第三十三話 謎の彼女の勇戦戦争
俺は後ろをゆっくり振り向くと、彼女は異様なオーラを放っていた。けれどもお姉さんはそれに気づいていないのか。お姉さんは席を外しどこかに歩いていく。
「私が、見えるの?」
小さな声で俺に話しかける。
俺の正体がマゼルとわかっている時点できっとやばい奴だ。
「ねぇ、聞いてる?」
どんどん彼女の声は大きくなるばかり。俺は怖くて何もできなかった。
「本当に私のこと見えるの? だから聞いてる?」
俺はゆっくり扉を閉めようとしたのだが、体が動かない。転生したときと同じ感覚だ。
もう、俺は逃げられない。
外の太陽がだんだん暗い雲によって隠れていき雷が鳴り出した。
雨も土砂降りの中、俺と彼女は黙って外を見ていると彼女は「君は運命を変えられる人なんだよ。だから幸せになろうよ」と俺に語る。
何を言っているか俺には全く理解できない。
――運命を変えられる――
俺には運命を変える能力なんてない。そんな言葉に騙されるか!
「俺は、不幸なんだ。黙っててくれ」
暗い教室の中、俺は外を見ることすら出来なかった。雨の音が聞こえない。雷の音、心臓の音も。
「あっ、今喋ったね」
なぜか彼女の声だけは鮮明に聞こえる。聞きたくもないのに。
そう、俺は呪われている。それは確かだ。
だけどなぜ俺が呪われたのかわからない。俺である理由を知りたいのだ。
豪雨の中、胸をぐっと締めつけられた。
このおかしな異世界のせいで。
彼女は俺のほうに向かって歩いてきた。
「ねぇ、私のこと見えてるんでしょ!」
彼女はしつこく俺に話しかけてくる。
見えてるよ、でも俺は彼女を見たくはなかった。
俺は目を閉じて暗い世界に入った瞬間、彼女は俺の背中をいきなり刺してきたのだ。短剣か、それともナイフか。痛い。赤い血が流れる。
「不死の力、わかってるんだよ」
彼女は短剣みたいなものをさらに奥に押していった。
「い、痛い」
けれども俺はこの痛さは耐えられた。俺は自分の体を殺したことがあるのだから。
けれども俺の下半身の力がどんどん弱まっていく気がした。
「もう、貴方の負けよ」
そう、俺の脊髄がやられたのだ。そのせいで下半身が動かない。俺は前に倒れ、顎を打ちつけた。
俺の目の前にあった、扉は大きな音を立てて閉じた。
お前は、誰だ……。
俺は腕の力でどうにか逃げようとするが、扉が閉ざされた今、ここから逃げられる場所はない。
「貴方は魔王だから、殺さなければならない。けれど不死の力を持っている貴方を殺すことはできないの。」
そんなこととっくに知ってる。
死にたい。消えたい。そんな気持で溢れている。
だから俺のこと、ほっといてくれよ。
俺はもう人を殺さない。だから俺が自由に楽しく生活できる日はもう来ないのか。
俺は死なないのに両親は死んだ……。
そう、これも事実なのである。でも、俺は転生したからもう死んだのか。




