第二話 商人の勇戦戦争
「起きろー! 仕事だ仕事!」
フランコさんは俺を起こした。眠い、とても眠い。昨日は夜空をずっと夜遅くまで見ていたからかもしれない。
「はい。申し訳ありません」
「ここの飯、五分で食え」
朝飯なのにやけに量が多いのは気のせいだろうか。サラダ、チャーハン、おまけに朝からステーキがある。
「三十分後に開店するから急げよ」
「了解しました」
なにかと用意が多いらしい。
フランコさんは朝から魔法石の加工を行っていた。
大きな音を立てながら。
俺は急いで朝飯を食べ、フランコさんが用意してくれた服に着替えた。
「はやく店の前にポーション並べておいてくれ」
「わかりました」
俺は何種類かのポーションを綺麗に並べていく。とてもカラフルな色のポーションが多い。
「フランコさん、並べ終わりました」
「おい! ポーションの順番間違ってるじゃないか!」
そうだ、昨日片付けたポーションの順番は赤、緑、青、黄、白だったのに俺は青、緑、白、黄、赤の順番で並べてしまっている。
「すみませんでした」
「いいんだ、少しずつ覚えてもらったら大丈夫だからな」
フランコさんは優しい人だ。野口とは全く違う。
「もうちょっと魔法石の加工に時間かかるから、そこの服をハンガーにかけてくれ」
俺が見渡す限り、ハンガーは見えない。
「ハンガーどこですか?」
「上にあるだろ、上」
本当だ。上にあったのか。
「あれですね」
あっという間に開店時間だ。お客様の長い列ができている。
「こっからだぞ、マゼル!」
「はい!」
さっき並べたポーションは飛ぶように売れていく。
「はいはい、お会計はあちらです」
俺はフランコさんのほうを指差す。
「薬草はどこかね?」
おじさんが薬草の場所を聞く。
「こっちです。ついてきてください」
場所を教えるのも俺の仕事だ。俺も忙しいが、フランコさんのほうが忙しそうだ。
「お客さん! 昨日注文された魔法石ですよ!」
「ありがとうね、娘が喜ぶわ!」
「そうですか、ありがとうございます!」
フランコさんは忙しくてもいつも笑顔である。
もう昼だ。お腹が空いた。朝よりかはお客さんは少なくなったほうだと思う。
「マゼル! いつものところに昼飯置いてあるから先に食え」
俺はいつもの小さな部屋に入る。急いで昼飯を食べてはやくフランコさんを手伝わなくてはならない。
俺は窓から外の景色を眺めると、赤い飛行機が飛んでいた。この世界にも飛行機があるんだなぁと感心する。
「マゼル! 昼飯食べ終わったか?」
「はい!」
「俺も昼飯食いたいからレジ任せた!」
レジを任された俺はしっかりとアイテムの値段を見ながらレジを打っていたが次第に列が長くなっていく。
「お兄ちゃん! はやくしてくれねぇかな」
「申し訳ございません」
そう思えばフランコさんのレジ打ちははやい。列はついに外まで続いてしまった。
「マゼル……!っていうか大変なことなってるじゃないか! 俺がレジ打ちやっておくからお客様に謝っておけ」
俺はレジ打ちが下手くそだ。列に並んでいるお客さんに俺は謝り続けた。
「列が長くなってしまい、申し訳ありません」
そろそろ夜だ。あと少しで終わる。
「マゼル、お疲れ様! もう閉まるぞ!」
「わかりました」
すると一人の男性が走ってこっちに来る。閉店ギリギリだ。
「ここ、まだ空いてますか?」
男性は疲れた顔をして質問してくる。
「大丈夫ですよ。 ごゆっくりどうぞ」
やっぱりフランコさんは優しい人だ。男性はポーションを二つ買って帰っていった。
「ありがとうございました」
俺もフランコさんに続いた。
「ありがとうございました!」
「マゼル、部屋に入っといていいぞ」
「すみません」
俺は小さな部屋に入る。今日は疲れた。昼飯以外ずっと立ちっぱなしだ。俺が布団に潜ろうとした瞬間にフランコさんがやってきた。
「上に上がってこい、一緒に飯食べるぞ!」
今までずっと気になっていたが二階に上がれるなんて初めてだ。階段を上がるとそこはキッチンと冷蔵庫、調理器具がたくさんある。フランコさんは料理が好きなんだろうか。
「今から鍋作るから、そこで座っていてくれ」
俺は木の椅子に座ってフランコさんの鍋を待つことにした。
フランコさんは手際がいい。ネギや人参、豚肉などを素早く切り、味付けをしていく。
「味はこれでいいか」
フランコさんは目分量で調味料を入れていく。これが男の料理なのだろうか。
「できたぞ! マゼル」
これは美味しそうだ。豚骨ベースの鍋だという。
「いただきます」
「熱いから気をつけろよ」
とても美味しい。野菜が豚骨ベースのスープとよく合う。
「昨日の話の続きでもするか」
俺はすっかり忘れていた。初代魔王マーゼルについての話だ。
「二代目ザゼルについても教えてください」
「ザゼルか、正直初代魔王よりも厄介なことがあるんだ」
「厄介なこと、ですか……」
「不死の能力を持っていてな。ちょっと処理が厄介なやつだ。倒す方法は研究中らしいけど、結局何もわかってないんだろうな」
正直この話はもういい。フランコさんの楽しい話が聞きたい。
「フランコさんの楽しい思い出とかありませんか?」
「楽しい思い出の中に苦しさや悲しみがある、それが冒険なんだから仕方がないが。正直このお店を経営することも一つの冒険として考えている。一番楽しいのが今かな」
フランコさんは仕事を冒険だと思っていることがすごい。俺はそんなフランコさんを尊敬するのであった。