第十九話 時期魔王の勇戦戦争
たとえ、俺が時期魔王と言われたとしても自分は魔王になる気はないし時空間魔法を悪い目的で使おうと思ってもいない。
それなのに勇者は俺に剣を向けた理由がいまいち理解できないのだ。また、味方を時空間魔法によって吸い込んだ覚えもない。
「やめてください! 勇者様」
マリーさんが止めようとするが、勇者の目はこちらをじっと見つめている。確かに俺は時空間魔法を使ったが、俺はあくまでも勇者軍の味方であるのには変わりない。
「マリー、なぜこんな奴を!」
勇者は俺とマリーさんが一度だけ出会っていたことを知らないのか。しかし、時空間魔法を使ってしまったら厄介なことになってしまったな。
「このかたは私を救っていただいたのです! 決して悪い人ではありません!」
俺はマリーさんを救ったが、時空間魔法を使った俺を構っても無駄だと思う。時空間魔法は俺から見ても危ない魔法。それを他人が見たらどう思うか。
「黙ってろ、マリー! 正直なことを話せ!」
まったく困った勇者様だ。俺やマリーさんの話は本当なんだよ。本当に話が通じないなって思う。
「正直な話は全て話している。ほんと人のことを信じられない性格なんだな、勇者様」
早く休憩させてくれ、もう立っているだけでしんどい。
「なんだ、勇者にその口の利き方は!」
勇者は剣を振り回しこちらを斬りつけようとしたが俺はどうにか後ろに下がり、なんとか避けることができた。
「なんで攻撃するんだ?」
「お前だけは許さない! 今すぐ殺してやる!」
やっぱり、魔王に対して相当憎んでいる。でもな、今は戦ってしまったら大変なことになる。ここは勇者の怒りを抑えないとな。
「すまない、勇者様。俺が悪かった。けれどもあくまで俺はお前たちの敵ではない」
けれども勇者はまだ剣を置かない。無言のまま勇者はまた俺に攻撃してくる。
「やめてください!」
マリーさんの声にも無視か。もう魔法を使うしかないのか。
爆炎銃!
勇者の足元を狙ったら見事に靴の先に当たった。勇者の靴から赤い血を流れ、俺のほうを向いてゆっくりと下を向いてこっちにくる。
「お前! やりやがったな!」
爆炎銃を打ってはいけなかったか。まだ攻撃をしてくる勇者に爆炎銃を発動するのは正当防衛だ。決して勇者を殺す気は全くないが、勇者を止められる気がしない。
魔法封印術!
ラズラが後ろから魔法封印術を発動してしまったので、もう爆炎銃や時空間魔法を発動できない。俺を止めるつもりだろうが、どう見たって勇者のほうが危ないだろ。
面倒だなって思うが、ここは逃げるしかなさそうだ。
俺は必死にウールタウンの方向へ向かって逃げようとするが、当たり前だが勇者は俺を追いかけてくる。
このままでは死ぬかもしれない。ラズラもマリーさんも俺を追いかけてくれるが、勇者の権力が強すぎるのかわからないが止めようとしない。
確かに爆炎銃を勇者に発動するのは間違ってしまった。
俺は疲れているので、走るのも一苦労だ。対して勇者も疲れてきたのだろうか、どんどん走る速度が遅くなっている。
俺は勇者に対して大変なことをしてしまったようだ。




