを渡す?」
「私が馬鹿らしくなってきたから。君のさっきの話、占ってみたけど本当みたいだね。」
俺は赤いポーションの蓋を開け、一気に飲んだ。すると体が軽くなり、下半身も動く。改めてポーションの回復力を思い知った。
「なんで、逃げないの?」
彼女は窓を見ながら、俺に質問した。
「約束しただろ、協力するって」
俺は逃げることなんて頭になかった。
「貴方はいい人なんだ。やっぱり、私なんてこの異世界にいないほうがいいの」
「おい、俺は協力するっていってんだ! 俺は死んだ。それで沢山のものを失い、苦しんできた。死んだらいい人なんて一人もいないから……な」
俺は、幸せではない。だから俺がここでできることは誰かを幸せにすることだけ。
俺は不幸でいいんだ。もう死んじゃってんだから。
「こんな魔王、みっともないよ」
みっともない。俺はそれでいいんだ。強い魔王にはなりたくない。
「俺はお前が幸せならなんでもしてやるからさ」
そう言うと、うっすら彼女の笑顔が見えた。
「私、やっぱり君を勇者軍のところに連れていけない」
「なんでなんだ?」
「私の名前教えてほしい?」
そうか、彼女の名前を聞くのを忘れていた。話を変えられたが、俺は首を上下に振る。
「私の名前は……、ラズラなの」
俺はその言葉を信じることはできなかった。




