第十六話 死刑囚の勇戦戦争
次の日の朝――
俺は昼に死ぬ。これが最後の日だ。死んだら誰か俺を転生でもしてくれないだろうか。
もうこんな異世界生活は嫌だ。この異世界の空は真っ青なのに俺の心の中は真っ黒に近い。俺の体が闇に染まりそうなほど重い。
これで最後の異世界での飯だ。俺は白飯と味噌汁を食べ、朝飯を済ました。
この異世界にもさよならだな。本当に数日しかいなかったが、異世界生活は楽なものでもない。時空間魔法で敵を一掃できると思ったら魔力切れにより意識を失う。まぁ死ぬよりはマシだったが。
俺だって敵を無双したいさ。こんなところよりもダンジョンとかで倒しまくって、楽しい異世界生活を送りたかった。もう死ぬというのに、俺はまだそんなことを考えていたのだ。
どうせなら異世界でできることを存分にやりたかった。日常生活ではやらないことを。
すると、何か嫌な音が外から聞こえてくる。サイレンみたいな音だ。こんな音が聞こえたことは初めてのことである。
たちまち外の悲鳴がうるさくなっていく。何か起こったのか?
そう思いながら俺は柵の外を見るとそこには魔王軍の騎士たちがこちらを攻めてきている様子が見えた。
するといきなり刑務所のピンクの壁が壊された。そして魔王軍の騎士たちはどんどん壁を壊していく。魔法封じ爆弾があるし、魔法書がないと魔法を発動できないので戦うことはできない。
まわりの囚人たちは逃げようとするが、簡単に逃げる事はできずに槍で殺されていく。おまけにこの街は魔法使いが多い。魔法書がない魔法使いなんて弱いのは当たり前なのだ。
くそっ、魔法書があればまだ戦えたのに。ここで殺されるのかよ。
そう思った瞬間、騎士の後ろを赤い武装をしたマリーさんがぶった切った。騎士は反撃しようとするが、マリーさんは軽々避けていく。そして素早く剣を振り下ろし、騎士たちを倒していった。
「マリーさん!」
俺は思わず声を出してしまった。赤い武装が見えた瞬間にマリーさんだとわかったが、こんなに剣を使いこなしているところは初めて見た。
「マゼルさん! お久しぶりです」
マリーさんは少し疲れ気味だった。俺はマリーさんの顔を見れて少しほっとした。
「マゼルさん、何故刑務所にいるのですか?」
「話は後にしましょう。それよりも魔王軍を!」
「そうですね。でも、魔法封じ爆弾がついていますので解除しますね」
「いや、やめてください」
「なんでですか! 今、あなたの力が必要なのです」
「俺は……」
俺はこの異世界のために戦うとなると断れなかった。マリーさんに爆弾を解除してもらい、近くにあった薄汚れた魔法書を渡されて戦うことになったのであった。
「マゼルさん、援助は任せますよ!」
「あっ、はい」
俺は後方から爆炎銃を放ち、マリーさんが剣で騎士たちを倒していった。
何故か知らないが、爆炎銃の威力が上がっているのは気のせいだろうか。三発程度で騎士を倒せるようになった。それでも、魔王軍の数は少なくはならない。
すると、後ろからマッガの住人たちが魔法を次々と発動していった。随分と威力は弱いが、時間稼ぎには十分だ。
この街を守るため、この異世界を守るため、俺たちは戦う……




