第二十話 帰ってきた街の勇戦戦争
俺は十五分程走り続け、ウールタウンが見えてきた。後ろを振り向いてみるともう勇者の姿はない。魔王軍との戦いで疲れ切ってしまったのだろうか。一方で奥にあるマッガの街はもうなくなっている。
「マゼル、あの街は何?」
「ああ、ウールタウンだよ」
どうやらラズラはウールタウンのことを知らないようだ。今思えば、ウールタウンはどうなっているの俺が願ったような街になっているのだろう。
するとウールタウンの照明が光り出しているだけでなく街が活気付いていることがわかる。
鉄の門を通り、ラズラと一緒にウールタウンの街の中に入ると、俺のほうに一気に人が集まってきた。なんの騒ぎだと思ったが、みんな俺のことを知っているのだろうか。いろんな人から感謝の言葉が聞こえてくる。マッガの街とはえらい違いだ。
「マゼル、この人たち知り合いなの?」
知り合いではないのだが、俺の頭がおかしくなったのか、俺に沢山のアイテムやお金をみんなが渡してくる。
「ええっと……、俺もいまいち状況が把握しきれてないんだよ」
なんで俺のことをウールタウンの人が知っているのだろうか。もしや、ウールタウンの国王が起業にせいこうしたのか?
「お前さんのおかげでウールタウンが救われたよ、ありがとう!」
周りの人々は嬉しそうに俺を歓迎してくれた。ラズラは困ったようにこっちをみるが、とにかく街の人たちが幸せそうでよかった。
「横にいる子は彼女さんなのかい?」
おい、ラズラは彼女でもなんでもないぞ。ていうかラズラは恥ずかしそうに顔を下に向けた。
「あの、そんなことないんで……」
俺は誤解されないように言葉を返すが、ラズラは俺の手を繋いできたのだ。誤解されないようにしているのに……!
「あら、やっぱり彼女さんなのね!」
「ち、違いますから!」
周りはすっかりおめでとうムードだ。こんな展開になるなんて予想外だぞ。俺の右手はあまりにも興奮していて手汗がすごい。
「とりあえず、国王様に挨拶に行かせてくれませんか?」
周りの人たちの声が大きすぎて、俺の声が聞いてもらえない。ラズラはまだ下を向いているが、足がとても震えている。
そのまま三十分ほど握手会みたいになってしまった。左手でウールタウンの人と握手するが、列がとても長い。いつ終わるのかとは思ったが、早く済んだので国王様に挨拶に行くことになった。
しかし、国王様は就寝してしまったらしいので挨拶は明日にしよう。
俺はラズラと一緒に近くの宿に泊まることになり、代金はいらないと言われた。
「本当にいいんですか?」
「いいんですよ、この街の英雄ですから」
ここの英雄は国王様ではないのか?しかしこの街の人々は俺をウールタウンの英雄と呼ぶ。
「マゼル、私と二人きりだよ」
なんかラズラの雰囲気がおかしい。俺は恋愛経験なんてないし、ラズラのことは気になってはいたけどこんなことになるなんて……!
このあと美味しいご馳走までいただき露天風呂にも入ることができた。この街もだいぶん変わったな。
露天風呂からあがって部屋に戻るとラズラが先に部屋にいた。
「ベット一つしかないよ」
「俺は床で寝ておくから、ラズラはベットで寝ておいていいよ」
「二人で寝たいよ……」
おいおい、元々ラズラは甘えたさんなのは知っていたが、ここまでされたら俺も困る。
するとラズラは俺の手を力強く引っ張ってベットの方向にもっていかれた。
「おい、ラズラ! 何するんだよ」
「私はマゼルのことが好きなの! 私を友達って言ってくれたときから。だから、横でいいから寝てください!」
仕方なく俺はラズラの横で寝ることになったのであった。それにしてもラズラは困ったやつだなぁって思う。




